表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/97

警備員

 シフト表をチェックして、俺は嘆く。外回りだ。


「どうした?」


 隣のロッカーの前に立つ友人、同僚(ビズバディ)に声をかけられる。


「いや、今日の任務が外回りだった」


 ため息混じりに返事をする。


「そいつはご愁傷さん、と言いたいが俺もだ。終わったら呑みに行こう」

「おう」


 拳を突き合わせ、気持ちを仕事モードに切り替える。

 糊が利いたクリーニング済みの制服。カーキ色の胸元には会社名が誇らしい。

 制服の上に重たい防弾ベストを身に纏い、ヘルメットを被る。拳を握ると合皮のグローブがギシッと音をたて手に馴染む。首から社員証(IDカード)を下げて準備完了。


 ロッカールームを出ると人の列。IDをスキャン、端末で業務表のチェック。配置を告げられ、装備品を渡される。


「今日は11弾倉(マグ)か。物騒な任務らしいな」


 ひとりごちていると。


「同じ車両だ。今日もよろしく」


 後ろから別のビズバディに声をかけられる。


「お、よろしく」


 IDに視線をやり、拳を突き合わせる。2週間に一回くらいは同じ業務につくバディだ。もう何回も組んでいる。

 慣れた相方というのはありがたい。どう動くかというのが分かっている。ヘルメットのバイザーモニタにビズバディの動きは表示されるが、それを見る前に予測できるのは負担が減る。

 ベストのポーチにマガジンを2本づつ。腹の四カ所に8本、腰に2本挿し、一つはカーゴパンツのポケットに突っ込む。ライフルは背負ったままだ。車両に乗り、指示があるまでマグはライフルに挿さない。それが服務規程。違反者は給料(ポイント)が減らされる。


「チーム0823! オンポジション!」

「オンポジション!」


 チームリーダーが声をかけ、チームメイトが復唱。今日の8便目、23両に乗るメンバーが集まった。


「トゥデイズデューティ! アクティブディフェンス! スタンダードRoE(交戦規定)!」


 任務内容が告げられる。標準交戦規定に則った貨物列車の護衛任務ということだ。

 指示は簡易な英語で端的に伝えられる。詳細は眼前のバイザーに翻訳された文章で補足される。社員は国籍が様々、出自も同様。

 口頭ではネイティブでなくても理解できる簡易な文法しか使われない。それも最低限。なので名詞と動詞ばかりの定型文になる。何をこうしろ、もしくは何々するな。


 実にシンプルだ。


 我々は軍隊ではない。ただのサービス業の会社員。提供するのは安全と鉛弾。会社の敷地内を保全する警備員だ。発砲は社の敷地内でしか許可されていない。

 もちろん武装も同様だ。会社の敷地から一歩でも出たら一般人。違法に武装した犯罪者として現地警察に逮捕、もしくは射殺されるだろう。

 だが勤務地は会社の敷地内だけ。会社からはいっさい出ない。当然貨物列車のレール上も敷地内(・・・)だ。

 武力を他者に提供するPMCや傭兵ではないのだ。通販会社の警備員は服務規程に従っていれば問題はなにもない。


 さあ、今日も仕事だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ