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Farcemythosー魔女戦争ー  作者: 奏似
一章 至高なる日々

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7/23

1-6

とかく冠婚葬祭というものは盛大に催されるものである。人や家名が大きくなれば、権勢を威示する為にも規模はいや増すことになる。

それが王の婚儀ともなれば、その豪華絢爛さは至上のものが求められる。だから多少莫大な借金がかさもうとも、また当事者であるところの男女が揃って簡素な式典を欲したとしても、それらのことが諸々の事情の前では所詮無為でしかないというのは、この際、止むを得ない。


早朝、日の出より先に始まった式典は、様々に段を踏みつつ進行する。

まずは領内の霊廟に赴き、建国王ヴァスガルトを始めとする祖霊たちに、リヴィニーシャを一族に加える許しを乞うた。ここでは久々に王城の土を踏んだ先王オスドウェルが、王族の総代として彼ら二人に許しを与える役を果たした。無論彼の役割はそこにいることだけであって、長の口上などは彼の名代が務めたのであるが。

次いで、謁見の間においては、諸侯が参列し口々に賛辞祝辞を並べ立てた。その列には建国当時からの名家であるヴィセル公やディリゼ候から新興の小貴族まで全ての高貴なる者が並び立っている。ラティアルトの父であるマージュ公も王族として列の先頭に立ち、息子の結婚を祝福した。

彼ら諸侯は皆それぞれ自領から山のように献上品の数々を持ち寄ったのであるが、どれほど広くとも謁見の間にその全てを持ち込めるはずもない。だから彼らはその目録だけをラティアルトに捧げ渡したのだが、その目録だけとしても、集めてみれば玉座の左右にうずたかく積み上がるほどであった。

諸侯からの贈進攻めが済むと、その後に続いてレイゼルク大司教イルカラクが二人にナバニールの祝福を与えた。教主サルディエが体調を崩したというので、その名代としてのことである。

敬虔なる女神の信徒ラティアルトとしては、何よりこの段を優先したいところであったのだが、しかし近習の者たちの猛反発を受け、両者妥協の上でこの順番となった。というのも、ジュナ王家の王権は王家と諸侯の承認によって与えられるものであって、女神に与えられるものではないからである。

なおかつ、ラティアルトの想いがどこにあろうと、ナバニール教団と王家諸侯の間には厳然とした緊張関係――その根となるのは先の女王メルエーヴェと教主サルディエの敵対関係であり、近年の教団勢力の拡大もまた諸侯との間に深い溝を作っている――が明らかに存在している。

王族の婚儀となればそれが私的なものであるはずはなく、そのような場で王自らが神の祝福を端緒に置いたとなれば、それは女神ナバニールの神権が王家諸侯の保有する世俗権力に勝るものだと明示することに他ならない。

そのような真似をすれば万民の動揺を招き、ことによれば王国の崩壊をも引き起こしかねないのである。近習の者たち――ディリゼ候やヴィセル公、侍従長オルゲウのように初代女王と現教主の対立を知る彼らの反発は、至極尤もなものであろう。

そのような経緯がある以上、謁見の間に満ち満ちた重苦しい緊張感の度は尋常ならざる負担を孤立無援の大司教に強いたが、さすがは教主サルディエの名代ということか、東辺最大の都市でもある聖都レイゼルクを預かる身のイルカラクは、音に聞こえし自慢の鉄面皮で恙無く式次第を済ませ、悠々場を後にした。


一転。


待ちに待った王妃の初お披露目である。

二人を乗せた御輿が城門から姿を現すと、大広場は、わっ、という大歓声に呑み込まれた。御輿を取り囲む近衛たちは儀礼式典用としか言いようのない豪壮な全身鎧に身を固めた上、それぞれ従者が二人がかり三人がかりで後ろを固めていたのだが、しかし数万という臣民の数に圧倒されては一溜まりもない。この際、彼らを御輿に触れさせなかっただけでも、近衛の健闘は讃えられるべきであろう。

なにしろ、終始そのような勢いのまま、民衆の興奮は収まることを知らなかったのである。御輿は当初、城の正門から出て大路を南へ下り、そこから市街をたっぷり一周して進む予定であったのが、実際には遅々として進まず、結局大路の半ばを過ぎた辺りで日が暮れてしまい、今日はここまでと引き返してしまったほどだったのだから。


そこから七日七晩祝祭が続いたのは、お祭り好きの建国王が作り上げた伝統といっていいだろう。罪の軽い者、反省の色の明らかな者には特赦が与えられ、国庫も気前よく開け放たれて、祭りの酒肴は尽きることがなかった。

もちろん城内でも連日連夜の宴会続きで、よくよく見るとかつてのお妃候補がちゃっかりどこそこの貴族やその子弟の隣に居場所を作っていた、などということも決して珍しいことではなかった。

この祝祭は三代王ラティアルトの婚儀であるというばかりでなく、大陸の文化が東西貴賎を問わず滅多やたらに混ざり合ったという点でも多くの意味を持っていた。ここでの交流は後々、王都ヴァドステンのみならず様々な地方で昇華され、大陸全体の発展を期待させるものとなった。


 世は黄金時代。今こそまさにその絶頂であると思われた。

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