西部からの知らせ
「はぁ......」
少しため息をつきながら、私は最近の日課になっている行程からようやく自室に到着し、椅子に腰をかけた。
それにしても、あのハルカの何か忠告めいたようなものは
詰まったように私の脳裏にこべりついて離れなかった。
ハルカは適当な推論のようなもので物事を判断したり
決断したりするタイプでは決してない。おそらく、何かしらの証拠やそれに準ずる何かに基づいて言ってるのだろう
だけれど、未だそのような報告は私には入っていない。
いくら西部開拓地の主要権限を大蔵省や鉄道省が握っているとはいえ、何か起これば電報なり使者なりで私に情報が渡るはずだ。
「........」
私はまた次の機会にその詳細を聞くことにし、無音が支配する自室で椅子から立ち上がり、足音を響かせながら書斎へと進んで行った。ハルカとの望まぬ形での再会となる前は公務が終わればこの書斎で私が気に入った書籍などを漁り、読むことが日課となっていたが、最近は滞り気味となっていた。それに最近は邪の五傑の一角のレオと張り合ったという少年やその仲間の
情報も私のところには入ってきている。その情報収集にも追われており、中々息つく暇はなかった。
私はいくつかの書籍を手の中に抱えるとそのまま別室へ移動しようとした。すると先ほど椅子に座っていた部屋から
電話の後が聞こえ、塞がった手を苦戦しながらも扉を開け
近くにあった机の上に書籍をスッと積み木のように重ねて置くと、鳴り響く黒電話の受話器に手をかけ、電話の主に
対して話しかけた。
「はい。もしもし」
「閣下。このような時間に申し訳ありません。至急お伝えしなければならないご報告がございまして」
電話の主は私の右腕で参謀次長を務めるリョウだった。
彼がいなければ今の私はここにはいないと言うほどなくてはならない人材だった。
「どうした?こんな時間に」
「どうやら、西部でよからぬ事態が発生したようです」
私はその一報を聞き、先ほどまで消し去っていた不穏な感情が一気に湧き起こり、ただその場に立ち尽くしながら
報告を聞いていただけだった......