挑戦者
僕たちはハイルを目指し、旅を続け、その途上の林のような場所に身を置いていた。その時、虎のような動物に
襲われるが、風来坊のような男に救われることになる......
「大丈夫か?あんたら。」
彼が放ったであろう1発の銃弾は正確に虎の眉間を撃ち抜いていた。一体何者なんだ.....
「助けていただいてありがとうございます!」
マイは誰よりも素早く礼をいい、頭を下げる。
それに続くかのように僕らも彼に礼を言った。
「いや、礼には及ばんよ。」
彼はスッと手を出しながら、そう言うと間髪入れずに
会話を続けた。
「ところで、あんたたちはどこかに向かう途中なのか?
こんな林に人がいるのは珍しいが。」
僕たちがここにいることに対しての疑問を呈した。
「ハイルって街に行く途中なんだ。ただ、そこに行くための汽車が壊れちまってよ。こうして徒歩で行ってるんだ」
ケイは自らの持っていた雑誌をくるくると丸めながら
そう話した。
「ハイルか.......何か用事でもあるのか?」
「ああ。俺はある事件の真相のために。マイとミナトは
マイのお姉さん探しの一環で行ってる感じだ。」
先ほどの焚き火はとうに消え、あたりは暗がりが広がっていたが、それでも彼の表情はこちらによく伝わってくるほどに厳粛とした表情を浮かべていた。
「なら、ここから先もかなり危険が伴う。道中はくれぐれも気をつけて行きなよ。」
そうして、その場から立ち去ろうとすると、それを遮るかのようにマイが言葉を投げかけた。
「待ってください!あの。もしよかったら、私たちに
着いてきてくれませんか?」
僕らの視線は一斉にマイの方を向いていた。
僕とケイは目をはるような驚きを見せ、
彼の方も、少しばかりきょとんとした雰囲気を醸し出していた。
「どうしてだ?」
「私やミナトはあなたの同じような能力を持ってるんです
でも、今は使えなくて....それにケイ自体はその能力を
持ってなくて。この先もさっきの虎のように襲われるかもしれない。だからあなたにお願いしたいんです!」
マイのその言葉と共に現れる表情は僕と初めてあって
共に冒険をすることになった頃のことを思い出す。
いつもはおどけてて、可愛らしい女の子。
だけど、ほんとは誰よりも一生懸命に考えてて、
何よりも仲間のことを優先している。
今だって、自分の力だけじゃ守りきれないということから
彼に誘いをかけているんだろう。
「.........わかった。その提案に乗ろうかな。」
彼は暗がりの中でもフッと笑みを浮かべ、
月によるわずかな光がそれを照らしていた。
「ほう.....もうそこまで来てるのか.....我が二人の部下を
この短期間に倒すとは.....久々に戦えそうだな。」
この時、別の暗闇の中にもう一つの笑みを浮かべているものがいることを僕たちはまだ知らなかった.....。