解放
「なんでこういう時に限ってあいついないかな〜」
そう文句を垂れながら、その子は瓶を必死に開けようとしているが、びくともしておらず苛立ちを募らせていた
「おいおい。まさか開けれないのか?やっぱ子供だな〜」
「うるせえな!お前、自分の立場を少しは弁えろ」
いつもは他のやつに開けてもらっているのだろう。
これを利用する他ない。俺はそう思った。
「なんなら、俺が開けてやろうか?その瓶」
その提案に対して、その子は訝しげな顔を俺にスッとむけてきた。
「ふっ、ふざけんな!これぐらい一人で開けられるわ!
今はたまたま手が滑ったりして開かなかっただけだ!」
「そうかそうか。手が滑っただけなら一人で開けられるな」
そう言い、俺が引っ込むとその瓶をそっと自分の背中に入れるようにして隠した。おそらく自分で開けられないことを悟られたくないのだろう。そう思うと中々可愛げのあるやつに思えてきた。
それにさっきから少し、チラチラとこちらに微かな視線を感じる。本当は開けて欲しいと言いたいが、人質の俺には言い出しにくいのだろう。これを利用して脱出するチャンスを無駄にするわけには行かない。
「あれ?おかしいな。なんで開かねえんだろ〜?」
わざとらしく開かないふりをみせ、遠回しに開けて欲しいと言っているような素振りを見せた。
「良いのか〜?このままじゃそれ。飲めないぞ?」
ここで俺は最後の揺さぶりをかける。相手が子供みたいなやつでつくづく良かったとこの時思った。
「......わかったよ!ただ一瞬だけだぞ!わかったな!」
そして、俺は縄を解かれ、そいつの瓶を開けてやった
「はぁ〜やっぱうまいな〜!」
「俺が開けてやったんだからな。少しは感謝しろ」
「ふん!人質の分際で頭が高いぞ」
そう言いながら、そいつはジュースを飲み続け、俺は一気に畳み掛けることにした。
「おい。なんかゴミついてるぞ」
「はぁ!?どこだ?とってくれ!」
「待てよ。今とってやる」
そして俺は先ほど俺を縛っていた縄でそいつを縛り上げた
「おい!貴様!なんて卑怯なやつだ!!」
「なんとでも言え。へへ。じゃあな!」
そして、俺はその部屋の扉を開け、周囲を確認しながらその場を去った。
そして、果てしなく続いている暗がりの通路に飲み込まれるように俺は進んで行った。