3.5話:登校と約束 sideあずさ
サブヒロインの掘り下げの為に書いたつもりですが思ったよりは長くなりました。
サブタイ通り3.5なので読み飛ばしても問題ないといえばないです。まあただ読んだ方が後に繋がるかなと。読み飛ばしてその内にみつきの事を主人公はなんでこんな女好きになるの?マゾなの?ってなったら理由の一つをあずさ視点で書いてるつもりなのでその時は読んであげて下さい。
「ぶふぉ!先輩に妹にされちまうぜぇ!」
そんな事をおばさんに言いながら私は玄関を出た。
おばさんは美人だ。デルモ真っ青な綺麗な脚だった。けど、あの恰好はいただけない。シャツをパンツにインしちゃいけないと思う。温かいとは思うけど。私も将来ああゆう恰好を好んでするようになるのだろうか?
自転車を取ってきたヒデと並んで歩く。この時間だと私の学校まで本当にギリギリだ。けど並んでゆっくり歩く。
たまにヒデに「もっと早く出たら?」と言われるけど冗談じゃない。にこにこ笑いながらいつも誤魔化すけど、内心では「どの口でほざきやがるぅ!」と怒り狂っている。なんにもわかってないのだ。ひでヒデは。
鈍感短足小僧なのだ。寛大な心で私が許してあげなきゃいけない。
バレンタインデーなので話題を振ってみた。学校が違うので探りを入れたい気持ちもある。計算高いしたたかな女。ヤバス。良い女の匂いがぷんぷんする。
「ヒデはさー。チョコ貰うん?」
「・・・・ははっ」
ヒデがすごんでくる。ぷふっ。いつも少し笑ってしまいそうになる。顔に出さずに心の中で少し笑う。本気で怒ってる訳じゃないのがわかるのもあるけど。
ヒデはちょっと童顔だ。すごんでもなんというか・・・可愛らしいのだ。無理やり目つきを悪くして背伸びしている小学生のような。ヒデ知ってる私だからそう見えるだけかもしれないけど。
でもこの反応で少し安心した。
「ひひ♪だよね!だってヒデだもんね♪本当にヒデは・・・・本当に・・・・・(´・ω・`)」
そう言ってヒデの脚を見やる。
(・´ω`・)←な顔で睨んでくる。ギザヤバス!顔がにやけてしまう。笑っちゃ駄目!正直に笑った理由をヒデに言ったら怒られてしまう。
別にヒデはバランス的に脚が短いわけじゃない。ただ全体的に小さいのだ。並んだ私よりも少し・・・・。そう少しだけ。ヒデと私の名誉の為に少しだけと明言しておく。
並んだ時に少しだけ私より小さいのが不満でついからかってしまう。別に恋人の理想に身長を求めたりしないが、なんとなく。そう、なんとなくだ。きっとヒデが私より身長が高くなっても不満に思うと思う。お高くとまってんじゃないわよ!と。私なら言っちゃうと思う。
でもこれで。今年も問題なくチョコを渡してあげられる。
「へへぇ。まあ心配しなくてもいつも通りわたしがやるじゃん!」
「義理じゃないか。その義理のおかげでホワイトデーがしんどいからいらないよ。」
毎年。ヒデにチョコを渡して、恥ずかしくなって悶々とホワイトデーまでを過ごしてしまう。つい、照れ隠しでホワイトデーはやり過ぎてしまう。しかしそれでもだ。可愛い女の子からのチョコをいらないとか贅沢すぎないだろうか。まさにお高くとまってんじゃないわよ!だ。
「わかってないね!ヒデは!そのお義理の為に命賭ける漢だっていっぱいいるんだよ!」
「よそはよそ。うちはうちだ。お義理に僕の財産を賭ける気はないっ!」
「金は命より重い…!そこの認識をごまかす輩は生涯地を這う…!」
ドヤ顔で言ってやる。ふふん。
私のインテリ博識な名言にヒデも感激の涙を流すことだろう。
「あずさ・・・・お前・・・・。まさかとは思うが期末試験まで2週間程度のこの時期に・・・漫画読んでないよな?約束・・・したもんな?」
なっ・・・!私は絶句した。あの台詞からそこまで推理するなんて!探偵か!?流石は明智君だ。この数秒間のやり取りで怪人二十面相の気持ちを味わってしまったよ。
「・・・・ははっ」
笑うしかない。勉強はしていたんだ。ただ不意に部屋の片づけをしたくなって・・・。気付いたら読破していた。だってしょうがないよね?笑うしかないよねー。
またヒデがすごんでくる(・´ω`・)。
笑ってしまいそうになるのを誤魔化す為に私も負けじとすごむ(・´ω`・)。
「いいよ。付き合ってやるよ。ホワイトデー。期末で死んだ死人のお前を鞭打ってやるよ!10倍返しですら生温い!100倍返しだ!!」
「ぇーーー!やだぁ!テスト明けとか遊ぶもん!大体ヒデは堅すぎるんだよ。まだ2週間もあるじゃん!!明日から頑張る!!!」
仕方ないじゃん!読んじゃうじゃん!やめられない、とまらないだよ!勉強中の漫画はどうしてああもおもしろいんだろう?
「『明日からがんばろう』という発想からはどんな芽も吹きはしない…!
そのことに、16歳を超えてもまだわからんのか…!?
明日からがんばるんじゃない…今日…今日だけがんばるんだっ…!
今日をがんばり始めた者にのみ…明日が来るんだよ…!」
「ひゃっほぅ!流石ヒデだよ!わかってるぅ♪ひゃっはー!」
ヒデはこうゆう欲しい台詞をバシッと言ってくれる!こうゆうところも大好きだ。そう。私はヒデが大好きだ。
「本当にあずさは・・・・本当に・・・・・(´・ω・`)」
私の胸を見てヒデが呟く。胸・・・だと・・・?
「きぃぃ!変態!私の胸は残念無双じゃないよ!!まだ発芽玄米だよ!」
ヒデの身長と同じだ!まだ高校一年生!まあもうすぐ終わるけど・・・・。とにかくまだ発展途上なだけだ!許せない!乙女を傷つけるとかゆるせいないなっしぃー!絶対にホワイトデーでやり返す!やられたらやり返す!100倍返しだ!!!
「いいじゃないか。あずさは年上からもてるんだし。」
「ちっちっちっ。年上だけじゃないよ?老若問わずもてるぜぇい?」
そう。先輩にも中等部や小等部の後輩。果ては先生まで私の虜だ。
「男女は問うのか?」
「ふふん。気になる?気になっちゃうかぁ♪」
ちょっと気分が良かった。ヒデが私の事を気にしてる。それだけでちょっと嬉しかった。次の言葉を聞くまでは。
「いや。別に」
「・・・・(・´ω`・)イラッ」
ちょっと顔に出てしまった。ヒデはカッとなった私に刺されても文句言っちゃ駄目だと思う。
「まあお前がもてるのは分かるしな」
そう。私はもてるのだ。なんでか。ヒデは分かるらしいけど。
先輩、中等部や小等部の後輩、先生まで私の美貌の前にひれ伏す。全員、女だけど。髪を切ってからは特にだ。
中学時代に男子に告白を受けた事もないわけではないけど・・・。無論、お断りしたけど。
「てか・・・ね。やっぱり女の子がいっぱいチョコ貰ったらまずいよねぇ・・・・」
女子にいっぱい。男性ホルモンでも出ているのかしら?熱い漢のでてくる漫画好きだし。
私にはライバルがいる。勝手にライバルだと思っているだけだけど。
桜花みつき。
私とヒデの小学校の時の同級生だ。そしてヒデの好きな相手。
ヒデが彼女を好きになったきっかけはおそらく、、、、私だ。私の所為だ。
小学生の時だ。私はカンニングをしてしまった。つい、出来心だった。自分でいうのもなんだけど、、、私は結構なお嬢様だ。家はずっと厳しかった。重圧があった。所詮は言い訳だけど。
馬鹿な私は幼馴染のヒデのテストの答案を写してしまった。記憶力の過ぎるヒデの答案を。
お世辞にも私は成績が良くなかった。それが急に満点を叩き出したのだ。クラスで満点はヒデと私だけだった。悪い意味で目立ってしまった。そのテストの結果を見た相手が悪かった。見られてしまった。クラスで一番素行の悪い生徒だった。所詮は小学生だ。やんちゃで済むのかもしれない。騒いだのだ。カンニングじゃないのかと。
ヒデは常に満点だった。小学生でミスがなかった。テストで先生のミスで作られた間違った問題を、当時先生が行ったいつの授業で、どのような内容だったかというような授業内容と照らし合わせて先生に指摘できる程度にヒデは異端だった。
小学校という小さな閉じた箱庭の世界は異端を嫌う。異端は化物だと。僕らが勇者だと。世界は自分を中心に回っているのだからと。その日のHRで行われた『学級裁判』。糾弾されたのは私じゃなくてヒデだった。頭が悪い事を決して理由にしてはいけないかもしれないけど、当時の私にはどうしてそうなったのかが分からなかった。悪いのは私のはずなのに。
私が悪いのだと言えなかった。怖かった。あの場所に、ヒデが立っている場所に私が行く事が。
言えなくて、震えているしか出来なくて、黙ってしまった。
あれは『学級裁判』じゃなかった。先生、、、大人も混じった『公開処刑』だった。ヒデに向いている子供の無邪気な悪意が、ヒデを疎ましく思っていた大人の生のむき出しの感情が怖かった。
学級裁判に至った、原因と経緯を正しく把握しているのはたった2人だけだった。
ヒデと、、、桜花さん。
ヒデは理解していただろう。犯人が私だと。でもヒデは責めたり、怒ったり、悲しんだりはしなかった。
ただ一瞬だけ震えている私を見て言ったのだ。「僕がやった」と。醜悪な悪意に晒されてなお、私を庇ったのだ。当たり前に。堂々と。
当時、ヒデのやったことは正しくない。正解では決してない。でも間違いだと指摘する資格は私にはなかった。
ヒデは罪を認めて激しく責められた。大人と子供に。もう名前も思い出せないけれど一番素行の悪い生徒は特にひどかった。鬼の首でも獲ったといわんばかりに。
それを止めたのが桜花さん。ヒデが一瞬私を見た、それだけで事情を察したのだろう。
あの悪意の塊に違うだろう!と。彼女は言って見せた。
大人には「もしも明智君がいままでそうゆう事をした可能性があったとするならそれに気付けずに止められなかったあなた達の責任でしょう!」と。
子供には「よってたかって一人を責めるのは間違っている!こんな白を黒にもする話し合いは卑怯だわ!」と。
今考えるとめちゃくちゃな論理だ。けど、ヒデを救ったのは間違いなく彼女だ。彼女は真っ直ぐにヒデと同じ場所に立つ覚悟を決めて言ったのだ。そして全ての事情を察している彼女はヒデの想いを汲んで、私の事を一切言わなかった。めちゃくちゃな論理になったのはこれの所為だ。私の事を言ってしまえば正しい論破が出来たはずなのだ。桜花さんは覚悟を決めて、ヒデと同じ罪を背負って見せた。
この後、何があったのか知らない。私は気付けなかった。桜花さんすらも。でも絶対にこの日にあった出来事が引き金になって、ヒデは虐めを受けていた。裏で。ひっそりと。先生も人だ。感情がある。それは分かっているけど一緒になって。ばれないように。彼を傷つけた。
私も桜花さんも虐めを受けたりはしなかった。彼という標的がいてくれたから。
ある日、彼は大怪我をした。彼は怪我をした経緯をまったく言わなかったけれど。その日を境に学校に来なくなった。不登校になった。命の危険があった。おばさんもなにも言わなかった。
不登校のまま小学校を卒業し、別の学区の中学に通い、県内有数の高校に受かってみせた。桜花さんのいる高校に。
ひでとは長い付き合いだ。桜花さんが目的だってちゃんと分かっている。その為に中学に通い出して、高校受験をする決意を固めた。
ヒデが桜花さんに向けている感情は恋・・・なのだろう。
けど、まだ大丈夫。桜花さんへの想いはただピンチを救ったヒーローへの憧れだって誤魔化しながら。自分の心に言い聞かせながら。譲れないものだから。
「ヒデはさぁー」
「?」
「まだ桜花さんを好きなの?」
「ああ。もちろんだ。」
・・・・・・・・
「そっかー。彼女は可愛いもんねー」
「可愛くて、綺麗で、清楚で、可憐で、女神────」
こうなって語りだしたらヒデは駄目だ。愛しいヒデが若干、キモうざく見えてしまう。恋する乙女フィルタ越しですら。
「そ、そか。」
よ、よかった。止まってくれたか。
「でも彼女はヒデには合わないよね!」
「余計な御世話だ」
「なんていうか・・・アイドルと自宅警備員・・・みたいな?」
「うるさい」
「でも・・・・」
「もう、いいって。なんだよ?さっきから。そのあたりの話はイラつかせるだけだって分かってるだろう?」
「うん・・・。なんてかさ。バレンタインだからかな?ヒデがいいやつだって私は知ってるじゃん?だからなんか勿体ないなって。」
「別にいいだろう。これで生涯を孤独死を迎えようが想えるだけで幸せだね」
「んー。ヒデにはもっと身の丈にあった、ヒデにぴったりの女の子がいるはずなんだよ!そう!例えばぁ────」
私!と答えられたらなにかが変わるだろうか?
「ふひぃっ」
二人で恋人みたいに歩く姿を想像してむずがゆくって、恥ずかしくって、つい笑ってしまった。自分でもキモイと思う・・・。
けど幸せな気持ちのままで
「───内緒♪」
と伝えた。
「なんだそりゃ。まあそんな話は関係ないよ。高嶺の花だろうがアイドルだろうが人外の女神さまであろうと桜花さん以外は関係ないさ」
心がきゅぅっと痛くなる。顔には出さない。出したらきっと心配させる。優しい・・・人なのだ。
今日というバレンタインの目的を告げる。まだ気持ちは届かなくても。
「あっ。チョコ渡すからさぁー夜の8時に星空公園ねっ!」
「8時!女子高生がそんな時間に出歩くなよ。」
「いいじゃん。近くなんだし。」
「よくないよ。そもそも義理はいらないよ。」
「いいじゃぁーん!ほすいぃアクセもあるしさぁ!」
指輪にする!勝手にそう決めた。
「目的がホワイトデーにしぼられてるじゃないか。まあいいや。行くよ。僕もしっかりお返ししてあげるよ。たっぷり死人に鞭打ってやるよ。」
ペンと参考書の幻影がヒデから視える。ペンと参考書の生霊だ!!こわい!
「やだぁ!そんなのいらないっ!同情するなら金をくれぃっ!!」
「はぁー。まあ毎年の事だし貰いに行くよ。てか家が隣なんだし別に家で良くない?」
「馬鹿だなー。これだから知ってる事だけしか知らない無知蒙昧の輩は。」
「・・・・ははっ」
ヒデがイラついていらっしゃるぅ!イラつく顔も可愛い。
「いいかね?ワトソン君。君はただのオムライスと「おいしくなぁーれ♪」とメイドさんに呪文をかけられたオムライスどっちを食すかね?」
「普通のオムライス」
「ガァッデームッ!!話が終わっちゃうじゃん!メイドさんだよ?可愛いフリフリでふしだらに振り振りしながら呪文かけてくれたオムライスの方がおいすぃに決まってんじゃん!!」
「いいかげんにしろ!彼女たちはふしだらに振り振りしない!!もっと清楚に愛らしく萌え萌え────」
「・・・・・・・・・・・」
あ。こいつ黒だわ。真黒ですわー。セウトですらなく完全にアウトですわー。
「イッタコトナイヨ?無知蒙昧の輩に常識的な所を教えてあげようかと・・・」
「ふぅーーーん」
確かにヒデの隠しているちゃーみんぐぅな本にメイドさんもいたな・・・。胸の大きな。胸・・・だと・・・(´・ω・`)。これ以上の深追いは私も傷を負う覚悟をせねばならぬ。
「まあいいや。いまので優すぃ私は察してあげるけど。なんにしても一手間でおいしくなるわけじゃん?」
「ソウダナ」
「つまりだよ?星空の下で待つ可愛い幼馴染っていうロマンスパイスがあればただでさえ私が作ってシャイニングなチョコがユニバァースじゃん?」
「・・・ソウ・・・ダナ」
「そうだよ。ギザヤバスなチョコがスパイスでギガントヤバスでヒデのハートはギガンティアヤバスになるんだよ!!」
「・・・・・ソウ・・・・・カナ?」
「するとだよ!ギガンティックヤバスなヒデは感激のあまり財布をホワイトデーでビッグバンヤバスな感じで開放するんだよ!!!」
「ひゃっほぅ!そうして私はほすぃ物を手に入れる♪キターッ!!これが現代における錬金術だよぉ!一は全、全は一!!」
ひゃっはー!ヒデから貰う予定の指輪をこっそり薬指につける想像しながらにやけそうになる顔を誤魔化す為にはしゃいでみせた。
「っと。おい」
ヒデに止められた。もう着いたようだ。我とはしゃぎ始めた目的をを忘れてエキサイティングしすぎちまったぁ。
「あ!もう着いたか。じゃあ8時にね!」
「ああ。また後でね。」
寂しくなる気持ちをグッとしまって、またあとでの言葉を励みに
「ばいばいきーん!」
走り出した。急がねばぁ。教育指導の先生にイケナイ教育指導を受けてしまう!あの女教師は何かにつけてセクハラする危険な教師だ!毎朝の走り込みでより強靭になった脚力を駆使して駆けだした。
今後の文章力向上の為にも試験的にでもやってみたかった事です。ヒロインサイドとか主人公以外のの心情を書くっていうのを。折角初めて考えるラブコメなので色々頑張ってみます。