プロローグ
軽快な入店音と共に如何にも疲れましたといった顔のサラリーマンが入ってくる。
形式だけの挨拶をする私も似たような顔をしていることだろう。
こんな時間のコンビニなんて来るのは残業終わりのサラリーマンか飲み帰りの奴らかカップルくらいのものだ。
「61番を2つ。」
缶ビールと少しのつまみとカップ麺をレジに置きながらそう言った、先程入店してきたばかりのサラリーマンに煙草を追加しレジに通す。
「年齢確認にタッチをお願いします。レジ袋はご入用ですか?」
割り箸を取り出しつつそう聞くと「お願いします。」と言った客と目が合った。
何故か憐れみの混じった目で見られた気がしたが、貴方も多分私と同じ顔をしてます。
だが、この人もまさか私が朝から夕方頃まで別な仕事で働いた上で今ここに居るとは思わないだろう。
袋に商品を入れ客を見送った私は、残りあと数時間この場にいる必要がある。
ため息はもう出し尽くしたので出てこない。
諦めの勝利ですね、嬉しくないわ。
別にフルタイムで働いている仕事はブラックという訳でもなくごく普通の職場で、余程贅沢をしなければ問題なく生活できる。
だからといってお金を貯めたいという欲も強く無いし、生活さえできればそれで良いと思うくらいにはお金のかかる趣味もない。
むしろお金が多めに貰えて残業のある職場よりも、生活できるくらいの給料で定時に帰れる職場の方がフルタイムの仕事を選択する上で重視したくらいだった。
「…あのエセ妖精。次会ったら覚えとけよ。」
そんな私が仕事終わりに仕事を重ねている不本意な状況は、2週間ほど前に遭遇した妖精という皮を被った悪魔のせいでしかなかった。




