協議
その時の空は薄暗く曇天が覆っており、先ほどまでは降っていなかった雨がしきりにあたりに降り注ぎ、まるでこれから送ることを暗示するかのような不穏なものを私に感じさせていた。車が軍部の官庁につくと私は急いで官庁の建物内に入り、執務室へせっせと足を運んだ。
私が部屋に入り、数十分ほど経った時にリョウも到着し
私は彼に現時点での情報確認を求めた。
「で?状況はどんな感じだ?」
「ええ。まだ全容は掴めてはおりませんが、どうやら西部からの民間人がドラッグ・ラインの第5城門近くに倒れているのが発見され、その後死亡が確認されたらしく、特に外傷なども見当たらず、まるで何かに罹ったかのようにもがき苦しんでいたようです」
「もがき苦しんだ?」
そのワードが私には引っかかった。まさかとは思うがまたあれが......いや、考えすぎかもしれない
「詳しいことはまだ全くわかっていません。ただ、苦しみながらも何かに怯えているような様子が確認されたことは報告から上がっていることは確かです。西部で何か不測の事態が起こっていると見て間違い無いでしょう」
私の脳裏にはハルカからの警告めいたようなあの言葉が
反復するように駆け巡り、近くの机に手を置き、私は視線をそのまま下に向けたまま考え込んでしまった。
「とにかく、今は何か対策を打たなければなりません。
少しでも遅れれば手遅れになるかも」
「駐屯していた第5師団司令部から連絡は?」
私は西部に駐屯していた1個師団の第5師団からの連絡があったかを確認した。我が国の軍の中でも精鋭部隊と呼び声高い部隊で何かあればその部隊からも連絡が来るはずであった。
「いえ。第5師団からは何も。境界線警備の独立守備隊からの報告は先ほどのもののみで、他にはなにも...........
閣下。最悪の場合第5師団が全滅している可能性も視野に入れ、対策を考えなければなりません」
もし、リョウの言うように第5師団が全滅しているという事態を想定すれば、内地にある7個師団を使ったとしても
おそらく抑えることはできない。それに今の内地の部隊の多くを引き抜けばやつらから攻撃を受けることは必須なはず。
「閣下。こうなったらあくまでも手段の一つですが、私からの提案としてこの案も頭の片隅に置いておく必要があるかもしれません」
リョウは私に歩み寄り、ある提案を持ちかけてきた。
その提案は私に衝撃を与えた。そしてそれは今までの
軍部のやり方を根底から覆すものでもあった......