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ミドルフェイズ(2)

■ミドル5「リヒトとの交渉」


▼インタールード


ターニャ:ありがとうごさいます、イガラさんっ。


GM:良いシーンでした!


ターニャ:今回は戦士のイガラが相手だったから〈白銀の守護者〉を渡しましたけれど、〈ほころびを手繰る〉のことも考えると、別の人に別の効果を渡してもよさそうですし、それに合わせてシーンも展開も変わってくるんですね。


アザリン:セッションは水物だから、そういう選択肢があるのはいいよね。


紫焔:しかし、安定のヒーロー&ヒロインでした。


GM:うん、ターニャがかっこよかった。こう大人しいだけじゃない芯の強さとか。


ターニャ:ありがとうございます。イガラが不器用かわいかったです。


GM:可愛かったですね。さすが隠れヒロインとご近所でも噂のイガラ。


イガラ:……いやいや、イガラがヒロインとか、それはない!


一同:(笑)


GM:さて、予定通り、次は交渉シーンかな。レイネシアと一緒にリヒトに問い詰める、そんなシーンになります。


紫焔:それがいいとおもいます。


ターニャ:ばっちり予定通りですね。


アザリン:シーン定義とシーン要請の宣言は……さっきやったから省略でいいよね?


GM:では、そんな感じで始めましょう!


アザリン:よーっし、いっくぞう!




▼シーン開始


 アザリンのつてを頼りに、レイネシアの名前と屋敷を一時的に借りて、リヒトを呼び出してもらうことになった。今か今かと緊張して待ち受ける中、玄関から待ちに待った声が届く。

「ごめんください。本日はレイネシア様のご依頼で西国の珍しい品をおもちいたしました」

 商人リヒトはこれからの儲け話に期待で胸を膨らませ、満面の笑みを浮かべて現れた。


アザリン:「いらっしゃいませぇー! ご主人様ぁ~ん」 美味しい商売の話に釣られてホイホイやってきた商人を、属性盛り過ぎ感満載な合法ロリ狐メイドが出迎えた!


一同:(笑)


アザリン:(後ろを振り向いて小声で)「……え? アイサツ違う? 違うの? メイド喫茶じゃない? そっかぁ……」(リヒトの方に向き直って)「ま、細かいことはいっか! ささ、ご主人様、こちらへどうぞぉ~ん」


GM:(商人リヒト)「は、へ、え……?」


アザリン:さりげなく腕を取って胸を押しつける動作! その豊満な感触は思考力を奪うのだ! これぞツツモタセ・トラップ! 戦いはすでに始まっているのだ! ……という感じでレイネシアちゃんのところに連れていくんだぜー! あ、〈高潔の白〉でレイネシアちゃんの参戦効果〈レイネシアの可憐な微笑〉を宣言するよー! このシーンにレイネシアちゃんを登場させるよー!


GM:はい。それじゃあ、引っ張られた先にはレイネシアがまっていて、リヒトをにっこりと微笑んで向かえます。レイネシアのセリフか……。


レイネシア(アザリン):「ようこそいらっしゃいました。ご足労頂き、感謝致しますわ。下々の噂では、商人殿は西方の珍しい品物を扱っていらっしゃるとのこと」


アザリン:「そう、たとえば『さまよえる滅都の鍵』とか……ね?」


GM:「っ!? な、何のことを仰っているのでしょうか、あは、はは……」


 アザリンPLの不意打ち攻撃! どこから計画していたかは判りませんが、レイネシアのロールプレイも自ら行う二人羽織、ならぬ、一人二役プレイです。そのレイネシアのロールも原作を読み込んだのか、実になめらかに慈愛あふれるお姫様。GM演じる商人リヒトもあっけにとられて、思わず腰の引けた対応を取ることに。……仕方ない。仕方ないんだ!


アザリン:「ネタは全部上がってんだぞぉ! さー出番だよー! カモーン・マイフレーンズ!!」 ……というわけで残り3人の登場を希望するぜー。


ターニャ:ぞろぞろと入って行きましょう。わたしは、リヒトの近くに。


紫焔:リヒトと扉の間に立って、脱出を防ぎます。


イガラ:じゃあ窓際に立つか……。ふふり。


GM:両手に花っぽいけど、リヒトにはそんな余裕はない、というところで、段階判定の説明をします~。段階判定はラウンド進行でいろんなイベントの解決を図るルールですよ。


紫焔:ふむふむ。


GM:今回は説得を選びましたので、リヒトを鍵の譲渡に同意させるのが目的です。具体的には、[交渉判定]に5回成功する必要があります。


イガラ:回数制限にはどういう意味があるんだ?


GM:ラウンドごとに、1人につき1回行動できます。全員行動したら、次のラウンドに移ります。


アザリン:ってことは、タイムリミットあんの?


GM:はい。段階判定をクリアできないままに6ラウンド目が終了してしまうと、夜になってしまい時間切れです。そうなると……


ターニャ:〈ロカの施療院〉が滅んじゃう……


GM:ということです。しかも、リヒトもところどころで嘘をついてごまかそうとします。その〈嘘を見破る〉のも判定が要ります。[知覚判定]もしくは[解析判定]ですね。嘘をつかれたら、これに成功しないと説得の判定ができないと思ってください。


紫焔:これは厄介だな!


GM:あと、リヒトを〈揺さぶる〉あるいは〈なだめる〉判定に成功すれば、仲間の判定にボーナスを得ることができますよ。最後に、違う人でも同じ行動を同じラウンドに行うことはできません。


アザリン:1人1行動だから、4人で分担しなきゃいけないんだな。


ターニャ:わたしは【交渉値】がちょっぴり高いので、説得担当でしょうか。


アザリン:レイネシアちゃんの効果で+1Dもらえるあたしが説得担当になるんじゃないかなあ?


イガラ:そういえば、そのほうがいいね。


紫焔:こちらは【解析値】が3ありますので、〈嘘を見破る〉担当します。


ターニャ:では、わたしはサポートの方に回ります。〈なだめる〉のほうが合ってるかな。


イガラ:【知覚値】も【解析値】も【交渉値】も2なので、俺は〈揺さぶる〉担当だな。


アザリン:「よーし、作戦開始だぜ。我が友、レイネシアちゃん!」


レイネシア(アザリン):「えいえいおー!」




▼ラウンド1


GM:役割は大体決まったみたいなので、段階判定を開始します。


アザリン:〈説得する〉も〈嘘を見破る〉も難易度12と高いから、〈なだめる〉と〈揺さぶる〉組には頑張って欲しいぜ!


ターニャ:流れ的には、〈揺さぶる〉から〈なだめる〉が基本ですよね(笑)。


GM:ムチとアメですね。


ターニャ:というわけで、先にイガラさん、おねがいします。


イガラ:おっけい、まずは〈揺さぶる〉で。「もうどういう話なのか大体割れてんだよおっさん、観念しろや」で、振るよ。3と3が出たので、2を足して8。ギリギリ成功。


GM:(商人リヒト)「な、何の話ですかなぁ、一体」 動揺しているようです。効いてますね。


ターニャ:では、そこをすかさず〈なだめる〉ね。「まぁまぁ。そんな、いきなり怒鳴られても、商人さんだって困るじゃないですか……ね?」


GM:「そうですね。ええ、その通り商売の話でしたら、私もやぶさかではありませんので」


紫焔:では、次は〈嘘を見破る〉で、お二人とも成功したから片方の援護をもらって+3でいきます。……よしっ!


GM:成功ですね。ステップ1に置かれた嘘トークンが除去されます。


紫焔:「フム。……リヒト君。さっき『知らない』と言った割には、我々の出す単語に非常によく反応しているようだが?」(ずいっ)。


GM:「はは、何のことでしょうか。確かに仰られるモノには心当たりがなくもないのですが」


アザリン:「今回、〈ロカの施療院〉を襲った悲劇については、レイネシアちゃ……姫も大変憂いておられるんだぞよ! だぞよ?」


レイネシア(アザリン):「聞くところによると、施療院には幼い子供たちも大勢居るとのこと。今頃、亡者の襲撃に怯え、小さな肩を震わせているのかと思うと、わたくしの胸は締め付けられるようです」 ハンカチをぎゅっと握る。


ターニャ:上手ですね、レイネシア姫のロール。


イガラ:いかにもそれっぽい感じ。


紫焔:そういう職業なのかな、アザリンの中の人。


ターニャ:詐欺師とか?


アザリン:アザリンちゃんはかわいいかわいい〈メイド〉さんだよ!(笑)


一同:(笑)


GM:押されてるっ!


アザリン:よっし、そろそろ判定いくぜ。「このアキバで姫を悲しませるようなことをしたら、タダじゃ済まないんじゃないかなー? 商売に支障あるんじゃないかなー? どうかなー?」 と言いつつ[交渉判定]……ダイスは2、6、5で13、【交渉値】の1に支援の3を足して17!


GM:「せ、施療院がどうかされましたかね……。そんなことを仰られても、私はどうしていいのか」 達成カウンターが1進みます! これでラウンド1が終了ですね。




▼ラウンド2


ターニャ:続けて〈なだめる〉。(ダイスを振る)1と1! ファ、ファ、ファンブルでした!? ……【因果力】使ってふり直し?


アザリン:いや、振り直さなくていいよー。レイネシアちゃんの効果あるからサポートなしでもどうにか行けるはず!


レイネシア(アザリン):「貴方様にも何か事情がおありなのでしょう? 無辜の人々を危機にさらすような真似を、好んでする人などいるはずがありませんもの。話してはくださいませんか?」


アザリン:――これでよし、成功!


ターニャ:ありがとうございますです! 助かりました!


 ファンブルをおこしたターニャ。それでも周囲のフォローは手厚い。特に参戦効果〈レイネシアの可憐な微笑〉で判定に+1Dを得たアザリンは、レイネシアと一人二役でリヒトをおいつめてゆく。




▼ラウンド3


紫焔:さて、〈嘘を見破る〉いきます! (ダイスを振る)6と3……出目が良いぞ、なんの罠だ。


一同:(笑)


ターニャ:そんな悲しいこと言わないで(笑)。


紫焔:「はて……しかしリヒト君。我々の掴んでいる情報では、キミが“鍵”をマルヴェス卿から譲り受けた、という話なんだがねぇ。この名前、聞き覚えが無いかね?」


 そのうえ紫焔のダイス運まで向いてくれば、リヒトには抵抗の術はないかに見えた。

 今回のシナリオに参加しているのはキャラクターランク1のPCたち。難易度12はただ無策で挑むには厳しい数値だ。もちろん【因果力】で判定を強化すれば十分達成可能な数値だが、今回プレイヤーたちはドラマ特技で万全な体制を整えている。

 シーン要請は「プレイヤーが積極的にセッションの舵取りを行なう」ことを可能にするシステムなのだ。とはいえ、リヒトは防戦一方ですこし可哀想……。


GM:「う、くっ……あ、あんな恐ろしいアイテムを運んでいただなんて、し、知らなかったんだ……」 




▼ラウンド4


ターニャ:「『あんな恐ろしいアイテムを運んでいただなんて、知らなかった』」 リヒトの言葉を繰り返す。「……今は、ご存知なんですよね?」 上目遣いで睨む。……〈揺さぶる〉の判定は成功です。


アザリン:あの、いつの間にかターニャが〈揺さぶる〉担当になってるんだけど……(笑)


紫焔:見てるこっちが怖い(怯)。


ターニャ:そんなに怖がらなくても(涙)。


一同:(笑)


GM:「あ、ああ、そ、その通りだ……いや、その通り、です……」


イガラ:「おい、落ち着けよ。今は話させてやれ」と言って、ターニャを〈なだめる〉。判定は成功。


紫焔:ターニャをなだめるんだ(笑)


アザリン:リヒトじゃなくて(笑)


GM:うまいことを……(笑)


イガラ:「それで、鍵は今どこにあるんだ?」


GM:「あ、アキバに来る前に、森の中で、捨てた……も、持っているのさえ、恐ろしくて……」


 このターニャの奇襲にちかい迫真のロールプレイにリヒトどころかGMも圧倒されてタジタジに。リヒトはもっとふてぶてしい悪役でクールな商人だったはずなのに、ヘタレな三下みたいなセリフしか出てきません(涙)。




▼ラウンド5


ターニャ:「……施療院にいたみんなが、どれだけつらい思いをしたと思っているんです? 大人だって恐怖で動けなくなるような状況に追いやられた、幼い子供の気持ちを考えたことがありますか?」 声が荒くなって……判定は12で成功。


GM:「そ、そんなこと私に言われたって……」


ターニャ:「でしたら……わからせてあげましょうか?」 ターニャの長く美しい金髪が、風もないのに大きく広がる。


GM:「ひ、ひぃっ!?」


アザリン:なだめて! 早くなだめて!(笑)


紫焔:このままじゃ大変なことに!(笑)


イガラ:よ、よし! 〈なだめる〉! ターニャを[運動判定]で取り押さえるぞ。


ターニャ:「あ……」 我に返ったターニャの手から杖が滑り落ちて、乾いた音を立てて転がる。


イガラ:「いいから落ち着け。やりすぎだ」 といいつつ端に引っ張ってこう。


ターニャ:「う……わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」溢れだした感情が制御できなくなって、声を上げ

て泣きだしてしまいます。


紫焔:「……ところで、リヒト君。キミの苦しい立場も分かる。ただ、この紫焔にもわからない事があるんだ。訊ねてよいかね?」 〈嘘を見破る〉の判定いきます! 失敗できないので、【因果力】1点でダイスを増やして……出目が1、1、6! 危なーい! 使っといてよかったー!


イガラ:使ってなかったらファンブルだったな!


紫焔:「リヒト君、我々は〈冒険者〉だ。魔法のアイテムに関してならば、キミより知っている。あの手のアイテムは、捨てると効果は消えてしまうんだ。が、この紫焔の見る限り、鍵の効果は続いているようだが……本当に、捨てたのかね?」


GM:「ううっ、それは……わ、私はこの鍵で大金が手に入るとマルヴェスに言われただけで……だっ、騙されたんだ! 私だって被害者だっ!」


アザリン:んじゃあたしも行くかー。「うん、あたしもリヒトさんは麻呂に騙された被害者だと思うなー」


GM:「そうだっ、私は何も悪くないっ」


アザリン:「だって、麻呂はリヒトさんに死んで欲しいんでしょ? 『野蛮な〈冒険者〉どもが無実の商人を殺して財産を奪った』って筋書きになれば、堂々と外交問題としてアキバに因縁ふっかけることができるしー? ついでに余計なことを知ってる人の口も封じちゃえるしー?」


レイネシア(アザリン):「あのマルヴェス様なら、ありえますわね……。リヒト様が死んだところで、自分の懐は痛みませんもの」


GM:「あ、あうあ……」


アザリン:「そりゃあたしたちだって、人殺しなんかしたくないけどさー。怪我や病気で苦しんでる施療院の人たちと、リヒトさんを天秤にかけたとして、リヒトさんのほうを優先する理由って無いと思わなーい? 麻呂の思い通りになるのはヤだけどー、みんなの命には変えられないって思うんだけど、どうかなあ?」


レイネシア(アザリン):「リヒト様、わたくしから最後のお願いです。鍵さえ渡していただければ、悪いようにはいたしません。このレイネシア・エルアルテ・コーウェンを信じてはいただけませんか?」


イガラ:完全にヤクザプレイだこの人たち(笑)。


アザリン:よし、これでトドメだ! (ダイスを振る)あ、達成値9じゃ足りない! 【因果力】使って振り直して……クリティカル! 段階判定クリアだー!


GM:「か、鍵は渡す……必要ならば、ミナミの情報もなんだって話すし、アキバでは薄利で商売する、だから、だからっ」 鍵を頭上に掲げて差し出して、小さく地面に這いつくばります。


イガラ:なら、そこに横から入って、鍵を乱暴に握って取り上げるよ。「……俺は、お前みたいな奴は嫌いだ。でもお前を殺したくはない。多分ほっといたら死ぬんだろうけど、見殺しにもしたくない。――とっとと安全な所に行っちまえ……!」 と言って鍵をポケットにねじこむ。


ターニャ:そんなイガラを、涙で滲む目で見つめています。


紫焔:お、かっこいい! 主人公の面目躍如ですね!


GM:リヒトはそのまま部屋から逃げ出します。同時にイガラの近くでポーンという音がして『幻想級アイテム〈さまよえる滅都の鍵〉を入手しました。イガラを所有者としてユーザーロックします』というメッセージが流れます。いわゆるイベントアイテムの所有制限ですね。売買や譲渡ができません。


紫焔:「……ユーザーロックか。一層責任重大だね、我々も」


イガラ:「最初っから乗りかかった船だろうよ、どうせ」


レイネシア(アザリン):「皆様、わたくしの力はここまでです。――後はお願いいたします」


GM:……と、レイネシアの依頼に対して各々が軽く頷いたりしたところでシーンを閉じます。


 わいわいガヤガヤと雑談をしながらリヒトを追い詰めた交渉シーン。シーンプレイヤーのアザリンは、公式NPCであるレイネシア姫との一人二役で巧みな誘導をしながら楽しそう。演出的にも濃厚なこのシーンは、ドラマ特技とプレイヤー全員の協力によるものと言える。

 豊富な段階判定テンプレートによる、非戦闘表現も『ログ・ホライズンTRPG』の特徴のひとつ。戦闘にならないルートを選んだ一行だが、しっかりとボリュームのあるミドルをプレイできたので満足そう。GMもホッと一安心! よかった。三下リヒトも報われるよ……。






■ミドル6「戦う理由」


▼インタールード


アザリン:お疲れ様ー! ……いや本当にお疲れだったと思う。長引いてごめんよう。


GM:盛り上がって美味しいシーンでした!


紫焔:いろいろと濃厚なシーンでしたね!


アザリン:――ターニャ怖かった(ぼそり)


一同:(笑)


イガラ:俺もシーン欲しいな。わりと欲しいな! 楽しそうだもんな! シーン要請なんだけど、別に1対1じゃなくてもいいんだよね? 3対1でも。あと0対1とか。十万対12とか。


GM:ええ、そうですよ。でも後半、何をするつもりなんですか……。


イガラ:となると、演説していいかな? みんなの前で事件解決に対する意気込みを演説する。


紫焔:おお、イガラが燃えている。


イガラ:自分は一匹狼系(笑)の無頼漢(笑)だけど、こういうのは良くない!とかそういう系の演説!


GM:では、〈ロカの施療院〉のゾーンでカギを使って門を呼び出す直前がいいでしょうか?


イガラ:そうだね。時間と場所はその希望で。


GM:了解! では「そろそろ空が赤く染まり始め出す時刻、準備を整えたイガラたちは、ロカの施療院のゾーンに到着した」というノリでイガラの要請シーンをお願いします。


イガラ:そんな感じでいこうー!




▼シーン開始


 夕焼けで空が燃えるような赤に染まる頃、イガラたちは〈ロカの施療院〉へと到着した。まっすぐに向かったのは、ほんの二日前にイガラとターニャが共闘し、幻影の門が出現した場所。

 まわりでは激戦になるだろう夜の襲撃に備えていた〈冒険者〉たちが、作業する手を止めて、あなた方の出陣を遠目に見守っている。

 イガラはおもむろに鍵を取り出し、ターニャ、紫焔、アザリンを見回してその口を開いた。


イガラ:「こうしてここに来たのは成り行きみたいなもんだけど。鍵を渡せないってことがわかったんで……。その――ひとつ、言っておきたい」


紫焔:腕を組んだ姿勢で佇んで、言葉を待ちます。


イガラ:「俺は(ステータス情報のギルドの欄を)見ての通りソロプレイヤーだし、あんまり大きなところの一部になるのとかは好きじゃねえ。でも今ここにいるのはたまたまとか、仕方なくとか、そういうのとは違う……。

 なんていうのかさ、あるだろ。どういう理由があってもさ、こういうところでデタラメにこんなことをやらかすのは。一旦関わっちまったのはたまたまだけどさ、それで始まった以上、何が何でも止めないと。俺はそう思ってる。だから俺は行く。それが俺の理由で、それは俺自身の理由なんだ」


紫焔:「……ウム。イガラ君、キミの覚悟、確かにこの紫焔が受け取った。キミにはキミの、そして私には私の理由がある。そしてキミが行くと決めたなら、私はキミの隣に並ぼう。皆の剣となろう」 そしてイガラ君は盾になってください。ボク体弱いんで(笑)。


一同:それかよっ(笑)。


GM:盗剣士は、そこまで弱くは(笑)。


アザリン:「んー、細かい理屈とか、別にどうでもいいんじゃないのかー? やりたいようにやりゃあいいじゃんかよーう」


ターニャ:「ありがとう、イガラさん。紫焔さんに、アザリンさんも……ありがとう」


アザリン:「おう!」


ターニャ:ロッティもいるよね。いる。そうきめたの!(笑) 不安そうに一行を見つめているロッティに微笑む!


イガラ:「いや、まあ、そういうもの、なんだろうけどさ。礼を言われたくてやってるわけじゃないんだ。ないんだが……あー、難しい。俺ぁ頭悪いからなぁ」


ターニャ:「わかっています。ただ、わたしがそうしたかっただけです。あなたが今、こうしてここにいるように」


イガラ:「紫焔のおっさんも多分そうなんだろうけど。頼むぜ」


紫焔:「そうだとも。さぁ、行こうか若者よ!」皆の肩をバンバンと叩いて、再び高笑い。


アザリン:「やりたいからやるでいいじゃんかよーう。さっさと片付けて、またここに戻ってこようぜー!」


イガラ:「そうか……。そうだな!」


 イガラが盛り上げる。キャラ設定時点では薄味だったので、ターニャとアザリンのダブルヒロインにくらべ、活躍面で少し心配もあったのが、「自分の気持ちを再確認する主人公」として存在感をアピール。これはこれで隠れた好プレイ。


イガラ:あの……ここまで演説してなんなんですけど、鍵ってどうやって使うの?


一同:台無しだー!?(笑)。


 と、オチまでしっかりとつけてるし。このあと、ドラマ特技の〈本能の宣託〉の使用を宣言。色々と悩んだようですが、ターニャに〈この胸に咲く誇り〉を渡した。いざという時、ターニャの回復魔法の手数が増えれば、パーティの建て直しができるという読み。しかし、この手の作戦通りにうまく行かないのがTRPGの醍醐味なのだった!


イガラ:よし、準備はOKだ。「行くぞみんな!」 鍵を取り出して使う。


GM:それでは、辺りに黒い靄が渦巻くようなエフェクトが発生します。あの夜に見た、半透明の門が現れる。その中央部では、月と同じ色と形をした真円の紋章が浮かんでいる。まるで吸い込まれるように門が開く。この先は、鍵の持ち主とそのパーティのみが進入可能なダンジョン。


イガラ:では、雪崩れ込むように全員ゲートに向かって、いざ! 突撃っ!






■ミドル7「ケチャップ味のオムライス」


▼インタールード


GM:次のシーンはダンジョン攻略になります。実際にマッピングをしながら、罠を調べたり敵と戦いつつ進むのも面白いのですが、今回はお話のテンポを大事にしたいので、ボスのいる部屋までの道中を「消耗表」を使ってざっくり解決します。


紫焔:いよいよ来ましたね消耗表……!(ごくり)


イガラ:消耗表……嫌な思い出が蘇るね……これ一発ですってんてんにされて(渋い顔)


アザリン:あーアレはキツかった。前に別のセッションで食らったんだけど、何も対策してなかったからほんとズタボロになってさあ。結局ボスにも勝てなくってさー。


ターニャ:あの……消耗表ってなんです?


GM:消耗表っていうのはですね――。


 PCたちは様々な困難や危険に挑み、それを突破していきます。それがPCたちの活躍となるのですが、すべての活躍を同じようにプレイしていては、限りあるプレイ時間中に行なえるイベントの数が減ってしまいます。それはそのまま、PCたちの活躍の場が減ってしまうことに繋がります。

 かといって、毎回「君たちは途中で怪物に遭遇したが、無事に撃退して目的地に到着した」などと省略していては、盛り上がりに欠けるセッションとなってしまうでしょう。

 詳しく描写したり、戦闘シーンとして処理するほどシナリオ的に重要な障害ではないが、まったく無傷で突破できるほど簡単でもない場面を、『ログ・ホライズンTRPG』では「消耗表」を振ることによって解決します。 

 「消耗表」によって発生するランダムな被害を受けつつ障害を突破したと扱うことで、シナリオ展開を適度に省略しつつ緊張感を保つことができます。


GM:ふふふふふ。そういうものなのですよ。


イガラ:便利かもしれんが、厄介だな。


GM:そうですね。では、シーンを開始します。




▼シーン開始


 門へと一歩踏み込みゾーンを移動した瞬間、空気がネットリとまとわりつくようなものへと変わる。目の前には、今まで幻影として見ていた都市が広がっている。

 まるで生けるものを拒むかのごとく、荒廃した古アルヴの街〈レッドムーンの滅都〉。その名にふさわしく空には赤い満月が昇っている。

 そして、死してなお都市を護るためか、侵入者を迎撃するように大量のゾンビがポップし、四人に襲い掛かってくる!


GM:というわけで、限定ダンジョン〈レッドムーンの滅都〉を進む皆さんのゾンビとの戦闘を「消耗表」で解決します。消耗表の種類は「体力」。


イガラ:俺〈サバイバビリティ〉をもってる! だから各自「1D-1」でいけるぜ。


一同:(ダイスを振る)


紫焔:ぎゃああああああ! どうしてこんなときにダイスが走るんだ!? [疲労:22]!


ターニャ:やーん。こっちは[疲労:20]。


イガラ:[疲労:10]。義務ははたした。


アザリン:出目高いな! [疲労:20]だ!


GM:[疲労]を受けると、【最大HP】が強度分減ります。6振ったのは紫焔か。出目がよかったようですね!


紫焔:【最大HP】が43から21になって、ほぼ半減しました(キリッ)。


アザリン:こっちは33-20で、【最大HP】13か。やばいね。


GM:これは皆さん、思ったよりも効いてますね。さて、[消耗表]はひとつじゃ済まない。


 廃墟の市街を抜け、あちこちから襲いかかってくるゾンビの戦いを潜り抜けた〈冒険者〉たちは、街の中央にある城へと到達する。城内で〈冒険者〉たちを襲ったのは、複雑なトラップや各種のギミックだった! 連鎖する仕掛けはある意味でエネミーへの対応よりも困難を極めた――


紫焔:トラップは盗剣士の担当なんだけど……。


GM:消耗表の種類は「物品」、今回もイガラの〈サバイバビリティ〉が有効ですから、各自「1D-1」で振ってください! 場合によっては、かなりアイテムが無くなるよ?


紫焔:(ダイスを振る)出目が6! またかああああああああ! こんな時だけ高い出目……。あぁ、そうだ……俺ってこういうやつだったっけ(遠い目)。


GM:ほうほう、皆さんよい出目ですね!(嬉) というわけで、所持品から[消耗品]アイテムを減らしてください。


イガラ:パーティ全体で7個ですよ。死ねということか!?


アザリン:結構被害がおっきいね。こりゃひどいや。回復処理もシーン中に済ませておこうぜい。ご飯食べようぜ。ご飯。


 そんなわけで、休憩を取ることにした一行。アイテムの整理も必要だし、[疲労]を放置していては、クライマックス戦闘もおぼつかない。実を言えば、今回の「消耗表」による被害は、ダイスの結果非常に痛手だったのだ。それこそ、クライマックスにいたるまでもなく全滅しかねないほどに。

 しかし休息をとるということで、急にいきいきと働き出すアザリン。折りたたみ式のテーブルを取り出して、テーブルクロスまで敷く。メイドの面目躍如か、ちょっとしたガーデンピクニックの様相になった。

 そんなテーブルの上にアザリンが人数分並べたのは、〈手作りメイドランチ〉。メニューはオムライスらしい。サブ職業〈メイド〉は支援系の能力を持っている。〈手作りメイドランチ〉によって手に入れた食料を振る舞うつもりなのだ。


アザリン:「おおっとぉ! 食べるのはまだ早いよー!」 チューブ入りのケチャップを取り出すと、手慣れた手つきでオムライスに似顔絵や文字を書く。なぜか異様に器用に!


紫焔:「メ……メイドさんのオムライス、だとっ!?」目に力が戻り始める。


アザリン:「ふぅー……できあがり!」さ、どうぞお召し上がり下さい。


ターニャ:「アザリンちゃん、器用なんですね……わたし、こういうの得意じゃなくて。なんだか、食べるのがもったいないくらい」


紫焔:「ウム、メイドさんのオムライスとか、こうでなくてはな! いただきまーす!」


イガラ:「ああ、美味そうだな! 腹も減ったしいただきます」。


アザリン:食べると「味のない湿気た煎餅にケチャップをかけた味」がするよ! 〈大災害〉後の冒険者には食べなれた味かな! ケチャップ(料理人による手作り)は味がするけど、オムライスはメニュー画面作成だから!


一同:……。


ターニャ:すっごく、悲しそうな表情。


紫焔:ギギギィと軋むように首だけを動かしてアザリンを見やる。「………ファハ?」


アザリン:「いや……ほら……あたし料理とか……作れないし……」目が泳ぐ。「せめて雰囲気だけでもーって……」


ターニャ:「そ、そうなんだ……ごめんね、アザリンちゃん……」なんだか申し訳ない気分に(笑)。


紫焔:ターニャは悪くない、というか誰も悪くないのですが、うん。


ターニャ:(料理は)手作りしないと味がしないのは、原作通りですね。


イガラ:いやもう、いたたまれなさがマックス!


GM、どうするんだ? え、えっと、アザリンさん何とかして!(暴投)


アザリン:「……。えーっと。唐突にオマケコーナー! 〈手作りオムライス〉の作り方!

 1:メニュー画面を開く。

 2:生産コマンドを選択。

 3:〈手作りオムライス〉のレシピを選択。

 4:レシピで指定された必要素材を所持していることを確認して生産開始!

 5:10秒ほどで完成!

 6:お好みでケチャップをかける。以上!」


一同:だから、それがダメじゃん!!(爆笑)


紫焔:「ウム。その、ケチャップの味が、素晴らしいアクセントだね……」 正確には、ケチャップの味しかしない。


アザリン:まあ、回復することはするから(データ的にそうなってるし)、全員[疲労]の強度を減らしておいて(笑)。


紫焔:はーい(笑)。それは素直に嬉しい。


 しかしここで、荷物から「回復薬」を取り出すターニャ。「あまり数が作れず、アザリンちゃんの分は用意できませんでした。ごめんなさい」などというセリフと共に、かいがいしく前衛に配るものだから、アザリンはヒロインの座の危機をひしひしと感じているみたい。……いや、そんなところに危機を感じなくても、イイと思うんだけどね。


アザリン:「ま、まずい……じょ、女子力で完璧に負けている……!」 ターニャの女子力オーラに圧倒されて目をそらす。「お、お気になさらなくてもよろしいかったりするんですわよ? わ、わたくしもがんばっちゃったりしますわ?」 必死の女子力アピール。


紫焔:「大丈夫だ、心配するなアザリン君」肩を叩いて、優しい瞳で言う。


アザリン:マジでっ!?


紫焔:「キミだって、ターニャ君に負けない女子力は備えているよ……その、ふたつも」 その視線は、アザリンの顔よりやや下に向いている。


ターニャ:「……そういうの、どうかと思います」 両手で胸を覆い隠すようにしてにらむ。


アザリン:「ふふーん」 胸を張って勝ち誇る。「この勝負、一勝一敗で引き分け、といったところかなっ!」


イガラ:「基準がわからん……」


ターニャ:いろいろとひどい(笑)。


紫焔:我ながらひどかった(笑)。


アザリン:いいよ、まとまればなんだって!(笑)


GM:あはははは、この流れでクライマックスフェイズに移ります(笑)。








※段階判定

 この頃のルールには「ミッション」というルール用語が存在しなかったため、このような現在のルールに存在しない用語になっている。また、段階判定=ミッションまわりのルールやデータも開発・研究途上であったため、今見返すといろいろと拙い作りで、微妙に恥ずかしいかも……。


※〈レイネシアの可憐な微笑〉

 “イースタルの冬薔薇”レイネシアがあらわれて、使用者の交渉に口添えする参戦効果。使用者が行なう[交渉判定]にボーナスを得られる。


※〈本能の宣託〉

 絆型ドラマ特技。蛮勇型のヒーローに配布される。心の底から湧きあがる内なる声が英雄を突き動かす。自分が選んだ対象に〈この胸に咲く誇り〉〈死纏いの棘〉のうちひとつを選んで取得させる。


※〈この胸に咲く誇り〉

 〈本能の宣託〉で他者に与えられる効果のひとつ。自分が受けているバッドステータスをすべて解除し、さらに追加でメインプロセスを1回得る。


※〈死纏いの棘〉

 〈本能の宣託〉で他者に与えられる効果のひとつ。今回は使用されなかったが、攻撃で与えるダメージを大幅に増加させる強力な効果。


※〈手作りメイドランチ〉

 サブ職〈メイド〉の特技。

 この頃のルールは、サブ職業のランクを成長させることでサブ職特技を取得するというマルチクラス制のTRPGに近いルールだった。しかし、PCデータの構造や成長方式の複雑化、プレイヤーの処理の負担増加などといったゲーム重量の問題から、PCの特技取得や成長はメイン職業に一本化される形となった。当時200個以上作ってあったサブ職業特技をいったん全ボツにするのは相当勇気のいる決断だったが、このリプレイを通して当時の環境を振り返ってみると、やっぱりバッサリ斬って大正解だったと思う。

 サブ職業用の特技は、現在のルールでは特定のサブ職業を使用条件や実行条件とする共通特技という形で再編されることとなった。この特技で言えば〈クッキング〉がそれに該当する。



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