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おじさんと税

「本当にアイデア料だけで良いのか? 利益の一割は少ねぇが発案者の正当な報酬なんだから受け取っておけよ」


「あたいらの本業は冒険者だ。今はゴンゾウも加入したばかりで足元を固めるべき時なんだって今回のことで身に染みたよ。あちこちに手を出して、本業がおろそかになっちまったんじゃどうしようもないからね」


「それとこれとは話が違うんだがなぁ。そんじゃ名義だけ春の風にしておくからカエラにでも収益を管理してもらうか。

 ……ん? もしかして手続きがめんどくさいとか思ってねぇだろうな?」


「ボブさんにはバレますよねぇ。一割と言っても冒険者活動外での収益って税の対象になりますからぁ」


「税の手続きってエナ達は誰もやったことないし、他の冒険者も面倒だったって言ってたッス」


「セイランが言ったみたいに、今それに構っていたら足場を固める時期に手間が増えるだけになりそうなのよね」


「オレは、よくわからないのですが、もらえる収入は、今後のためにも、少額でも、もらった方が、良いと思います。ボブさんの、お店の評判にも、関わりませんか?」


「まったく、お前らなぁ。冒険者の難しいことを考えないって悪い方の癖が出てんじゃねぇか。足元固めてぇってのはわかるが、ゴンゾウの言う通りだぞ。手間つっても一日潰すようなもんでもねぇし、収入源ってのはあって困るもんじゃねぇよ。

 それに報酬を出さなかったなんて知られたら、うちの信用に響くんだよ。とりあえず、アンナからカエラに話は通しとくから、一割はもらっとけ」


 そんなやり取りもあり、私達は湯たんぽが売れた利益から一割をいただくことになった。


 冒険者の報酬は、納めるべき税がすでに天引きされているので、それに慣れきっている皆は未知の手続きに及び腰になって、少額ならいいかと諦めるところだったようだ。


 面倒なのはわかるけど、もらえるものはもらっておいた方が彼女達の将来のためにもなると思うんだけどなぁ。やっぱり四人もどこか脳筋気味なんだね。


 アイデアを出しただけで利益から一割は多くないかと思ったが、慣習としてその程度の報酬を出さないと店の信用にも関わるらしい。


 結局ボブさんには湯たんぽをカエラさんを含んだ人数分と予備を合わせて八個、炬燵擬きに使う大型の物を二個、薪ストーブを一台作ってもらい、組立式の焚き火台は荷物が増えれば収入も減るとのことで、製作は見送ることになった。



「年を取ると説教臭くなるってのは本当かもしれねぇなぁ。いろいろ言っちまって悪かったな。しかし、なんだかんだ言ったがよ、新しいことに挑戦するのは良いことだぜ?

 新しい分野への挑戦で、本業に生かせるようななにかを閃くかもしれん。まぁ、またなんか思い付いたら持ってこいよ。もしかしたらお前らの思い付きが、後生に残る大発明になるかもしれんからな」


 俺の店のためにもな! と続けて高笑いするボブさんに見送られてお店を後にする私達五人。



「ボブさんに相談してよかったッスね。焚き火台良いと思ったけど、ゴンゾウじゃなかったら持ち運ぶだけで一苦労ッス」


「以前ならかさ張るものは選択肢にも入らなかったものね。ちょっと私達ゴンゾウに頼りきりだったわ」


「あの金属製暖炉がすでにあるもんだって初めて知ったよ。知ってたら早いうちにパーティーハウスに導入してたんだがねぇ」


「やっぱり専門の方は詳しいですねぇ。私達の知らない未知の道具もまだまだありそうですぅ」


「税についても、もっと知る必要が、ありそうですが、皆さんは、どうしているんですか?」


「冒険者は報酬から税が引かれているのは知っているわよね? 私達は他に兼業していないから、今までは特に税を払うために手続きってやったことがないのよね」


「エナは冒険者しかやったことがないから、何もわからないッスね。他の冒険者もほとんどが似たようなもんッスよ。兼業してると手続きが面倒だって聞いたことはある程度ッスね」


「そうだねぇ。あまりその辺は深く考えたことはなかったが、いい機会だから知ってもいいかもしれないね」


「冒険者活動が本業ですけど、今回みたいに別の収入があったときのこともカエラさんに相談してみましょうかぁ」


「カエラさんは、家の管理を、していますから、詳しそうですね」


 皆でボブさんのダメ出しの感想や私が加入して変わったことなどを話ながら帰路に着くが、まだ午前でお昼にはまだ早い。


 帰ったらカエラさんやアンナさんに税について聞いてもいいかもしれない。……そういえば移住など手続きをした覚えがなにもないが、私の戸籍はどうなっているのだろうか? この国では戸籍管理とかはしていないのかな。


 皆に聞いても特に登録などはした覚えがないと言っている。しかし冒険者を続けられなくなどで税の払いが滞った場合どうなるのかがわからない。防壁外で盗賊を見ているため、防壁内から追い出される可能性がないとは言い切れないのだ。


 詳しそうな人に聞いてみてもいいかもしれないかな。ジスさんやカエラさんに聞いてみて、不明瞭であれば冒険者ギルドで相談出来るだろうか。


 転移してファンタジーの世界にいるのに税金で頭を悩ませるなんて、世知辛いね……


お読みいただきありがとうございます。


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