表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/179

48話 私の知識の抜け


「なんだよ、コマチ顔色悪いじゃねーか」

「ずっとなんだよ。社交界で何があったのか聞いても言ってくれないし」


メリーとアテナがコマチに話しかけても何も反応がない。

口調は丁寧なのに言いたいことは結構辛辣に言う彼女らしくないのは、二年の付き合いでわかってる。


だから、余計に心配だった。

いつだって、何も言わなくなった人から消えていく。


(転生前の現代社会も、転生後のスラムも、それは変わらなかった)


学生時代、仲が良かったはずなのに口数が減っていって転校してしまった同級生。

社会人になって、おしゃべりだったのに突然静かになって病気になってやめていった同僚。

スラムのみんなが住民への声掛けをたくさん行っていたのは、協力して生きるためでもあった。


でもそれ以上に、もう懐かしいシー先生が「何かあればすぐに気が付けるように、声なき声にも反応できるように」って始めたことだった。


だから、何か言ってあげたいのに糸口がわからない。


物語に登場しない、設定をほぼ考えてなかったメイド三人モブを味方にしたのは原作破壊をするにあたって「物語に縛られないのでは」って考えがあったから。

ここまでそのおかげか、順調に「良き王女ディアーナ」っていう原作にはまずなかった評判を立てられてる。


でも、そのせいでキャラの感情も背景もよくわからないことがある。


(どうしてコマチが沈んでいるのか、仮説は立てられるけど確証が全くない。その状態で聞いてもし違ってたら、信頼関係を失うかも)


そうして私が迷っているうちに、一人の声が軽ーく場を飲み込んだ。


「コマチ、あなたって裏カジノの関係者ですか?というか、全くの無関係ではないですよねきっと」


一瞬、部屋が一気に冷えた。


当のコマチはびくっと体を震わせて、下から睨みつけるようにジークを見ている。


元凶の彼は「あーおなか減ってたんですよね」なんていいながら優雅にお茶を楽しんでるし。


それに、ジークのなんてことないように言った発言は、まさに私が考えていたことで。


聞きたくても聞けなかったことで。


(デリカシーないのか確信があるからなのかどっちだこの愉快犯執事!)


「裏カジノ……って何ですか?社交界であのお酒に酔ってた人が言ってたものですよね」

「あたしとコイツが、ここ一か月ずっと探ってた……この国の闇ってやつ?」

「おや、俺をコイツなんて言っていいんですか?明日はあなただけ組み手の訓練を3倍にしてもいいんですよ」

「先生面すんなし!それに、コマチをあんなところの関係者なんて何言ってんだよ」

「そこの考察力はまだまだのようですね。やはり足りないのは筋力より脳でしたか」

「ジーク、自分で言い出したならさっさと先を話しなさいな!あなたに話させると余計に時間がかかるんだから、手短によ」

「それは失礼。じゃあ簡単にお話ししましょうか、ひとまず紅茶のお代わりを入れた後で」

「今よ。もったいぶらないでちょうだい」


はいはい、と言いながらニコニコ?ニヤニヤ?しているジークはなんだか楽しそう。


やっぱりスパイの血が騒ぐってやつなのか。

ヤバそうな案件ほど滾るのか?


「え~、まず裏カジノ。これは最初にエラが来た夜、陛下の部屋で盗み聞きしてから全部始まりました。ちなみに、ディアーナ様はそんなものがあるって知ってました?」

「……話だけは」


嘘です。全然知ってます。


だって原作に出てくるからね。出番は多くないけど。

というか私が書いたお話なんだから、どう物語に絡んでくるかもわかってるわ!


「陛下は国民からかなりの額をむしり取ってる。なのにまだ暴動も革命も起きず、国民が暮らせているのはなぜか?はい、メリー」

「ええっ!あ、えと。みんな貯金をしてるから、ですか?」

「ハズレです。正解は『裏で国民を金で支えながら、生活を搾取してる連中がいるから』でした」

「それが、裏カジノ?ですか」

「そうです。いやぁメリーは素直で教えがいがありますね」


ジークの言ったことで、ざっくりとした説明は当たってる。


裏カジノ。


それは、戦三昧で国民をわざと怒らせてるのか?という政治をしているこの国がまだ存続できている皮肉な理由。


だいたい90年位前、ディオメシア王国の建国後、ディオメシアに占領されて行き場を失った者達が集まって暴動を起こした。


彼らは頭がよかったから、扱いに困った当時の王が「この国の国民として正式に認めてやるから、陰で生きろ」と約束をしたのが裏カジノの始まり。


初めは貴族たちの遊技場として公にできない賭け事の運営を行こなっていたから『裏カジノ』という名称で呼ばれている。


(ここまでは原作通り。でも、裏カジノはもっと後に存続不可になって、そのせいで王国を支えていた柱がなくなるんだ)


原作完結させるまでは、王宮内のことを書くことで精いっぱいだった。


だから、裏カジノは設定と役割と、裏カジノのボスのキャラ、あとはなんとなくの脳内イメージデザインくらいしか決まってなかったのが正直なところ。


王国が後ろ暗いものがあって、それによって支えられてたってことを書きたかったから入れた設定だった。


(物語を完結させた後でスピンオフ的に掘り下げて書こうと思ってたのに、その前に転生するんだもん。

裏カジノは重要だけど、原作者の私的にはほぼモブマフィア判定。だからこそ好き勝手に動かして原作にどう影響するか予想もつかない)


だから、これはちゃんと報告を聞かないといけない。

ある意味、王女らしい危機感がひしひし感じていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ