終わらないで、今日
ザワザワザワザワ…
「えっ!?ヤバっ!人多くない?今日平日じゃんね?」
「うわっ!ホントだ…。やっぱ卒業シーズンだからじゃない?」
これでも早起きして急いできたのに…。
開演前のパークの門前には、学生服を着た高校生がたくさん並んでいた。
私と桃華は最後尾に並び、パークを背に写真を撮る。
「ちゃんと充電してきた?舞衣、いっつもすぐ電池切れするから!」
「大丈夫!そんなこともあろうかと、モバ充、たくさん持ってきたから!」
私は自慢げにモバ充を取り出し、桃華と顔を見合わせて大笑いした。
笑いながら、少しだけ胸がズキンとした。
くだらない話をしてる間に、パークの門は開いた。
お揃いのカチューシャを付けて、チュロスとドリンクを両手に持ち、夢の国をとにかくはしゃぎ回る。
キャラクターに遭遇すれば、一目散に駆け寄り、キャラクターを挟んで写真を撮る。
夢の国のシンボル、聳え立つお城の前で、お姫様気分でも撮影した。
アトラクションに乗るにも長蛇の列ばかりだったが、学校での思い出話や、お互いしか知らない恋愛の話、推しの話など、話題に尽きることはなかった。
気づけば夕暮れになっていた。
私たちは夜のパレードに備えて、早々と場所取りをしていた。
桃華が食べ物や飲み物を買ってきてくれてる間、私は今日撮った何百枚の写真を見ていた。
写真を見ながら、気づくとスマホの画面にポタポタと涙が落ちていた。
桃華は自分の夢のために、海を越える。
私はまだ桃華に「頑張って!」と言えていない。
伝えたいのに、どうしてもその言葉が未だに出てこなかった。
そんなことばかり考えながら写真を眺めてると、涙が止まらなかった。
「…舞衣?」
桃華が不安そうな声で戻ってきた。
私は涙を手で拭い、桃華が買ってきてくれた自分の分の夜ご飯を受け取った。
桃華は何も言わない。
きっと何か口にすれば、お互い泣いてしまって、今日の楽しかった思い出も涙色になるのをわかってるんだろう。
「ここなら、キャラクターと目、合うかな?」
桃華は無理して話を逸らしたかのように思えた。
私も気持ちを切り替えて
「最前だもん!そのために2時間も待ってるんだから!」と、笑顔で答えた。
パレードが終わり、閉園を知らせる大量の花火も、今は祭りの後のように、白い煙だけが立ち昇っていた。
私たちはただただその夜空を見上げていた。
どちらともなく「行こっか」と呟き、私たちは駅に向かった。
電車の中で二人で写真を見ながらはしゃいでいた。
桃華の最寄り駅が近づく。
「じゃあ、またね!」と、桃華は力強く手を差し出した。
「…またね!」と、私は桃華の手のひらにハイタッチした。
走り出す電車の中から、桃華が見えなくなるまで手を振っていた。




