戯れ
「おおっと......なるほど炎ですか.....」
私は咄嗟に刀を抜き、少し後退りをし、刀を構え直した
ここに来るまでの戦いで否応なしにも攻撃に対する敏感さは体に染み付いていた。
「どのぐらいの実力かと思っていたら、中々やれそうな実力をお持ちのようですね」
そう言うと仮面の人物は私を真似るように後方へと下がり
その姿はさきほどのように忽然と消えていった。
どこ......次は.....どこから......
私は意識を集中させ、次の攻撃に備えていた。
「!!!」
私は気配がした方向へ向いたが、そこには先ほどと変わらない風景が広がり、相手の姿を捕捉することはできなかった。
「フフフ。私はここですよ。お嬢さん」
仮面の人物はそう言いながら、持っていた棒のような武器を振り上げ、私は咄嗟に刀で防戦した。
「おや?どうしました?剣先が少し震えていますよ?」
私を嘲笑うかのようなその言葉にわたしはさらなる焦りを感じていた。まるで嵐によって吹き荒らされる木々や海のような......
「ならば....ここからもう少し工夫させていただきましょうか」
そう言いながら、またしてもその姿は私の目の前から消えていった。
「フフフ.......」
私の後ろには不気味な笑いを奏でながら、ポツンと置かれていた椅子に優雅に座り、挑発の姿勢を露わにしていた
私は刀を構え、斬りかかろうと歩みを進めた。
「フフフ.....お嬢さん、私はここにもいますよ」
しかし、またしても私の後ろからは仮面の人物と同じであろう声が私の耳に入ってきた。
私の目の前にいる仮面の人物から発せられた声ではおそらくない......
私はゆっくりと刀を構えたまま後ろを振り返った。
そこには全く同じ姿をした仮面の人物が机に腰をかけ、
足を組んでみせ、その余裕具合を伺わせていた。
先ほどの瞬間移動のようなものではない.....
どちらが本物かわからないが分身した仮面の人物が私を挟み込むようにして存在していることは明らかだった。
「フフフ......せっかくですから教えてあげましょう」
そう言いながら、椅子からひょいと立ち上がってみせた
「浮かび上がる虚像......私の自慢の能力の一つです」