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279話 分断して始まる私の戦争停止戦

王宮の庭を走る。

そりゃもう全力で。


私がいた頃はちゃんと緑が揃えられて、季節の花々が咲いていた庭。

今は、庭師がいないのか荒れ放題になってる場所を。


寂しい気もするけど、そんなこと言う間もない。

私の周りを走るみんなと、脳フル回転で作成会議しながら全力疾走してるんだから。



「ワシとコマちゃんは東方面に離脱するからな。王宮に入るならもうすぐしたら見えるデカい窓から行け」

「それは目立ってしまうのでは?どこか別の入り口は」

「王宮内は極端に人が少ないようにした。それに、そこ開けとけば脱出の時も分かりやすいだろ。少しは考えろモヤシ」

「もや……!?ボクの白い見た目は生まれつきで」

「ルシアン王!今それいいですからっ!」



始まりそうになったミクサとルシアンの言い合いをメリーが一喝する。

ミクサには効かないけど、七年ルシアンの側近してたメリーの言葉は効果てきめん。


笑ってる場合じゃないのはわかってる。

でも、エラがくすっと笑ったのを見て私もちょっと笑った。



「ですが、よかったんですかディアーナ様。あの三人を置いてきてしまいましたが」

「たぶん、問題ないはずよ。戦場よりも、王宮内のほうがわたくしの知識が役に立つもの」

「でも、うまくいきますか?わたし、ディアーナ様の言うようにできるかどうか……」

「大丈夫よ。エラは、ルシアンから離れないことを徹底してくれれば生還できると思うから」

「ワシとコマちゃんの生存率は出しちゃくれねぇんだな。薄情な王女サマだ」

「悪かったわね。わたくし、そちらは『考えてなかった範囲』なのよ」



私と一緒に固まって走るのは、メリー、コマチ、エラ、ルシアン、ミクサ。

ジークとアテナと、ガーネティアはいない。


塀を乗り越える時に、行かないって言われたから。


『俺はやることがあるので、後から行きますよ。あなた方は好きに暴れてきてください』

『貴様がワシに王様ぶっ殺すから手伝えって言ったんだろ!逃げようってのか』

『ミクサ怖~いですねぇ。逃げませんよ、ちゃんとディルクレウスは殺すの頑張りますって』


ジークは、そう言って向こう側に残った。

アテナの容態を確認したかったのに、ジークはなんでかそれを許さないし、全体的に怪しさしかなくて。

それを問い詰める前にガーネティアから発された『わたくしも、一緒には行けないわ』発言のせいで色々うやむやになって、結局の今。


だけど、私は思いついちゃったからね。

半分くらい破れかぶれだけど、ちゃんと『戦争を止められるかもしれない』方法。


だったら、ついてこない奴は信じて放り出す。


ジークとアテナを信じてる。

あんなこと言うけど、ジークが本当にアテナ殺してたらもっと静かなはずだし。


ガーネティアは信じるとかじゃないけど、都合いいから放置でいいや。

原作では王宮にいるはずの彼女を今王宮に連れていけば、事態を引っ搔き回すことになる。


私が描いたディアーナ王女みたいに、変に無意味な行動されるよりはマシ。

ジークが戦闘力皆無の人間をただ放り出すとも思えないしね。




「確認するわよ!ミクサとコマチは任せていいのね?」

「おう、勝算は五分五分だけどな」

「ミクサに合わせます。自分の不足はありません」

「残りはわたくしと王宮突入するわよ!言った通りについてきなさい!」



私は、まだ原作者だから。

状況は変わっても、変わらないだろうことはある。


その記憶と、今のみんなの『狙い』と、原作にはいなかった優秀なモブ(原作外不確定要素)!!

私がしてきた伏線が、ちゃんと回収されなきゃいけないんだ。


この戦いでディアーナ王女の存在を示さないと、処刑エンドは免れない。



「じゃ、ワシらはいくぞ!」

「ディアーナ様、ご武運を!」

「ええ!あなたたちも!」



月光国の二人が何をするのか、正直私にはわからない。

原作でもそんなものなかったし、考えてないから。


あの二人は、ちゃんとこの戦いを止めるために動いてくれるはず。

それに、イレギュラーが起こってもあの二人なら何とかなる。

なんだかんだ、能力的に相性バッチリなんだから!


ミクサの言った通り、庭に面してるガラス戸を開く。

鍵は開いていた。

中に入っても人の気配はしない。



「人がいない王宮って、怖いですね……わたし、初めてかもです」

「メリー、あなたまだ王宮内部と物の置き場所は覚えているわね?」

「はい、あのころと変わってなければですけど……」

「なら、一緒に来てちょうだい。ルシアンとエラは、指定の場所へ」



不安そうなエラと、複雑な表情のルシアンが頷く。


ちょっと心が痛むけど、これも戦いを止めるため。

それに、必要な役者以外がいたら、事態がうまく転ばない。


特に、これから二人が相対する人間の前に私とメリーがいたら……。

うわ、背筋寒くなってきた。


絶対殺される……いや、別に私達がこれからする事だって死ぬかどうか綱渡りだけど。



「ディアーナ様、ボクにできると思いますか?」

「むしろ、あなた以外にはできないわ。それに、エラがいる」

「わたしがいるだけで、そんなに都合よく運びますか?」

「かなりわたくしの願望も入っていることは否定しないわ。だから、いざというときは判断してほしいの」

「何をでしょうか。ステラディア王として何ができますか」

「ただのルシアンとして、エラとして。それが最善なら、武力だって使うこと」



エラが目を見開いたし、メリーが口元に手をやった。

でも、ルシアンはわかってたみたいに剣に手を置く。


予想通りの反応。

だって、ルシアンがここに来る理由なんかそれしかなさそうだもん。

私への思いだけでここに来られるほど、彼の立場は軽くないんだから。


覚悟は、できてるみたい。

ここは原作通り……いや、それ以上のものが起こるかも。



「では、行くわよ。生きて、会いましょう」



人が極端にいない王宮で、二手に分かれた。

それぞれ、私が知ってる原作エピソードを回収するために。


王族を潰すのはできなくても、原作よりも結構変わっちゃった世界でも。

『この戦いを止める』くらいなら、できるから。


胸に手を当てる。

さっきから震えが止まらない。


武者震いじゃないことなんか、自分が一番わかってた。

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