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傭兵先生  作者: 五月
6/7

05:傭兵先生と小さな同居人



その後。 


炯汰けいた朱雫しゅながたまに質問しに来るくらいで、何事もなく1日目が終了。

警戒されてるみたいだから、しょうがないわな。

雰囲気的に過去のご教授方に対して色々と思うところがあるみたいだし。何やらかしたのか知らないが、俺に迷惑掛けるのはやめてほしいなぁ・・・。


まぁ、とにかく、仲良くお勉強ってのはまだまだ無理だろう。

生徒達の仲が良かったってだけで善しとするか。子どもの喧嘩の仲介なんて真っ平御免だ!











******************************











俺が今いるのはようがくに最も近い位置にある商店街だ。日和会ひよりかいという名の商会が取り仕切っているので、日和街ひよりがいとも呼ばれる。


新鮮な果物や野菜を見つけては購入。薬屋を覗いて香辛料を、パン屋では2,3週間分の食パンを仕入れていく。日用品や台所用品も買って財布がかなり薄くなってしまった。


食材や雑貨で重くなった袋を担ぎながら、最後に装飾店すずらんに入った。

ここで一つ問題が発生した。


(あぁ、しまった。ここ来てから買えばよかった)


すずらんの入り口を通れずに引っかかった袋をしばらく見つめる。

なんだか凄く間抜けだ。


(そういえば、自分で買い出しに行くの久々だったからなぁ。ここんところ買い出しは由良ゆらに任せてたし)


仲間の少女の顔を思い浮かべながら思う。

おっとりとした外見に反して、値引きに関しては歴戦の商売人達から恐れられる程の技量をもっている、俺達の傭兵団の優秀な財政担当者だ。

由良ゆらのおかげで、少し財布に余裕ができた。有難い存在である。


さすがに俺個人の依頼(?)の為の買い出しを由良ゆらに任せようなんて事はしない。こんな事で一々由良ゆらの手を煩わせられないし、年上の男としてのプライドもある。



・・・・・久しぶりに初心を思い出せて良いか。

玲愛れおに出会って、由良ゆらが仲間になってから、1人になることが無かったから、なんだか新鮮だ。

そう考えると気分が良くなってきた。


袋は相変わらず引っかかってるが。


「・・・・・・・・・・明日、出直してくるか」


無理に袋を引っ張ることはせずに、押し戻して店を出る。そもそも安い礼服がないか覗いてみようと思っただけで、服は持っているのだ。

恥ずかしいから店員が寄ってくる前に逃げよう。


「よっと!」


袋を担ぎ直すと、真っ直ぐようがくに戻った。











******************************











「・・・・・・・・・・・なんでお前いるの?」

「・・・・・」


俺の目の前で困ったように微笑んでいるのは、どこからどう見ても今日から俺の生徒になったわしの獣人の飛淵ひえんだった。


ここは特教に付属している教師用の仮眠室。

これから此処で寝泊まりしようと買い出しに行ってきたわけだが、帰ってきたら何故か飛淵ひえんがソファーでくつろいでいたのだ。


「生徒って学校が終わったら、とっとと家に帰るもんだと思ってたけど」

「・・・うん。ぼくね、住んでるの」

「・・・・・ここに?」

「そう。お家がちょっと、遠くて」

「ふーん?お前の家族、何処に住んでんだ?」

朱雀すざく様の山だよ」

「へぇ、炎山えんざんか。確かに遠いな」



遥か昔。まだ神が地上に存在した頃に、その守護聖獣の1人‐朱雀‐が舞い降り、住処とした山として有名である。そこから、朱雀の特徴になぞらえて炎山と呼ばれている。

国家公認の聖地の1つだ。



ようがくから、その炎山には馬車で片道1,2週間かかってしまう。


「で、ここに住んでるわけだ」

「うん」


生徒たちから感じる今までの教師陣のイメージからして、この仮眠室を愛用していたとは考えられない。

水道、ガス、電気がタダな上に、家具がある程度揃っている。もちろん家賃はない。

お金のない学生からしたら、これ以上ない程の最良物件だろう。


「飯とかはどうしてるんだ?」

「親がね、お金を送ってくれてるから」

「外食してるのか?」

「う~ん・・・・・たまに。ほとんど自分で。・・・あんまり好きじゃないけど」

「ふ~ん。・・・・・実はな、俺は今日から此処に住もうと思ってるんだ」

「・・・出てったほうがいい?」

「それだと、俺の後味が悪い。だから」

「だから?」


「俺と取引しよう」






******************************






・仕事分け


儺依ない:食事の準備、戸締り

飛淵ひえん:洗濯全般

共同:掃除、食後の後片付け、買い出し


※問題が発生したら、その時考える。臨機応変で。



・寝る場所


儺依ない:ベット

飛淵ひえん:ソファー(飛淵ひえんが寝転んでも余裕の大きさだったから問題無し)


飛淵ひえんが親から受けっとっているお金を家賃として儺依ないに渡す(親の了解を得てから)。

そのかわり、食費も生活費も一切払わなくて良しとする。

お小遣いは1月1000えん



「これでいいか?」

「うん・・・ぼく、洗濯は得意」

「よし。まかせたぞ」

「うん」


にこにこ笑う飛淵ひえんの癖っ毛を掻き撫でる。


(初めて見た時から思ってたけど、こいつかなり癒し系だな)


「これからよろしく、飛淵ひえん

「うん・・・・・・・・・・よろしくね、先生」


「よーし!何食べたい?記念に好きなモノ作ってやるよ」

「!ぼく、シチューがいい」

「わかった。ちょっと待ってろよ」


確かシチューのルーは買ってあったよな。

さっそく人参にんじんの皮むきから取りかかろう。




教師生活初日。小さな同居人が出来た。













飛「・・・おいしい」

儺「そーだろうそーだろう」

飛「先生、料理、上手なんだね」

儺「まぁな。ガキの頃から炊事洗濯は自分でやってたから」

飛「すごいねぇ」

儺「お前・・・なんかホント癒されるなぁ。今までに出会ったことないタイプだ」

わしゃわしゃ

飛「・・・・・先生、髪・・・ぼさぼさ、なる」

儺「けっこう柔らかい髪してるよな」

わしゃわしゃ

飛「・・・・・」






どうも飛淵は儺依の父性本能(?)をくすぐるようです。

話の中に出てきたえんは、そのまま円と同じだと思って下さい。



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