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ドキドキ初投稿になります。
よろしくお願いします。
婚約破棄のおかけで、私の将来は明るい!
「 マリーベル・ストラウス伯爵令嬢。私はお前との婚約破棄する。
そしてここにいるフルール嬢と婚約する 」
学園には貴族や裕福な平民の子息令嬢が通っています。
その学園の中庭で生徒や教師など衆人環視のもと、高らかに婚約破棄を宣言したのは、確かに私の婚約者である第五王子フランツ様です。
その後ろには、庇護欲をそそられる小鳥のような愛らしい姿の少女がいます。
学園での三年間、私も親しくしていたフルールでした。
彼女、フルールは確かに平民ですが、豪商マリウス家の息女で下手な貴族よりも、よほど金持ちです。
そう。私のような身分が高いだけの貧乏貴族よりも。
私達三人が学園に入学してたのは三年前。一度も顔を合わせぬまま、私とフランツ様との婚約が決まったのもその頃です。
入学式の後、フランツ様は婚約者である私を見に来ました。
そこで可憐で華のあるフルールに出会い、頬を染めてじっと見つめていました。
一年生のうちは、まだ私の婚約者という立場を慮り、三人で行動することもありましたが、徐々に私はフェードアウトしていきました。こっそりと、王子にフルールの好きな食べ物や欲しがっている小物の情報を流したり、フルールには貴族の礼儀作法などを教えたりと、応援じみた事をしておりました。二年生ではグッと二人の距離が縮まり、卒業を控えた今では二人は、人目を憚ることなくイチャついております。
私は、うつむき、前髪で顔を隠しました。そうしないとにやけた顔がバレてしまいそうだからです。
三年間、長かったです。
まぁ婚約解消ではなく、破棄だと言うことには目をつぶりましょう。何を思って、こんな大勢の人が集まる中庭で、とも思わなくはないのですが。
「そしてお前が、フルールにした卑劣ないじめに謝罪を要求する」
は?いじめ?
面を上げて、フランツ様を見れば、まなじりを吊り上げている。
「いじめとは、なんのことでしょうか?」
思わずコトンと小首をかしげる。
「こっ、この期に及んで、しらを切る気か!」
「しらを切るも、何も……。いじめなど、全く身に覚えはございません」
「なっ!なんだと。
素直に謝罪していれば、注意だけで済ませてやろうと思っておったが!」
激昂するフランツ様の背から顔を出しているフルールが、いたずらがうまくいったと言うように、片目を閉じて笑いながら、私に合図を送る。
ああ、なるほど。フルールが、陳情したというわけですか。
「フランツ。それ位にしてあげて。
マリーベルだって、あなたの事を好きだったのよ。だから、私に嫉妬してしまっただけなの。
謝罪なんていらないわ。私はマリーベルを許すわ」
私に向けていた、いたずらっ子のような笑みは掻き消え、フランツ様には聖女の如き微笑みを向けた。
「フルール、そなたはなんて優しいんだ」
手を取り合って、二人だけの世界を作り始めた。
もう私のことなど、目にも入っていないようだった。
私が二人のために喜んで悪役令嬢役を引き受ける……と。
私、彼女にそこまで甘く見られていたんですね。