ある男との出会い
「ん........眩しい.......」
窓からは太陽の日差しが差し込み、部屋全体を明るく照らしていた。
あれ.......確か昨日はあの仮面のあいつと.......
「おっ!ミナト起きた?」
声がする方向に目を向けるとそこには昨日と変わらないマイがそこにいた。
それに部屋にはガラスの破片や血の跡もみられない......
昨日のは夢だったのか......僕を助けてくれたあの人影は....
「どうしたの?ボッーとして。」
マイは少しばかり心配そうな表情を向けた。
「いや、なんでもない。」
「ふ〜ん。じゃあとりあえず歯磨きと顔洗っといてね。
朝ご飯食べた後に出るから。」
そう言いながら、マイは荷物の整理を再開した。
僕は昨日の出来事のことを考えながら洗面台へ向かった。
2時間後
僕たちは朝食を食べ終えた後チェックアウトを済ませ、
次の駅を目指すことになった。
「うわぁ!すごい人だかり!」
ホテルを出ると辺りには昨日とは比べものにならないほどの人々が往来していた。
「えっと。次の駅はあっちだから右に曲がればいいのか。
ミナト、逸れないようにね!」
そう言い、僕たちは人の波をかき分けながら進んで行った
「ふぅ〜。ようやく落ち着いてきたかな!」
僕たちは先ほどの人波をなんとか通り抜け、大通りのようなところへ出た。そこには赤煉瓦の建物が数多く並び立っていた。
「ここからまっすぐ進んで少し坂を登ったらその駅に着くっぽい。」
「でも、駅の看板は左の方指してるよ?」
僕はすぐそばにある標識を見て、マイに問いかけた
「あれは国営鉄道のやつだよ。あっちは人が多すぎて
最悪3回電車を乗り過ごすことになるから。それに比べて民営の鉄道は少し運賃も安いし、すぐに乗れるからね。」
そうなのか。さっきの人の波もおそらく何割かは国営鉄道の駅を目指していたんだろう。
僕たちはしばらくこの大通りをまっすぐ進んでいた。
しかし、またしても目の前に人だかりができていた。
「困ったな〜。ここまっすぐ行きたいのに....」
マイは頭に手をやり、悩んだ様子で地図を眺めていた。
「お?昨日のお嬢ちゃんと坊ちゃんじゃねえか!!」
するとそこに昨日僕に帽子を売ってくれたあの商人が
こちらに声をかけていた。
「どうしたんだ?こんなところで?」
「あ!!昨日のおじさん!実はこの先の駅に行きたいんですけど、人だかりが多すぎて通れそうになくて....」
「そういうことならもっと近道があるから教えてやるよ」
「いいんですか!ありがとうございます!」
そして僕たちはおじさんの案内で駅への別ルート進んでいた。どうやら買い出しの帰りに僕たちを見つけたらしい
「........おじさん一つ聞いてもいい?......」
僕は一つ気になったことを質問した。
「ん?なんだ?坊ちゃん。」
「さっきの人だかりって何かあったか知ってる?
何かに騒いでるような感じがしたから。」
先ほどの人だかりは少しばかり人々がソワソワしていたのを僕は感じていた.......その原因を僕は知りたかった。
「.......昨日強盗の話したの覚えてるか?実はなあの犯人が
人だかりができてたすぐそこの路地裏で倒れてたらしくてな。」
強盗.....そういえば昨日おじさんが忠告してくれていたことを思い出した。
「だがな.....一つ気になることがあってだな。」
おじさんはそのまま話を続けた。
「どうやら血だらけで倒れてたらしいんだよ。しかも無数のガラスが刺さった状態で。噂だが変な仮面っぽいものもつけてたらしいしな。」
「!!!!」
仮面.....ガラス.....あいつだ。間違いない。
だけど.....なんであいつがそこに.....
てことは昨日のは夢じゃなかったのか.......
じゃあ、あの人影も........
僕の脳内にあらゆる情報が錯綜した。
「着いたぞ!ここが駅だ。」
「わざわざありがとうございました!!」
「いやいや!うちの帽子を買ってくれたお礼だよ。」
そう言いながら、おじさんは帰っていった。
しかし、僕にはその会話はほとんど聞こえることはなかった。
「よし!とりあえず切符買って汽車を待とうか!」
「..........」
「ミナト?ミナト!」
「うわぁ!」
僕はマイの呼びかけに驚き、少しばかり声をあげた。
「どうしたの?体調でも悪い?」
マイは今朝にも見せた表情をこちらに覗かせた。
「いや、なんでもないよ。」
マイは僕の分まで切符を買い、ホームへと向かった。
未だに僕は昨日のことを考えていた......
あいつは一体何者なんだ.....あの人影の正体は......
いろんなことが駆け巡り、考え込んでいると
汽車は音を立てながらすでにこちらに向かっていた。
「お!きたきた!結構早かったね!」
僕たちは汽車に乗り込んだ。周りには誰もおらず
いかに穴場なところであるかを如実に物語っていた。
「とりあえずそこ座ろっか。」
椅子は4人掛けの椅子しかなく、僕たちは端っこの方にあった席に腰をかけた。
ガチャ.....
すると、向こうの号車との扉が開き、そこには一人の男性がこちらをみながら立っていた。
「お!?珍しいな!この汽車に人がいるなんて!」
そう言いながら、その男はこちらに近づいてきた。
服装は僕と似たような黒いコートを着ており、
帽子も黒色のハット。肩にはカバンを下げ、
手には雑誌のようなものを持っていた。
「ちょっとそこに座らせてもらっていいか?」
男は僕たちとの向かい席を要求してきた。
「あ。全然いいですよ!」
マイは笑顔でそう答えた。
「すまないな。あ!名乗るのが遅れた俺はケイ。よろしくな。君たちの名前は?」
「私はマイで、こっちはミナトって名前です!」
「へぇ〜。二人ともいい名だな!」
そう言いながら、ケイはこちらに席に腰掛けた。
このケイとの出会いが僕たちに多大な影響を与えるとはこの時はまだ知る由もなかった.......