124話予想以上の効果と足りない敵
「主よ、ここは私の指示に従ってはくれないだろうか?」
「分かりました。その代わり、的確なものをお願いしますね」
「はい。仰せのままに」
阿修羅ちゃんは一度、礼をしてから私の額に薬指を触れさせる。その瞬間、頭のなかに大量の言葉が流れていく
「私を扱うための術式です。どうぞ」
「これは覚えるのが大変ですね...とりあえず、使ってみましょうか。召喚獣の原始の姿の解放を許可する、ハイレシークデント!」
隣にいる阿修羅ちゃんの姿は、少女の姿ではなく最初に会った時の魔物の姿へと変わっていた。少女の姿のときでは感じられなかった力強さが、一気に体全身に伝わっていく。それは、恐ろしくもあり頼もしくもあった
「その姿だと戦えますか?」
「はい。これが私の元の姿なので、一番戦いやすいです。ターゲットは目の前の魔獣でよろしいですか?」
「それであっていますよ...それじゃあ行きますよ!」
目の前の魔獣に向かって、全速力で走っていく。距離を取っていたためか、魔獣の目は動くどころか完全に瞼を閉じていたが、あと20メートルといったところで瞼を上げ目を見開いた
「あの目...魔眼と言ったところでしょうか」
「魔眼...聞いたことはあるけど実在していただなんて」
「あの程度の魔獣が持っているとなると、自分よりも上級の魔獣から奪ったと考えるのが妥当でしょう」
「なるほど...なにか対抗策はある?」
「簡単に言えば攻撃あるのみなのですが、失礼ながら主の攻撃力では時間がかかりすぎてしまいます」
「どうすれば...っと」
上下左右から飛んでくる拳を避けながら必死に方法を探す。そこで、思い出す。そうだ、私は今は指示に従うことを選んだのだった。阿修羅ちゃんに視線を合わせ、一度頷いてから一文一句聞き逃さないように耳をすます
「先ほど伝えた術式の中に身体強化の術式がありますので、そちらをお使いください。それなら、あの魔獣の魔眼を攻略できるかもしれません」
「分かりました。えーと...これだ!敵を我が糧とし、その力で主を守りたまえ。フィジカルハンド!」
術式を唱え終わると、阿修羅ちゃんの右手が薄紫色に光りだす。その色は、魔獣の魔眼の周りに貼られているバリアと同じ色だった
「一の手・衝!」
阿修羅ちゃんが右斜め上の手を思い切り突き出すと、ぱりぃんというガラスが割れる時のような音とともに魔獣の魔眼に貼ってあったバリアが割られる
「ご満足いただけましたでしょうか主?」
「満足どころか...予想以上ですよ」
「ワレのバリアが...割られただと?クソ、本当に数だけではナイトイウノカ...」
「さぁ...どんどん行きますよ。マスターの敵討ちにはまだまだ足りませんからね」




