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共闘

「おい。一体どうしたんだよ。」

ケイは消えかけるような小声で話しかけてきた。


「わからない。だけどこの部屋で誰かが戦ってる気がする....。」

確証はない。だけど、ドアノブを触った時に微かに僕の頭の中にそのようなイメージが瞬時に浮かんできたことは確かだ。


「だけど、部屋からは何も聞こえないぞ?」

ケイはそう疑問を呈した。僕たちのいる5号車には確かに6号車の内部の音は一切聞こえてこない。

いや、むしろ静かすぎるぐらいだ。

まさか....マイが巻き込まれてるじゃ......

僕はあのホテルの時と同じような不安がまるで全身に重くのしかかるかのように襲いかかってきた。

とにかく、何か部屋の様子を確かめる方法は......


「ケイ。なんか紙とかある?」


「紙?ああ。あるが、どうしてだ?」


「説明は後で。とにかく紙を。」

ケイは自分のポケットに入っていたメモのようなものから紙を1枚切り、僕に渡した。

そして、その紙を僕はさらに一部をちぎり、それにオーラをこめた。


「なんだ!?手から紫のオーラが!」

ケイはおそらく初めて見るであろうそれを見て、こちらを凝視していた。

僕はその紙を瞬時にドアの下の隙間から6号車へと投げた

するとその紙は瞬く間に人型へと変形し、すぐそばにあった座席の下へと隠れた。


「!!!!」

僕は先程の人型の紙との意識の共有で部屋を見渡した。

そこには杖を持ち、マントのようなものを被った老婆と

それに刀で応戦する女性がいた。

マイだ...あれは.........間違いない.....あのホテルの人影.......

あの時の記憶が鮮明に目の前に浮かび上がってくるようだった。

炎に照らされたその人影が.....


「間違いない。マイがいる。」


「マイがあの中にいるのか!?大丈夫なのか?マイは?」

ケイはさらに驚きの声を上げた後、その様子を尋ねた。


「うん。だけど、相手の老婆みたいなのに少し押されてる感じがする.....まるで何かを気にしてるみたいだ。」

老婆の一方的な攻撃に刀での防戦を強いられている様子だった。その表情は僕には何かに焦っているような感じが読み取れた。


「ミナト。こっちからドアを無理やり突き破るとかいうことはできそうか?」

ケイは僕の後ろから話しかけ、一つの提案をした。

人型の紙をドアの方へと向けるとそこには僕ら側のドアとは明らかに違う、黒色に染まり、外からの光で光沢が溢れ、鉄板のような状態となっている。

おそらく、マイを閉じ込めておくために細工を施したのだろう。


「多分無理。何か細工みたいなのが仕掛けられてるから」

ケイはしばらく考え込むように顎に手を当てると


「もしかしたら、マイは何かその老婆に制約みたいなのをかけられてるのかもしれない。マイの性格からして俺たちに関係することと思う。それに隣の号車の音がこっちに全く聞こえないなら、こっちの音もおそらく聞こえてないはず。」

おそらくケイの言う通りだ。戦いの情景を見る感じ、

マイは能力を使えないでいる。

マイの能力は推測が正しければ炎だ。

ホテルで僕の前を明るく照らしたあの....

その炎を使えばこの汽車は瞬く間に燃え、僕たちの危害が及ぶかもしれない。そのことをマイは恐れている。


「マイはおそらく炎。だから能力が使えないんだよ。」


「なるほどな。だったら、老婆を倒すために俺たちの心配はいらないって情報を伝達できればいいが...........

ミナト、お前の能力で伝えることはできないのか?さっきの紫のオーラみたいなので。」


「え?」


「さっきのを見るとまるで生命を与えるような能力のような気が俺にはした。なら、床とかを使って向こうに情報を送ることもできるんじゃないか?」

僕の能力でマイに.......できるのか......ほんとに......


「俺にはお前みたいな能力がない。今マイを救えるのはお前だけなんだよ。」

ケイは僕の肩に手を置き、そう語った。

僕がマイを.......そうだ.....僕がマイを守らなきゃ......


「うん。わかった。やってみる。」

僕は床に指を置き、オーラを再び発現させ、そのオーラは

ドアの下をすり抜けていった.....





6号車


「いい加減に観念せい!!!!」

だめだ.....早く倒して二人のところに戻らないと.....

私は焦っていた.....頭の中は真っ白になり、手は微かに

震えていた。


「........マイ.......マイ........」


「!!!!」

その時、突如私の脳内に声が聞こえた。掠れていながらも

どこか私の心を穏やかにしてくれる.....ミナトの声だ。


「........僕たちのことは心配いらないから.....早くそいつを倒して.......大丈夫......僕たちを信じて.....」


その声はまるで風に飛ばされた桜の花びらのように消えていった。


「ふん!何をボケっとつったとるんだ!!!」

老婆は私の方に再び杖を振り翳した。


僕を信じて......先ほどの声はまだ私の脳内に微かに残っていた......















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