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101話 ドロドロ恋愛劇の当事者なんて私はなりたくなかった

私のこれまでを振り返る。

だって、それしか今できる事ってない。


まず9年ほど前にスラムに生れ落ち、割とすぐに孤児になる。

それで二年前にディアーナ(本物)が目の前で死んで、スラム全員の首を繋げるためにシー先生の提案で王女に成り代わる。

メイドを三人、専属メイドにしてアンナの暗殺を防ごうとして失敗。

その後ヴァルカンティアの宰相夫妻(ディアーナにとって母方の祖父母)と交渉をして彼らの後ろ盾&スパイの経歴を持つ男を専属執事として迎える。


ここまでは特に支障なかったはずだ…だって原作前の既定通りにアンナは死んだ。

ヴァルカンティアの後ろ盾は取り付けたけど、元々実の孫なんだからあって当然。

専属使用人を持ったことだって、あえて原作に深く関わるような人間じゃない人選をしたんだから問題ないはず。


(じゃあここ最近の行動だよな~!ちょっとやりすぎたなとは思うもん)


エラを優遇して社交界デビューを大成功させたし。

あと原作にはちらっとしか出てこないけど、経済を支えていた裏カジノ(現、月光国)を表舞台に引きずり出した。


(でも、ディオメシア王国にとって悪じゃないのにどうして私が排除されないといけないの?このままこの国にいたって17歳で処刑だけど、他国に嫁ぐなんてされたらディオメシアの連合国内の争いに巻き込まれてお陀仏だ!)


原作通りに行きたくないから抗うけど、正直二人のどちらに嫁いでも明るい未来は見えない。

原作でエラに惚れた二人は、後に国のための政略結婚をするけどどちらもうまくいっていないから。


(しかも属国で内戦始まって速攻殺される。なんでこんな展開なのかって?私が絶望を詰め込んで書いたからに決まってんだろ!)


は~本当にこの話書いてるとき病み期だったもんな。

意味もなく最後のほうキャラ殺しまくったもん。


と、そんなことはいいんだよ。

今はこのディルクレウスの自分勝手な発言にちょっとでも噛みつかないといけない。


このままだんまりしてたら私がアドバンテージ取れそうな条件も設定できない!

二年間、ヴァルカンティアのハイネおじい様相手にビシバシ国家運営交渉術で鍛えられてきたんだ。

そう、まさしく通信教育。

頭脳型ヴァルカンティアブートキャンプ!


「それは納得できませんわ!お父様、わたくしはこのディオメシア連合国の王であるお父様の唯一の子供。将来跡を継いでこの国を動かすことが決められていますのよ?」


そうだぞ!ディアーナはお前の公式な唯一の子供だ!

そりゃ、エラっていう存在はいるけど…ここまで実績もない、身元も世間的にはちゃんとしていない、何なら庶民だ。

別に庶民ディスしてるんじゃない。当然のこととして、現時点でこの国の未来を託せる存在が一人しかいないって周知の事実。


(なのに、原作にない『ディアーナの国外へ排除』なんてやる意味が分からない)


それをディルクレウスが知らないわけがない、当事者なんだから。

さてどう返す?

いつもの無表情なのに、私が歯向かったら口角上がってんの見えてんだよ。

この状況で面白がれるの?


「問題ない。続くものがいればいいのだろう?我は後妻を娶る」


そしてディルクレウスは国家運営の重臣と、レオンとルシアンと、私とエラがいるこの重要な会談の場で言いやがったのだ。


「我はエラを娶る。そして、ディアーナの婚約者は3か月後の10歳の誕生日までに決めるがいい。その日に我も正式に国民に新たな王妃を知らせよう…執事」

「はっ!陛下」

「先ほど述べたことを勅命として国内に知らせろ。今すぐに」

「承知いたしました」


彼の一声で出てきたのは、ディルクレウスの側近。

あの死んでいるはずのエラを見つけた地下空間にも現れた、謎の多い男だ。

彼は忠実に礼をすると、足早に謁見の間を出ていった。

私が「待ちなさい!」って言っても止まるはずもなく。


「お父様!あまりに早すぎますわ。それに、国民も混乱しますもの」

「興味がない面倒が一度に片付くのだ。我は問題ない」


「話は以上だ。後は任せた」と、この凄まじく混乱しかない空気を放置して玉座を立ち上がって歩いて行っちゃうディルクレウス。

みんなポカーンとしてる。私もポカーンだ。


(嘘でしょ?まさかの私にもタイムリミットが決められちゃったよ。完全想定外にもほどがある)


というか何よりも、この空気を丸投げで出ていくんじゃないよ!!

王族の勝手を諫めるのは重臣たちだっていいけど、今そんなことさせたら『ディアーナ王女は王族なのに臣下に頼りきりなのか』とか思われる!


私は大きく3回手を打った。

それだけで謁見の間は静かになって私に注目が集まる。

注目されるのはこの二年で慣れたけど、決してディルクレウスの尻拭いのために身に着けた技能じゃないんだけどな!


「静粛に。謁見は以上よ、皆持ち場に戻りなさい」


私の声で重臣たちはぞろぞろ出ていく。

そして残るのは私とエラと、レオンとルシアン。

完全なる当事者達である。


(どーすんだよ…三か月後、私含めて全員の人生変わるんだぞ)


原作では王子二人が滞在するとき、ディルクレウスも珍しく王宮でずっと過ごしていた。

ただでさえ味方を見つけるのが難しい王宮内で『ドロドロ幼女攻略乙女ゲーム~恋も愛もあったもんじゃない~』が開幕されるんだ。


思わず天を仰いだ。

9歳の王女にこれはねーわ、運命ってなんでこうままならないの?


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