悩み
俺とレナを乗せた車はそのまま帰路に着き、官庁に到着するとレナはそこで降り、本来であれば俺を乗せてそのまま泊まっているホテルまで向かうのだが俺はトイレに行くと行って、そのままレナと一緒に降りて行った。
トイレの個室に入るとさっきまで面会していたハルカの言葉が俺の脳裏を幾度も駆け巡る。それはただ好奇心や真実を知りたいという一種の正義感にも似た感情から波及したものでそれを知った後には彼の言うように何もない。
「.....クソ!......」
一人個室で怒りの言葉を吐き捨て、どうにかこのイライラした気持ちを発散させる。もしかしたら心のどこかでこの事件を追っていた頃から俺自身も薄々勘づいていたのかもしれない。結局好奇心とか正義感というような漠然とした感情を抱いていた部分をハルカには見透かされていたのだろう。俺はどこかの新聞記者とかジャーナリストですらない。この事件の究明をしてそれが社会的な何かに繋がることなんかない。ただただそれは俺の中で事件の真実を知ったというだけで消化されるというだけだ。
それにその事実を何か記事にしたり書籍に出したりとすることもさらさら考えていなかった。
「........はぁ.....」
俺はトイレの個室から出るとホテルへと向かう車に乗らずに少し歩いて帰ることにした。少し風にあたって頭を冷やして気分をスッキリさせたい。そう思って官庁を出て、
一人歩き出した。夕日があたり一面を照らし、そよ風が少しひんやりとして少しばかりは気持ちも落ち着かせることはできていた。
ただ、またしばらく歩みが進むとやはり同じ悩みが頭をよぎる。俺はそばにある河川敷の方に寄り道し、草が生え、坂になっているところに腰を下ろし、そのまま空を見上げるようにして寝っ転がった。
「........」
結局、俺は昔からこうだ.....何かやりたいことも見つけても中途半端に終わってしまう。今回の事件も真実を追うなんていう淡いもので臨むにはあまりにお粗末だった
それに彼にそこを突かれたことで崩れてしまう甘さへの自分への怒りやわざわざ悩む俺に意見までくれたミナトへの申し訳ない気持ちで俺の感情はぐちゃぐちゃになっていた
この事件を知った時、中途半端な俺を終わらせてくれる何かがあると期待してこれに飛びついていた。
この事件の真相にいち早く迫って解明することでこんな中途半端な俺でもやれば成し遂げられることを........
「はぁ.......」
俺はホテルに戻れないまま、ただ流れ行く時間が過ぎ去るのを呆然と待つしかなかった。
「すいません。すこし隣いいですか?」
突然、少し後ろの方から声が聞こえた。その方向を向くと
スラッとした出立の若者がそこに立っていた。
「?.....どうぞ」
俺がそう言うと俺の隣に彼は座った。
「ふぅ〜。少し冷えますね」
この出会いが二人の人生を大きく左右することは
まだ二人は知る由もなかった。
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