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おじさんと素人考え

「なんだなんだお前ら、朝っぱらから全員で来てどうした……? 前もこんなことあったな。背負子ならまだ出来てねぇぞ」


「おはようボブ。今日は作ってもらいたいものがあって相談に来たんだよ」


「また特注か? 俺んとこが儲かるからいいんだがよ、お前らここんとこ金使いすぎてねぇか。後輩が金使い荒いのは心配になるんだが……お前ら大丈夫なのか?」


「大丈夫ッスよ。エナ達稼ぎが倍以上になったッスからね」


「倍はすげぇな! やっぱゴンゾウか? 専属の運搬担当がいるってのは違うもんなんだなぁ」


「ゴンゾウさんは特別すごいですからねぇ。一緒に行けるようになってから、かなり稼げてますぅ」


「それで今のうちに越冬のための道具を相談したいのだけど、ボブさん今は大丈夫かしら?」


「おう、今日は奥に親父と弟子もいるから長くなっても大丈夫だぞ。で? 越冬の道具ってのはなんだ?」


 暖房設備の相談をした翌日に私達「春の風」の五人は、朝一でボブさんのお店に来ている。


 ボブさんのお店は武器防具店ではあるが、元々は鍛冶屋が本業で鍛冶場は別の区画にあり、冒険者ギルドに近い居住区画のこの店で制作物を売っているらしい。


 常連には武器防具だけではなく、金属や革製品の加工など幅広く対応してくれるようだ。



「金属製暖炉、熱湯を入れる金属容器、組立式焚き火台、ねぇ。

 まず金属製暖炉はある。金属の箱の中で薪や炭を燃やして部屋を暖めて、上に鍋やら置いて調理も出来るやつだな。厨房や金持ちの家で使われてたと思うが、あの家のリビングで使うなら鍋が二つか三つ置ける程度に小さくしたやつでいいんじゃねぇかな。

 床が焦げねぇように煉瓦と木材か鉄板組み合わせた敷き板を用意して、管を暖炉の煙突に繋げりゃ大掛かりな工事もしなくていいと思うぞ」


 薪ストーブはすでに実用化されていて、使われている場所が厨房だったりお金持ちの大きい家で、鍋が三つ置けて小さいってことだから、私が想像しているものよりも大きなものなんだろう。


 私達が今回注文するような小型化したものも、広く普及はしていないが使っている場所もあるみたいだね。


「熱湯を入れて暖房として使う金属容器は、完全に密封出来ねぇから中身が溢れちまう、入れるなら焼いた砂がいいんじゃねぇかな。わざと凹ませて設置面積を減らして温度を保つのか? お前ら面白いこと考えるなぁ。入れ口の密閉にこだわらなきゃ作るのは簡単だな」


 すでに冬場に野外活動する冒険者が、古い金属容器に焼いた石を入れて湯たんぽの原型のようなものを使っているようだから、湯たんぽはそれを製品として改良した物になるようだ。


 ゴムやシリコンのような密閉で必要になってくる素材がないことや、技術的な問題で熱湯は無理だが第二案の焼いた砂なら問題ないとのことだ。


「この地面が濡れても焚き火が出来る組立式焚き火台か。これも発想が面白いな。だがなぁ、わざわざ焚き火のためだけにかさ張って重い物を携帯するってのは難しいんじゃねぇか? お前らはゴンゾウがいるからいいんだろうが、いかに荷物を軽くするかって考えてる防壁の外で活動する連中も防壁内の連中も使わねぇと思うぞ」


 火鉢から着想を得て皆で考えた組立式焚き火台は、着眼点は良かったようだが、考えてみれば防壁の外で活動する人や職種は限られるし、魔物が跋扈する防壁外では行楽なんぞ出来ない。


 レジャー的な用途が強い焚き火台は、余程の余裕がなければ持ち歩かないだろう。



「なんだお前ら落ち込んで、まさか新しいもの作って稼げると期待しちまったか?

 どれも発想や着眼点は悪くねぇし、新しいことに挑戦したり今ある物を使いやすく改良するのは良いことだ。一からこれらを考え出したってんなら大したもんだよ。

 でもな、どの分野でも知識を蓄えて専門にしてるやつ、開発や改良を専門としてるやつを容易には越えられんさ。もちろん素人の思い付きが後々の大発見や大発明になることもあるが、一握りどころか一つまみだ。

 魔物とやりあってる熟練の冒険者に、素人が百や千の意見を出して使い物になるのがどれくらいある? って言ったらお前らもわかりやすいだろ」


「ああなるほどね、そりゃわかりやすいよ。ゴンゾウが加入して稼ぎも多くなって、あたいらは浮かれてたみたいだね」


「確かに安易に考えていたかもしれませんねぇ。これで稼げれば将来は安泰だったんですけどねぇ」


「完全にゴンゾウがいること前提で考えてたッス。エナ達だけなら、焚き火台は絶対に持たなかったッスね」


「すみません。オレが半端な、知識しか、持ってないから、あまり役にたてず」


「ゴンゾウが謝ることなんてなにもないわ。少なくとも私達は、これからの冬を暖かく過ごすことが出来そうなんだもの」


「そうだね。誰もゴンゾウを責めちゃいないさ。感謝してるくらいなんだから気にするんじゃないよ。それに焼いた砂を入れる容器は売れそうなんだろうボブ?」


「ああ、この焼き砂を入れて寝るときや毛布を被せたテーブルで暖を取るってのは面白いぞ。

 構造も簡単だし鋳潰した屑鉄でも作れるから安く売れる。でかくても鍋一つくらいの大きさで場所も取らん。防壁の内外どころか家の内外関係なく使える。売れると思うぞ」


 地球の知識でがっぽり稼ごうとは思っていなかった……ちょっとは期待していたけど、やはり生活環境が現代日本とは全く違う世界での素人考えはなかなか上手くいかないものだ。


 幸いなことに湯たんぽ……この場合は砂たんぽ? はボブさんにも好評で商品化するかもしれないけど、元々は全て私達が冬を快適に過ごしたいから提案しただけの物だ。


 私が発明した物でもないし、あまり欲をかいては面倒なことになるかもしれない。ここはボブさんに丸投げした方がいいかもしれないね。


お読みいただきありがとうございます。


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