官庁への移動
僕らは下のバイキングで朝食を食べ終え、一旦部屋に戻った後にもう一度準備を整えると下へ降り、迎えに来る車を
待ち望んでいた。まだ8時代で気温も低く、肌寒さが少し感じながら、雲の間から覗く太陽の僅かな光で体を温め、皆それなりに厚着をしていたが、それでも体を身震いさせる程には外は一段と冷え込んでいた。
「寒......まだ来ないのかな。もう10分近く経つけど」
白い息を吐きながら少し愚痴を漏らしながら、マイは地団駄を踏んでいた。
「お。来たんじゃないか」
ケイは遠くの方を見つめながらそう言い、僕らもそれを合図にその向いていた方向を凝視すると、少し遠くから
自動車らしき影が見えるのがわかった。
その車が僕たちが待っている通りの道路に止まると中から
運転手らしき人が降り、僕らに軽く会釈をした。
「寒い中お待たせして申し訳ありません。さあ。こちらへお乗りください」
僕らが乗る座席の扉を開け、ここに座るように促されると
僕以外の3人がまず後部座席に座り、僕は前の席の方に腰を下ろした。運転手も僕らが座った後に自分の席に戻り
ハンドルを握るとそのまま首尾よく走り出した。
初めて乗る車は馬車と違い、快適なものがあり、
道行く景色がみるみるうちに変わっていき、汽車や馬車などとは比べ物にならないほどの場面転換が僕の目に映り込んでいた。
「皆様。官庁へは残り数分で到着しますので」
思っていたよりも早くの到着を聞き、昨日にもあった緊張がさらに増す感覚に襲われ、その緊張を逃すように僕は
移り変わる回りの景色をより一層眺めていた。
「お疲れ様です。皆様着きましたよ」
到着したその場所は少し大きな門と鉄の扉のようなものがあり、脇には警備兵のような人たちが所々に散見していた
「お!思ったよりも早かったな」
遠くから少し声が聞こえるとその方向には小走りにこちらに向かってきたシキがいた。
「じゃあ、とりあえず俺についてきてくれ」
僕たちは全員が車から降りると門があき、シキはこちらに歩み寄ると官庁の中へと案内してくれた。
僕はその歩みを進めながらこれから会う人物への想像を膨らせていた。