313話昔と変わらない
「...本当に行くのか?」
病室の前まで来て、突然足が止まる
「本当も嘘もありませんよ。ほらこれ持って!」
途中商店街で買った、小さなかごに様々なフルーツの入っている見舞いの品を持たされる
もちろん会うのが嫌なわけではない。怖いのだ...俺のせいでリーナは魔獣にされてしまった。俺が関わったら、また同じことが起きてしまうのではないだろうか...俺のせいで、またリーナが辛い思いをするのではないだろうか
そんな恐怖が、リーナを助け出してから、リーナの事を考えると常に頭の中をよぎるようになった
「安心してください。もうミツキは強いのですから」
「エル...」
そうだ...昔とは違う。今度はリーナを守ってやれる。あいつのために...そして自分のために俺は強くなったんだ
ゆっくりと深呼吸をして、ドアノブに手をかける
「よし...リーナ、いる」
「遅いですわ!」
扉を開け、顔を上げると目の前には仁王立ちしているリーナの姿が映った
大変ご立腹のようで、すぐにこちらに向けていた視線を右方向にずらし、そっぽを向いてしまった
「なんでドアの前で立ち止まってるんですの!」
「いやだって...二年ぶりだし」
「あなたは昔と本当に変わらないですわね。行動に移すまでが遅いのですわ!」
「うっ」
言い返せないことを言われ、反論できずに小さな声が漏れる
「...というか、もう歩いても大丈夫なのか?」
「走ったりはできませんが、ゆっくりと歩く程度なら。その速度でも、あなたが立ち止まっている間にベットから、ドアの前に移動するのは余裕でしたけどね!」
「ごめんって...」
「もう!」




