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近未来SF短編集 in United Corporation of JAPAN  作者: あのワタナベ
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なんでも屋と元警備員

「おう、用心棒(バウンサー)。よく来たな。とりあえず仕事はあるけどどうするよ」


「やりたいけど左膝から下がまともにうごかんから移動はできるが走れねえ」

「まずは義足を入れるか。闇医者と、あと出力(プリント)屋にコネはある」

「金ねえんだけど?」

「なんとかしてやる。前みたいに動けないと前以上には稼げないだろうが。

 とりあえずは、そうだな膝下ひざしたが動かないんだろ?

 神経パルスを拾うデバイスを買ってテストしてみよう。うまくいったらスネから下を切り落として3Dプリントした義足と入れ替えれば動けるようになるだろ」

他人(ひと)事だと思って無茶言いやがる。動かねえとはいえ俺の足だぞ」

「ならパワーアシストでむりやり動かすか。普通の靴は履けねえな。パワードスーツの足裏にブーツパターンもプリントしなきゃな」


「そのくらいはしかたねえ。闇医者で足を切るよりはマシだ」


「こんなデバイスがあるんだけど使えるんじゃない?」


 脇から口出しするのはなんでも屋の弟子を名乗るガキだ。ストリートチルドレンだったらしいが手先が器用なので色々教え込んでいるとか。

 そいつが持ってきたのはリハビリ用の通電治療器。アブなんとかとかEMSなんとかみたいな名前のやつだ。


「それを使っても神経が切れかけてるから思ったように動かせねえんだよ。痛みはあるのにな」

「そうじゃなくて、逆。これで無理やり動かすの。外部型パワードスーツよりスマートでしょ」

「え?」

「ああ、神経パルス拾ってそいつで筋肉を動かしてやれば外部ソースは要らねえな。制御系がちょいとやっかいだが……」

「動作パターンのプリセットでなんとかならない?」

「歩くくらいならそれ(・・)でもいいだろうけどよ。戦闘機動をしなきゃならんサイボーグだぞ、こいつ。

 まずディープラーニングで神経パルスと筋肉のリンクを最適化させて、思い通りに動くようにするだろ。そしてシチュエーション別にプリセットを切り替えるほうが最適動作の確率は上がるだろ」

「……だから宇宙語で話すのやめてくれよ。ついていけねえんだよ、なんでも屋とその弟子!!」


 俺の身体をどうするつもりだ、この二人。体の良い実験体かなにかと勘違いしてねえか?




「コンバットドラッグも似たような成分のヤツを仕入れてきたぞ」

「おいおい、そんなもん手に入るのかよ」

「薬屋の出店があるんだよ。そこの運営元が企業軍向けのベース薬を作ってるんだ。用途別やら企業の希望やらによって多少レシピは変わるらしいけどな。前の勤め先向けレシピは金をつかませたら用意してくれたぜ」

「どうやって投与する気だ? 静脈留置カテーテル(PIVC)か?」

「埋め込み型ポートが残ってるだろ。そこに刺す」

「そういやスーツを着るときにぶっ刺してたわ。辞めるときに摘出されなかったのはなんでだろうな」

「手抜きだろ。コンバットドラッグは肝臓代謝型だから15分前にブッ込めば、前みたいにフルスペック出せるようになるさ」

「あとは足の慣らしだな」

「そいつはがんばってくれ。馴染んだら戦闘機動パターンを学習させるから神経パルスとモーションをりながら動きまくってもらうぞ。もちろんフル装備でな」

「まだ腰の埋め込みバッテリーと制御ボックスが馴染まねえんだがなぁ」

「諦めろ。それでも最新型の一番薄いやつだぞ。それに入れてから三日かそこらだろ。普通に歩けるようになったじゃねえか。普通はもっとかかるらしいぞ」

「自前の足だからな。リハビリも継続してたから筋力が多少落ちた程度で済んだみたいだ」

「事故後の経過時間が短かったのも良かったな。怪我した足をかばうような変な癖がついてないってドクも言ってたろ」

「歩くときの蹴り出しがちょっとヘンだが、それ以外は生活レベルじゃ支障はないな。準備運動をしておけば走るのも問題なかった」

「うちの小僧に言ってやれ。動作の最適化はアイツがやってるからな」


「学習結果を反映させたソフト、できたよ」

 そういって弟子が端末(デバイス)を持って奥から出てきた。

 座ったまま腰に非接続端子を貼り付け書き換えてくれる。

「ちょっと歩いてみて」

「おお、ずいぶん違和感が無くなった。すげえな」


 そう言いながら跳んだり跳ねたりしてみる。


動き(モーション)を見てても頭のブレが減ってるぞ。かなり安定したようだな」

「さすがに10回もバージョンアップしてるからね。AI学習も進んだよ。ついでに新しいデバイスドライバが出てたから組み込んだ」

「安定版だよな?」

「今回のバージョンはネットの評判もかなりいいやつだよ」


「モーションは機動だけじゃなくて格闘なんかもできるようになるか?」

「状態で切り分けて、それに最適化した動きを学習させれば」

「よく分からんが、出会い頭に蹴りを入れるとか相手に組み付いて転がすとかができるといいんだが」

「うーん。それはプリセット切り替えよりAIチップにパターンを覚えさせるしかないんじゃないかな?」

「技術的なことは分からんが、やれるなら任せる」

「数をこなせばAIが覚えてくれるよ。よくやる動きを繰り返せばAIもそれに慣れてくるし。この動きの次はこの動き、みたいな感じで。訓練しなくちゃね。

 ……じゃ、相手役はなんでも屋のおっちゃん。よろしく」

「うぇ!? 俺かよ。頭脳労働のホワイトカラーにやらせるんじゃねえよ」

「キャプチャとロギングや最適化はボクがやるんだからおっちゃんしか相手がいないじゃんか」

「そうだな、相手してもらうか。安心しろ。反応速度はちっと良くなった気はするが、あくまで人間だ。四肢義体化に強化骨格を入れたパラリンピック格闘選手じゃねえんだから普通、普通」

「反応速度上がってるのかよ。先進部隊にいた人間のエリート様がさらにパワーアップしてるんだろ、俺みたいな一般人をいじめるんじゃねえよ」

「俺はまだ普通の人間だって。むしろ右足にもこの強化神経接続を入れて欲しいくらいだ。どうも負傷した左足のほうが反応速度が良くてな。バランスが悪い」

「神経接続、なんかかっこいいね。負傷神経補助(サポート)より響きがいいや。右足の膝下ひざしたにも入れる?」

「それより左足の反応速度を下げてくれ。たまにバランスを崩しそうになるからそれに気を使うのがタルい」

「なら神経信号から反映させるまでにミリ秒単位の遅延を入れてみるよ。全体の処理速度を落とすのはもったいないし、バランスを崩しそうになった時のリカバー処理が発生するのは無駄だからね」

「それで(たの)むわ。やり方は任せる」


 こんな路地裏でオーダーメイドの強化神経が手に入るとは思わなかった。さすがなんでも屋とその弟子だ。

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