視線
その頃、ミナトたち4人は目的地で汽車を降り、そこでの
聞き込みなどを終えるとさらに別の街へ向かうべく足取りを早めていた。そして今はその道中に位置する薄暗い林の中におり、辺りもすっかり暗くなっていた。
「どうしたの?ケイ。さっきからソワソワして」
「まさかお前、トイレ我慢してるのか?だったら俺ら目瞑っててやるからそこでしてこい」
「違うわ!なんかさっきから誰かに見られてるような気がする」
マイやサクは少しふざけながらケイを揶揄ったが、
その周りにはやはり誰もいなかった。
「ホラ。誰もいないじゃん。あ。もしかして幽霊城で攫われてからビビってる〜?」
「そ、そんなんじゃねえよ!それに俺はあの件ぐらいでヘタれるような代物じゃねえよ」
「でも、あの森の中でお前、ミナトにくっついて離れず寝てたよな」
「え!?まじ!?」
3人はそうたわいもない掛け合いをし、僕もそれにクスクスとしながらその様子を見守っていた。
「ミナト〜!それは嘘だって言ってくれよ〜!」
「確かになんかくすぐったい感じはあったけど、あれケイだったの」
「げっ!お前もそっち側かよ」
「あははは!冗談だって!」
僕とケイはそう言い合いながら、さらに奥へと進んでいったが、ケイの言った通り、何か僕も誰かに見られているような視線を微かに感じていた。
周りを見渡してもやはり誰もいない。でも、何かハンターに狙われた獣のような感覚が僕の中にあった。
「あ!あそこに家があるよ」
そう言いながら、マイは奥の方にあった一軒家を指差した
この林の中にポツンと佇んでおり、明かりは見えず、
誰か住んでいるような様子は見受けられなかった。
「とりあえず、もうあたりも暗くなってきたし、寄ってみる価値はあるかもな」
サクの提案に僕らも賛意を示し、その一軒家へと足を速めて行った。しかし、それは僕らを招き寄せるための一種の策謀のようなものだったとはこの時は知る由もなかった。