131話状況の元凶
「おいおい...大丈夫かよ。だから言ったのに」
ミツキが頭を地面にうずくめたままのリンデに手を差し伸べる。リンデは、差し伸べられた手を取ることはなく、両手に力を込め、がばっといきなり起き上がる。そして、ミツキを指差し
「きょ、今日はこのくらいにしてやるっす!でも次は叩きのめすんで覚悟してやがれ!」
「あー...えーと...お、おう。頑張れよ」
顔が見られないようにか下を向きながら、俺の疾風迅雷使用時にも負けない速さでギルドに走っていく。しかし、ちらっと横から見えた顔は真っ赤に染まっていて、ちょっと頬が緩んでしまう
「何ニヤニヤしてるんですか?ルクス」
「いや、なんでもない。それよりよかったな。穏便に事が済んで」
「まぁ相手には恥ずかしい思いをさせちゃったが、争いにならなかった事はいいことだな」
「すみません...しっかりと言い聞かせておきます」
「喧嘩にならない程度にお願いします...さて、ギルドに戻りましょうか」
全員がうなずき、足取りを勧めて行く。しかし、俺の中には一つだけ疑問が残っていた。なぜ、地面がぬかるんでいたかという点だった。無論、雨など降っていないしクラミスさんとの戦いの後からかなりの時間が経っていて、今日も一日晴れだったため乾いてるはずだった。その証拠に、俺とリミナスさんが戦った時は一切、ぬかるみなどは見られなかった。全員の持ち物をミツキの持ち物には、一切水分を出せるような物は含まれておらず、それはミルンもエルも一緒だった。しかし、ただ一つ地面をぬからせる程の水分を出せる物を持っているの人物が居た。おそらく、リンデの足元にぬかるみを作ったのはクラミスさんだろう。まず、リンデがミツキのフィールドワークを見ている間に水の魔力で弾を作り出し、銃に込めそれを打ち出したんだろう
「クラミスさんも策士ですね...」
「おっと、バレてしまいましたか」
「俺は銃音で気づいていたが...あいつは気づいてなかったみたいだな」
「流石にバレるかなぁと思ってたんですがね...あの子も注意力が足りませんね」
みんなで笑いながら更にギルドへの足取りを進めていく
「リミナスさん、体調はどうですか?」
「ふぁぁぁぁ...大丈夫だよクラ...あれ?クラミスじゃなくてミツキ...みんなは?」
「夕ご飯の材料を買いに行きました。その間、リミナスさんが起きたらみんなを集めるように言ってくれって言われてたんです」
「そっか...ありがとう」
扉の縁に座り込み、さっき聞いた話でリミナスさんに聞きたかった事を聞こうとする。しかし、その前に気になることが一つあった
「リミナスさん、その布団のもう一つの膨らみって何ですか?」
「なんだろう...何かまとわりつく感覚が」
リミナスさんが布団をがばっと上げる。その膨らんでいた場所には、リミナスさんに抱きつきながら寝ているリンデがいた。布団が剥がれた事に気づいたのか、目を擦りながら起き上がる
「マスター...おはようございます。そこにいるのは...ミ、ミツキ!何でこんなところにいるっすか!まさか、リミナスさんを狙って...」
「ちげーよ。みんなを待ってるところだよ」
「それより...なんでリンデは...こんなところにいたの?」
「えーとミツキとの勝負のあと...あ!そうだ勝負!えーと勝てるもの勝てるもの...は!!」
何か思いついたように、リミナスさんに抱きついていた体をいっそうリミナスさんに近づける。そして、やってやったぜとも言わんばかりの顔で、こちらをじっと見てくる
「...お前はなにが言いたいんだ?」
「今の状況を見てもわからないとは...簡単に言ってやるっす。勝った!」
「何にだよ!」




