ようこそ
僕たちは林の中で出会った風来坊を仲間に加え、
ハイルへと向かっていた。
彼の名前はサクというらしい。あまり多くは語らなかったが、どうやら行くあてもない旅を続けているような雰囲気を感じ取れた。
僕もマイも今エネルギー消費の関係で能力を思うように使えない状態で彼はとても頼りになった。
枯れ果てた大地への恵みの雨のようなそんな心境。
ハイルまでは残り数時間で到着するという。
少しばかり空も曇ってきている。まだ体の疲れも完全には癒えず、早く休みたいという気持ちも内在していた。
「雨が降りそうだな。少し急ごうか」
ケイのその言葉が皮切りとなって、僕たちは少し小走りに
街への歩を進めた。周りの空気は湿気をおび、
体には気持ち悪さがまとわりつくようだった。
「ふぅ〜!やっと着いた!!ハイル!!」
マイが声高らかに前へ進み、石で舗装された通りに踏み込んだ。僕たちもそれに続き、この街に入った。
「全く。元気のいいお嬢さんだな」
「ハハッ。まあな。あれがマイの取り柄だ」
サクとケイはそんな調子のマイを見つめながらそう言った
それにしても、この街は前のトウとはえらい違いだ。
人の気配があまりなく、さらに何か陰鬱な空気があたりに
漂い、この寒空と重なるような重苦しい雰囲気を醸し出していた。
それになんだろう.....それだけではない悪寒のようなものが全身を駆け巡る。まるで誰かにみられているかのような
一体なんなんだろう......
「どうした?ミナト?」
ケイの声でフッと意識がそっちに戻され、マイとサクも
すでに僕よりも歩みを進めていたところだった。
「早く来ないと置いてくぞ!」
「うん!今行く!」
冷風が吹き始め、その風をかきわけるように3人の方へと
僕は走った。
「ほんとに誰もいないな。なんでなんだ」
僕たちはしばらく街の先の方へと進んでいたが、ケイの言うとおり、未だ人影一つなく、ただ廃れたような建造物の数々が入り組みながら立ちそびえているにすぎなかった。
街の人はどこに行ってしまったのだろうか。
「でも、この街広そうだしもう少し探してみようよ。」
「いや、もしかしたらもうすでにこの街には誰もいないかもしれない」
マイの提案に対し、サクは切り返してきた。
「どういう意味だ?」
ケイもサクのその言葉に対してキョトンとしたような
表情を露わにしていた。
「少しばかり見渡してもどこにも明かりのようなものがない。この天気だ。普通この規模の街ならどこかの街灯が
明るく照らしてなきゃおかしい。」
確かにそうだ。見渡してもどこかに灯りがともってる
気配は微塵もない。でも、なぜなんだろう。
「それにそもそも街灯すら一つもない。もしかしたら
人がいなくなったのはずっと前の可能性もある。」
「でも....なんでだろ.....」
僕はそう呟いた。一体何があったんだろう。
街の人たちはどこへ......
「あれ?ケイは?」
すると突然マイがそのようなことを発し、僕とサクも
マイが向いている方に顔を向けた。
「ケイ?......」
おかしい。さっきまでいたはずなのに。どこ行ったんだろう.......。
その時、僕たちをまるで歓迎するかのようにその使者は
すでに目前に迫っていた.........。