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204話 私と同じを知る人か

まず整理しないと。

だって、もう原作者の私ですらどこから仕組まれてたのか意味わかんない。

あまりに私の知らない要素が増えすぎて、手に余る!


えっと、私は17年くらい前の6月にスラムでライラとして生まれた。

7歳の時にディアーナがスラムに来て、それをジャックが撃って殺したからディアーナに成り代わることになった……


(このとき、シー先生が言ったんだ。私が成り代わることがみんなを救うって)


それで私は、このまま物語が進行したら10年後にディオメシア滅亡→王族全員処刑って末路を変えるために奔走した。


なのに、そうだ。

祝福という設定は、それを根幹から揺るがしてる。

だって殺しても生き返るなら意味がない。

私の書いたお話では、間違いなく王族は全員死んだ。


(私が書いてない謎の「魔法的何か」の概念が、この世界を別物にしてる)



「おかしい、この世界は一体『誰』のものなの」

「ディアーナ様?どうされたんですか」

「魔法なんてないはずなのに、どうして簡単に受け入れてたんだろう。完全に異物でしょ」



誰かの声がしたけど、耳には入らない。

思考で頭がいっぱいだ。

どうして気が付かなかったんだろう。


『王家の不死』があるなら、この世界の未来は不確定なものしかない。


私が書いた話ではディオメシアはちゃんと滅んだ。

その後で王族の誰かがまた一旗揚げて、という展開もない。

でも、このままではそれがありえてしまう。


原作の中でディオメシアの崩壊は、そこそこ緻密に書いていた。

スラム特別保護区からシー先生ディセルとジャックを中心とした革命軍が一大勢力となり、バラバラだった他の反乱勢力をまとめ上げた。

そこへ同盟を破棄したヴァルカンティア、エラのことが引き金になって反旗を翻したソルディアとステラディア。

ディオメシアは何とか持ちこたえてたけど、裏カジノ(今の月光国)が根を上げて崩壊したことで内部崩壊を招いてほころびが見える。


それらが一丸となって多くの血が流れ、その末にやっとディルクレウスを捕え、ディアーナ王女を捕え、彼らの血をもってディオメシアは終わる。


(でも、私がディアーナ王女に成り代わって意図的に原作を崩壊させようとしてたから、その構図は早い段階から変わっていた)


ヴァルカンティアの宰相夫妻とは密に連絡を取った。

原作では連携不足が主な原因となって不信を呼んでいたから。


裏カジノを月光国として、良好な関係を築いた。

内部崩壊を起こす前に、恩を売っておこうって考えがあったから。


ソルディアとステラディアは、レオンは止められなかったからディオメシアに縛り付けちゃったけど、ルシアンを懐柔した。

ディオメシアを攻める勢力は一つでも潰しておきたかったから。


そして、王女として私は精いっぱい国民に目を向けて王族への反感を押さえようとした。

崩壊が起こるまでの10年間で、革命軍を興させないようにと。



「なのにどうして今、ディオメシアが崩壊しようとしてるかと言うと……」

「ディアーナ様…?どうしたのかな、なんか様子が変」

「おい、勝手に変なこと考えんな!」

「黙っててちょうだい。気が散るわ」

「は?今あたしらが話聞いてんのに考え事かよ」

「シー先生はなんて言ってた?あの日私に…」



そうだ、あの日。

七年前に密談した森の中。


『ライラ、あなたこれからどうするつもりで?』

『なんとかして敵を退けて、王宮へ戻ります。わたくしはまだやることが』

『それはやめた方がいい。死にますよ』


あの時の先生の顔。

不気味なくらいに穏やかだった。

小さいころ文字を教えてくれたのとおんなじ顔。


『ディルクレウスが今何を考えているのか私はわかりません。でもね、変化は起きたんですよ』

『それは今をやり過ごすのに必要ないでしょう』

『あなたは、ディオメシアをよくしようと王女をしていた。なら、なおさら私の言うことに従いなさい』

『シー先生に何がわかるの』

『ディルクレウスは王女を排斥したい。今回軍を差し向けたのも、本来あってはならないこと……これまで様々なことをやってきたあなたが、今死なれては困る』


明確にそう言い切った。

どうしてあそこで「おかしい」って言えなかったんだろう。

たくさん「どうして」が積みあがる。

疲れてたのもある、どうにかみんなが安全に逃げられるようにと余計なことを考えなかったせいもある。


『私と組みましょう。私の外国の仲間と連携して、然るべき時に動くんです』

『そうすれば今の危機を救える』

『きっとディオメシアにとって最高の結果が待ってる』



バカバカバカ。

あの時に全部言ったようなものじゃないか!

なんで何年も気が付かないの?


口車に乗って、シー先生の仲間に匿ってもらった。

シー先生が「ディルクレウスが王のままでは国民が苦しむから、退位してもらうために勢力が必要」って言ったから、仲間を集めた。


王女として原作に介入することが難しいなって私も分かってた。

だから、物語の外側からディオメシア滅亡を阻止して生き延びようとしてたのに。


まさか、そんなことある?

私以外に、同じ未来を知っているとでも?


ハッと思い出す。

どうしてこんな時ばかり、的確に思い出すんだろう。

物語補正なの?

都合よく登場人物が重要なことを思い出すなんて、あるはずないと思っていたのに。


『ディアーナ様に助けられたって男の人から花束をもらったんです』


あの時、感じた違和感が今更頭を殴ってくる。

やっぱり、違和感を後回しにすることは最悪の結果しか招かないんだ。



「紫晶草のとき……」

「おい、いい加減に」

「あの時、シー先生がメリーに紫晶草の花を渡すのは、あるはずないのよ」



だって、メリーは私っていう異物が「物語上のモブだから行動を起こしても支障ない」って判断して側に置いてるんだから。

そのメリーに、ピンポイントで原作でも彼がしないはずの「異変を知らせる」って行動をとった。



「どこから嵌められてたの!?」

「ディアーナ様落ちついてください!」

「全部!先回りされてた!」



導き出される答えは一つだ。

シー先生……国の崩壊にしか出番がないはずの、男。

裏設定としてディルクレウスの異母兄である彼。


彼は、私と同じ『原作を崩壊させようとしてる』人間ってことだ。

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