語られる真実 〜レナ視点〜
「それで、何しにきたんだ?わざわざここまで」
この言葉を聞いて私はどことなく安堵しているような感覚を覚えていた。あの頃と全く同じ。飄々としていて
他人には全く興味がないような風であり、何を考えているかも出会った当初はほとんどわからなかったし、
関わってからも時々わからないことがあった。
積極性などは皆無で他人とは極力関わらないような
そんな性格だった。
そんなハルカがあんな事件を起こして、最初それを聞いた時は同名の別の誰かが起こした事件だろうと言い聞かせていた。
「ねえ。どうしてあんな事件起こしたの?」
私は彼に思ったことを正直に聞いてみた。
すると、彼は途端に鼻で笑うようにしながら答えた
「お前は相変わらずだな。思ったことを正直に言うところは昔と全く変わってない。お前は昔から誰に対しても
正直で人をよく信頼していた.....それがお前の良さでもあるがな」
彼の私の性格に対する分析はあの頃にもされたことがある
お前は思ったことを正直に言う。また人を信頼しすぎる
それはやがてどこかで災いを招く....なんてことを言われた
彼はそうやって人のことをよく見ていた。
おそらく言わないだけでわずかな変化やちょっとした違いでも彼は誰よりも早く気がついている。
だけど、彼はそれとは逆に自身の感情などにはそうした鋭さのようなものを持ち合わせていないように思えた。
一体自分は何がしたいのか。またなぜこんな感情が生まれるのか。おそらく今回のこともそのどこから出てくるか
わからない感情に突き動かされるようにして。
「.......お前には関係のない話だ。知ったところで何になるって言うんだ。所詮俺とお前はあの時のたった3年間だけだろ」
彼は私にそう告げた。だけれどその言葉が私には本心には見えなかった。
「閣下。もうそろそろ時間です」
事前に設定されていた10分という時間が過ぎ、案内人は
それを告げるためにドアを開け、私に伝えた。
「.......」
私は静かに立ち上がった。
「確かに私たちはあの高校での3年間の関わりしかないかもしれない。でも。私にとってはハルカを含めた4人での
時間はすごく大切な宝物だった。無作為に人を刺そうとするような人じゃないのは私がよく知ってる。だからこそ知りたいの!ハルカはその時間をくれた大切な一人だから!」
私は語気を荒げながら、彼にそう語りかけた。
勢いあまって目頭から涙が溢れそうになるのも必死に抑えていた。それほどまでにあの心地良い時間をくれた一人の
彼の本心を知りたかった。
「閣下.....さあ....」
案内人はさらに催促し、私も落ち着かせるために息を少し吐くとドアの方へと足を向けた。
「あいついたんだよ。あの会社に....」
「あいつ?あいつって誰のこと?」
私が出て行こうとすると彼は私を止めるようにして口を開き、私は聞き返した。
「......だよ」
彼はその名前を口にした。それは私もよく知る人物の
名前であり、ハルカや先生とも深い関わりを持っている人物だった。




