願い
このところの帝都アスカは曇り多く時々雨が降るような状況で日差しが街を明るく照らすようなことは当分なく
街には若干淀んだ空気が充満しているようだった。
そんな中で帝都の中心地でポツンと聳え立つ建物があった
その門のところには司法省という文字が刻まれていた
その司法省の建物の一室に一人書類に目を通しながら、考えに耽っている人物がいた。
風貌は少し若い風の男でフロックコートを着用し、
目が悪いのか黒縁のメガネをかけながら、書類を精査している様子だった。
コンコンッ
「ん?入りなさい」
「失礼します。閣下。レナ参謀総長がお見えになっております」
「おお!レナか!すぐ通しなさい!」
彼が許可を出すとすぐにレナは部屋に通され、彼女の来訪に喜びを露わにしていた。
「お前さんから直々に訪問とは珍しいもんだな!さあさあ
とりあえずそこに座って!何か飲み物でも出そうか?」
「いえ。大丈夫ですよシンさん。すぐに戻りますから」
レナはそう言いながら、近くにあったソファーに腰をかけた。シンと呼ばれた彼も向かいにスンッと腰をおろした
「で、今日は何用できたんだ?」
シンは早速本題に移った。おそらくレナの先ほどの言葉を聞き、彼女の心情を汲み取っての結果だったのだろう
「........シンさんに今日はお願いがあってきました」
シンからの質問に対し、彼女は頭を下げながら彼に願いがあると訴えでた。シンにはその要求がなんなのかははっきりとわかっていた。
いや。もしかすると初めから彼女がここを訪れていた時にはすでに心のどこかでそう察していたのかもしれない
シンの回答は実に早かった。
「彼のことできたんだろ?」
それを聞くと、レナは先程まで下げていた頭をのそっと上げ、シンに対して真剣な面持ちでその目線を真っ直ぐに向けていた。