なんでも屋と弟子
こいつの修理を?
なんでも屋っつってもできねえこともあるぞ。
これはもうメーカー修理だろ。腰部メイン基板が逝ってるし。
同型でニコイチするならともかくパーツ足りねえし、ソフトもねえよ。一から書けってなると一千万からそれ以上かかるぞ。それでもやる気か?
まあそうだよな。パーツ取りもバラバラにしてアクチュエーターやモーター単位で売るくらいじゃないと商売にならんし、むしろ廃棄料取られるな。手間ばっかりかかってしかたねえ。
この人型警備ロボ、ちゃんと持って帰れよ。
こっちで処分?
なら500ニューイェン置いてけ。普通の処理場なら受けつけてくれんし、速攻で警察よばれるぞ。シリアルでいつ壊されたかもバレるしな。バレないレベルまで分解せにゃならん。
OK、たしかに。領収書は出さんぞ。
このパレットと箱はどうするよ。
あ、そう。これもね。さすがにこれは廃棄料なんかいらねえよ。燃やすだけだ。
んじゃ、そういうことで。もっと楽に金になるもん拾って来いよ。端末とかそういうの。
おーい、小僧。これ、車庫の奥に運んでおけ。そこのウィンチでパレットごと引っぱればなんとかなるだろ。
おっちゃんに呼ばれて車庫に向かう。
目の前には銃撃された人型の警備ロボット。とある通販会社のロゴが入っている。
それがフォークリフト用パレットの上でひざまずいた形で停止している。上半身はパレットに作り付けられたフレームからチェーンで吊され、処刑された人のように見える。
撃たれた腰部は塗装が剥がれ、金属フレームとザイロン・タイル複合材が無残にひしゃげている。
「え、これホントに引き取るの?
粗大ゴミにしか見えないけど」
「もう金もらっちゃったからな。売りさばくルートもあるし」
「なのに廃棄料取ったんだ……」
「手間がかかるから大した儲けにならねえんだよ。なんだったら弄って遊んでいいぞ。
腰部はダメでも胸部メインボードは生きてるからメインアームとカメラはつかえるだろ」
「なんに使うのさ」
「好きに遊べよ。ソフトも教えてやるからよ。ついでにシリアルも削ってやる」
「こんな重いの走行ドローンにもならないよ」
「オートじゃないクルマの外部監視カメラにつかったり、自立砲台に転用できるだろ。
カメラは視差光学系に全周、サーマル、ミリ波レーダーまで載ってるんだ。ミリタリーグレードだから買うと高いぞ。
バラすのが大変だし、共通規格じゃないから買い手は少ないがな」
銃弾でひしゃげた腰部フレームと装甲板、その奥に焦げ付いた基板がむき出している。フレーム自体はアルミで軽いが、装甲板のほうはやたらと重い。
「総重量で300kgかそこらだっけか。上半身で半分以下だから軽トラの後ろに積んで自立砲台くらいにはなる。ソフトさえ書けばな」
「そんなの作ってどうするのさ」
「だから好きに弄って遊べっての。なんに使うかは後で考えりゃいいんだよ。
あ、武装は先に外しとく。さすがに室内でぶっ放されたら暴徒鎮圧でもあぶねえんだ」
といっておっちゃんは腕部の武装を外していく。なぜか手慣れた印象。
「なんでそんなに慣れてるのさ?」
「古巣の製品だからな、コレ。世代は進んでるけど基礎構造は俺が設計したまんまだ」
「作ったのおっちゃんかよ……」
「俺の担当した製品の後継機ってだけだよ。……あいつら工夫もなしにただパワーアップだけさせやがって。計測処理系はほとんどそのままじゃねえか」
ロボットの顔にあたるカメラを覗きこんで言う。ポリカーボネート製バイザーの奥にレンズ。その縁に有名レンズメーカーの名前が印刷されている。
二つ並んだそれとは別にミラーコートされたレンズらしきもの。六角形で黒のセンサーらしいパネル。つむじにあたる部分にも小さなレンズがついている。
「今なら全周カメラとミリ波、FLIRだけで組んでみせるのによ。
あいつら何も学ばなかったのかよ……」
寂しそうな表情のおっちゃん。
「だから代わりにお前に全部叩き込んでやる」
なんか物騒なことを言い出したぞ。




