『耳掃除』
春の日差しが柔らかく差し込む午後、花子は居間で耳そうじをしてもらうため、夫の太郎に頼みました。
二人は、これが日常の一部となっていました。
太郎がそっと耳かきを使い、花子の耳を掃除していきます。
微かなくすぐったさに、花子は微笑みを浮かべました。
耳そうじが進むにつれ、花子は耳に違和感を感じ始めました。
「太郎、もう少し優しくして」
と、花子はお願いしました。
太郎はいつも通り慎重に耳かきを動かしているはずでした。
違和感が強まった花子は、我慢できずに
「もうやめて!」
と声を上げました。
驚いた太郎は、手を止めました。
その夜、花子は耳に痛みを感じながらベッドに入りました。
次の日、花子が耳鼻科を訪れると、医師は耳の奥に小さな異物があることを発見しました。
それは、子どもの頃に遊んでいたおもちゃの破片でした。
驚いた花子は、その破片がどれだけ長い間耳の中にあったのかを考え、怖くなりました。
医師は無事に破片を取り除き、花子の耳は元通りになりました。
帰り道、花子は太郎に感謝の気持ちを伝えました。
「耳そうじのおかげで、大事な発見ができたわ」
太郎も笑顔で
「次回はもっと気を付けるよ」
と返しました。
それ以来、二人の耳そうじの時間はより慎重で大切なものとなりました。
日常の何気ない習慣が、二人の絆をさらに深めるきっかけとなったのでした。




