境界線への使者
この世界は大きく2つの地域に分けられることができる
一つは帝都や主要都市をいくつも含み、この国の文明を牽引している東部地域。
そしてもう一つは様々な食糧や鉱物資源などを豊富に産出し、東部の生活の底を支えている西部開拓地である。
西部開拓には古くから大蔵省・鉄道省などが開発に積極的に携わり、そこに政府との関係が深い大財閥たちの資金援助も手伝い、大規模開発が進み、豊富な資源を東部に供給している。またそこに住む先住民族たちは何十年も前に大反乱を起こして以来、大蔵省などが駐屯を許可した僅かながらの軍部の部隊に敗れて以来、東部政府の支配下に置かれていた。軍部はこれを理由にようやく認められた1個師団を駐留させることに成功していた。
この西部開拓地は東部生活を支えるのみならず政府や大財閥の多くの利権の源にもなっていたのである。
そしてその大反乱以来、本格的に建設が始まり、数年前に
完成を見たのが総延長352キロ・高さは24メートルを誇る大城壁ドラック・ラインが築かれていた。
これは東部防衛のみならず西部からの情報を制限し
政府側が入手した情報を取捨選択しながら公開することにも役立っていた。そしてこの城壁にはおよそ2個旅団の
約3千名の兵士が駐屯していた。
その巨大城壁ドラック・ラインに今新たな脅威が迫っていることはまだ誰も知らなかった.....。
ドラック・ライン 第5城門
すでに日も落ち、辺りはすっかり暗くなっていたが
守備兵たちは近々来る他部隊との交替を心待ちにし、
家族のもとへようやく帰れることの喜びに浸っていた。
兵士A「ようやく内地へ帰れるのかー!2年振りの家族との再会はやっぱり、嬉しいものがあるな!」
兵士B「ハハハ。まあ、2年もここにいるとそれはそれである意味では寂しさもあるがな」
この二人の兵士は雑談をしながら、最後の周辺地域の警備を担っていた。
兵士A「そうか〜?俺は一刻も早くここを去りたいものだな。寒いし、周りにはなんもないし、ましてや上官も厳しいときたら。っておい。聞いてんのか?」
兵士B「おい。あそこ見ろ。誰か倒れてないか?」
二人はその場所の近くによると、そこには喉などを押さえながら、もがき苦しんでいる人間がそこに倒れ込んでいた
この出来事がすでに西部奥地で起こっていた悲劇の使者となることはこの時は誰も知らなかった......