それぞれの会話
ホテルの室内を歩いていくと4人分のベッドがありながらもなお窮屈さを感じることもないほどの大きな部屋で
窓からは帝都の街の風景を一望できる位置にある。
ここから見える夜景などを思うと疲れて早く休みたいとするという気持ちがスッと遠のいていく。
「じゃあ、私はこの角で3人はどこに寝る?」
マイは自分が指定したベッドに持っていた荷物を置くと
僕たちにどのベッドで寝るのかを尋ねてきた。
「ミナトが窓側なら.....二人はどっちにするの?」
僕が窓を少し眺めていたことを感じ取ってか僕のベッドは
窓側の一番端の位置になり、二人のベッドも案外すぐに
決まっていた。
「ふぁ〜!前のホテルより上質なフカフカ具合!このまま寝てしまいそ〜」
マイは独り言をいいながら、ベッドに倒れ込むようにして
顔を埋めた。トウでもしたような会話を聞いていると
懐かしい思い出が色々思い出される。
それはマイも同じだったようでトウの時のことを語り始めた。
「懐かしいな〜。前のホテルの時は怪物出たりとか大変だったよね」
「え!?お前らホテルでも怪物に襲われたのかよ!」
部屋に響き渡るほどの驚き具合をケイは見せ、サクなどは
露骨に耳に指を入れ、うるさいということをアピールしていた。
「でも、マイがあの時助けてくれたしね」
まだ自分の力を十分に理解していなかったあの頃はマイが
駆けつけてくれていなかったら今無事に過ごせているかはわからない。マイにはほんとに感謝いなくちゃ。
「それにしてもあいつ何者だったんだろ。もしかして幽霊城で戦った奴らの仲間とかなのかな」
ベッドでゴロゴロとするマイから出てきた言葉に僕も同様のことを考えていた。
幽霊城で対峙した彼らが僕らを招き入れるような行動を取ったこともそれに関係しているのかもしれない。
「あ。そういえばここってバイキングとかあるのかな?」
「フロントの奥を進んだ先におそらくあるぞ」
マイはお腹が空いたのかバイキングの場所を聞くとサクが
瞬時に答え、僕たちはその速さに驚きを隠せなかった。
すると部屋中にぐぅ〜とお腹が鳴る音が響き、音の方向からサクであることは明瞭だった。サクは誤魔化すように咳払いをしていたが、マイはくすくす笑い、下にあったバイキングに二人は行くことになった。おそらくフロントにいた時にこのホテルの地図か何かがあったのを見たのだろう
サクはこうやって接してみるとクールそうに見えてこうした一面もここまでの旅で垣間見えていた。
僕とケイは部屋に残ることにし、マイたちは空かせたお腹を満たすために下へと降りていった。
「.......」
ドアがバタンと閉まると共に先ほどまでの明るい雰囲気とは正反対の少し重い空気が僕たちの間に流れていた。
そう.....ケイには逸らしていた答えを聞かなければならない。
「ねえ....ケイ。もう一回だけ聞くよ」
「.......」
「何か....帝都に気になることがあるの?」
ケイのどこか気が置けないような仕草.....
僕はその答えを二人だけのこの場ではっきりと聞きたかった。そしてケイは数十分の長い沈黙を破り、ようやくその
答えを話し始めた。