アイ
もしも、人間とロボットが恋に落ちてしまったら?
もしも、お互いを愛してしまったら?
そうなってしまったら、あなたたちはどうする?
雲ひとつない快晴。
鮮やかに咲く桜の木の下には、たくさんの人で賑わっていた。
酒を飲み、ご飯を食べていた。
みんな笑顔だったが、その目は濡れていた。
桜の木の下。
人々の中心にあるのは、一つの墓石。
そこに掘られているのは二つの名前。
『桜』『アイ』
二つの名前の前にはたくさんのお供物が置いてある。
桜が空へ舞い上がった。
「きれいだ。」
僕はそう思った。
大きな桜の木の下。
僕は1人、桜を見上げていた。
他の人は、桜なんて見ていない。
下を向いて、画面を見ている。
何が楽しいのだろうか。
少し顔を上げればこんなに綺麗な景色が広がっているのに。
「私もそう思う。
とってもきれい」
声のした方を向くと、いつの間にか1人の女の子が立っていた。
僕と同じように桜を見ている。
「君は?」
「私は、桜。
この花と同じ名前なの
あなたは?」
「僕は、アイ。」
「アイ?
とっても素敵な名前ね。」
そう言って彼女は微笑んだ。
「本当に?
君は変わっているね。
みんなは女の子みたいな名前だって言うのに。」
そういうと、彼女はきょとんとした顔でをした。
すると次の瞬間、ふっと笑って言う。
「なんで?
「アオイ」とか「ユキ」とか女の子も男の子もおんなじ名前の子いるよ?
なのに、なんで「アイ」は女の子の名前なの?」
驚いた。
今までそんなこと言う子はいなかった。
「私は変だとは思わないよ
とっても素敵な名前だと思う!」
にっこり笑ってそう言った。
あぁ、この感情は、なんて名前なんだろう。
少し胸が痛くて、でもポカポカする。
1つ確かなのは、「サクラ」がとても綺麗だということだ。
その日から僕たちは毎日、毎日、桜の木の下で話した。
緑になっても、葉がなくなってしまっても、毎日、毎日。
周りの人は言った。
そんな奴と関わるなとか。
絶対に後悔するとか。
幸せになれないとか。
それでも僕たちは会った。
毎日、毎日。
そして、3度目の桜が咲いたとき。
彼女に言われた。
「私ね、アイが好き。
アイのことを考えると胸が痛くて、でもポカポカするの。」
「…僕もおんなじ気持ちだよ。
これは「好き」っていう感情なのかな?」
「本当?
嬉しい…!
アイ、付き合ってください。」
その言葉を聞いて、僕は幸せだった気持ちが一気に絶望に変わった。
「ごめん」
「どうして…?」
「僕は、人間じゃないんだ。」
「え?」
「僕は、AI。ロボットなんだ。
君と一緒のものを食べられないし、体は硬いし、君と一緒に老いることはできないんだ。
だから、僕は、君を幸せにはできないんだ。」
「何それ」
顔をあげて桜を見た。
桜は怒っていた。
「アイは私のこと好きじゃないの?
私といて楽しいって思ってくれないの?」
「そんなことない!
そんなことありえない!」
「なら一緒にいてよ!
一緒に幸せになってよ!
私の幸せを決めつけないでよ…」
桜は泣いていた。
でも怒っていた。
僕は、桜のことを優しく、壊さないように、包み込んだ。
それから、僕たちが会うのは桜の木の下だけではなくなった。
一緒に海に行ったり、遊園地に行ったりした。
他の人たちとは違って、できること制限はあったけれど、僕たちは幸せだった。
いつだって、2人でいれば幸せだった。
結婚もしたかったけれど、人間と、ロボットは結婚できない。
それでも僕たちは一緒にいた。
周りの目はいつだって厳しかったけれど、それでも一緒にいた。
ひどいことを言われると桜は言った。
「悪いことは何もしていない。
どうしてそんなことを言うの?」
と。
桜はいつだって、あの木のように堂々としていた。
一緒にご飯を食べることも、海に入ることも、老いることもできなかったけれど、桜はいつだって、僕に言った。
「ありがとう、アイと一緒だから私、とっても幸せだよ」
その言葉に僕はいつも救われていた。
何度、あの木の下で桜を見ただろう。
桜は今日も咲き誇っている。
今年は、それを近くでは見れなかった。
桜と病院で見た。
桜はもう寿命が近いらしい。
それを思うとなぜか胸が痛かった。
でも、前と違って幸せではない。
そして、とうとう、その日が来てしまった。
「ねぇ、アイ、私、もう時間みたい
最後に言わせて?
私ね、あなたと出会えてよかった。
あなたと一緒にいれて幸せだった。
みんなが私を変わりものだと離れて行ったけれど、あなただけは私のそばにいてくれた。
好きだよ、アイ。
私を幸せにしてくれて、私と幸せになってくれて、ありがとう。」
「嫌だ、桜、まだ行かないで、僕を置いていかないで…」
「この世にはね、形に残る永遠なんてないんだよ
あなたもいつか、壊れちゃう。
それまで少し離れるだけ。
ずっと待ってるよ。
アイ。
アイ、ありがとう、私ね、アイが大好き!」
あの日と変わらない笑顔。
「桜、きれいだよ」
そして、サクラは空へと舞い上がった。
それから僕は、桜と再開したときに胸を張れるように、人の役に立つことをたくさんした。
たくさん、たくさん。
すると、たくさんの人が、僕を僕たちを認めてくれた。
何回と桜を見た時、時代が変わった。
ロボットが人を愛する事例が増えたのだ。
それを実現したのはなんと、僕たちを見たかららしい。
僕は、もっと技術が進化して、もっと幸せを一緒に感じられることが増えればいいと思った。
その時に、僕はここにはきっといれない。
ミシッ
あぁ、時間が来た。
僕が壊れる時には、たくさんの人が来てくれた。
たくさんの人が涙を流してくれた。
あの時、桜は言った。
「形に残る永遠はない」
形がない「愛」なら永遠に残る。
なんて、都合のいい解釈かな?
ねえ、桜、待たせてごめんね。
今、そっちに行くから。
その後、たてられたのがこの墓石。
2人の存在を少しでも残しておきたかった。
たとえ、永遠がなくても。
今日も桜は空へと舞い上がった。
いかがだったでしょうか?この先の未来にあるかもしれない話。
あなたは何を思う?




