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Farcemythosー魔女戦争ー  作者: 奏似


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1/18

音も色もない光景の中。


厳かに。

落ち着いた物腰で跪き、青年は恭しく腕を開いた。

正対する老人は、それを見るや鷹揚に頷き、声高に何事か喚き散らしている。

応えるのは、ぐるりと舞台を取り囲む群衆の壁。一様に凶暴な表情を浮かべて蠢く、常軌を逸した熱狂。

絡みつく不快な熱は、衰える様子もなかった。

それでも、やがて。

熱の引き始めを見て取ってだろう、老人は腕の一振りでそれを鎮めた。そうして一同の注視の中、彼は傍らの長剣を取るや高々と振り上げ、まるで天に捧げるかの如くに掲げる。

青年は瞑目して身動ぎもしない。

剣は、青年の胸を深々と、刺し貫いてく。

じわり。じわりと。


ーーと。

光景は、前触れもなく崩れた。

形を無くし、輪郭を失い、まるで霧が吹き払われるかのように消え去ってゆく。

残ったのは、女。

年若い女が一人、そこに立っていた。

彼女はただただ立ち尽くしていた。視線は虚ろに、青年のいた辺りを捉えている。

薄曇りの下、無数の躯を晒した荒涼とした地平は、そのまま彼女の心象を現したかのようだった。

その心の空洞を、ただ一つの言葉が木霊し、埋め尽くす。

何故?

過分の幸福に酔ってしまった?

誅されるに足る理由があった?

どうしようもなかった?

違う。違う、違う!

幾つもの自問と反問が空洞を埋めてゆく。空洞が満たされ、更に密度を増し、そしてそれらは静かに赤熱してゆく。その熱を、確かに彼女自身が感じていた。

不安はあった。危惧もあった。平穏に慣れ、知らず知らず気を緩めてしまっていた。

明らかな油断。それが彼を殺した。

私が彼を殺したのだ。私が……いや。私と、あの男が。

視線が、僅かに横に流れる。そこにはもう何もない。しかし彼女は確かに見ていた。浅ましい野心に塗れた一人の老人の影を。

震える。

激情が、身体を揺さぶる。

柔らかくたなびく黒髪も、陶のような白い肌も、彼女の美しさの全ては、今や毒を孕んだ鋭い棘であった。固く握られた拳から、鮮やかな紅血が散る花弁の如く、一滴、また一滴と滴り落ちていく。

「……許せない……」

感情が零れた。

一滴とて零してはならないと律してきた感情が、今は抑えようもなく溢れていた。

『そうだよね、許せないよね』

いけない、と思った時にはすでに手遅れ。

傍らの愛くるしい怪物は、楽しげに笑い、溢れた感情に浴し悦を浮かべていた。

街壁は竈に。

中の一切は薪に。

魔女の竈は一夜燃え続け、ラフダニは灰に帰したという。

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