次の一手
俺はすかさず耳を傾け、やつを補足しようとした。
しかし、何故か一向にやつの気配は掴めない。
「ハハ!所詮はそんなものか!脇が甘いんだよ!」
その声と共に俺の真後ろに現れ、小刀のようなもので
飛びかかり、手首に掠れ僅かな血が壁や廊下のカーペットに落ちていった。
今はかすり傷で済んだが、あれをモロに喰らったらそれだけでは済まされないだろう。
初めて経験するタイプの敵を前に心臓の鼓動が若干早く脈打つのを感じ、体験したことのない感情に戸惑いを覚えている気がした。
俺はさらに周囲の音に耳を傾けた。一つでも微かな物音を取り逃がせば俺の負けだ。こいつに勝つにはそれは必要不可欠なことだ。
「....上か!!」
俺はその瞬間に銃を構え直し、振り向いた方向に弾を放った。
「クッ!!!」
弾は僅かに肩を掠る程度にとどまり、俺も向かってきた小刀の攻撃を交わしたが、服にはその攻撃によりやぶれ、
肩を斬られることはなんとか避けることができた。
「次で終わらせる.....」
そういうとそいつは再びその姿を暗闇へと消していった
おそらく次の一手で終わらせるつもりなのだろう。
俺は目を閉じ、少し息を吐き捨て、体をほぐすような動きをした。体全体が熱を帯びるように熱くなり、額からはいくつかの汗が伝っていることがわかった。
次で全てが決まる。このことが俺にもたらした影響は甚大だったのかもしれない。
この静かな空間の中で俺の心臓の鼓動がいつになく大きく
俺の中で鳴り響いていた。
「........」
気づいた時にはそいつは気を失い、その場に倒れ込んでいた。俺はどこを撃ち抜いたのか。ましてやいつ撃ったのか
わからなかった。
ミナトたちと合流するために俺はその場を後にして行った