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おじさんの装備更新

「これで全部だな。全部装備したが違和感はねぇか? 牙棍棒と大楯の握りは普通なら堅すぎて握りには使わねぇ丈夫な革を巻いた。ゴンゾウの握力なら問題ないとは思うがどうだ」


「握りやすいです。牙棍棒は、以前の、不安定な感じが、ありません。手に馴染む、ようです。大楯や、他の装備も、問題ないと、思います。ただ、大楯は、初めて持つので、不安がありますね」


「ゴンゾウももう一端の冒険者って感じで良く似合っているわ。大楯の使い方ならリジーが教えるのに適任かしら。練習なら皆で手伝えるし、今度の討伐で以前のように実地訓練も良いかもしれないわ」



 私が限定Cランクに昇格して、「春の風」に同行するようになってから三十日ほどが経過した。


 パーティーとしても私個人としても冒険者の仕事は順調で、荷物が最低限で済んでいるからか皆は疲労が抜けずに長期間休むこともなく、二日か三日仕事をしたら同じ日数休むを繰り返し精力的に活動している。


 体力に余裕のありすぎる私はその休みの間に冒険者ギルドから斡旋される運搬系の依頼から、一日で終わるものを選ばせてもらって仕事をしているが、皆から働きすぎだと言われる。


 体力が有り余っているしせめて装備の代金くらいは稼ぎたいのよ。「若い女性の稼ぎで装備を買うおじさん」とか、字面が駄目すぎるんだって。


 今日は特注した背負子以外の装備が出来たことをボブさんの奥さんであるアンナさんから教えてもらったので、私はアイリーンさんと一緒にボブさんのお店に装備の受け取りに来た。


 今は実際に装備した状態で不具合がないか、全て装着してボブさんとアイリーンさんに確認してもらっている。


 まだまだ私では、ちょっとした不具合などの良し悪しがわからないからね。わかるのは着用感くらいかな。



 シールドボアの牙は形をそのままに、鍔の代わりに太いフックが付いた金属の輪が柄の上部に付けられて、背負ったリュックと背負子や腰の剣帯に引っ掻けることが出来るようになり、革と金属で補強された握り部分と柄尻が野球のバットのような形状になった牙棍棒の大小。


 同じくシールドボアの額についていた盾のような甲殻は歪な部分を整えられ、地面に立てると私の鳩尾まである長方形の大楯に加工された。縁を金属で補強されて、内側は持ち手や金属製のフックがいくつか付けられている。


 手足に装着する革の具足と頑丈なブーツに革の手袋、耳当て付きパイロットキャップのような頭部を覆う革兜は、どれも金属板や鋲で補強されてかなり丈夫そうだ。


 鎧や鎧の下に着用する要所を革で補強した作業着はそのままだが、今まで鎧だけは立派だったためこれでバランスが取れたような気がする。


 着色はしてもらわなかったが、艶消しされた全身を覆う革の暗い茶色に金属の鈍色がアクセントになった重厚な様は、サイズや装備する私を考慮しなければセイランさんが装備しているような重戦士といった外観だろう。


 装備にはあまり拘らないと自分では思っていたが、いざ実物を全て装備してみるとおじさんの中の少年心がうずいてくるな。姿見が無いことを惜しいと思ったのは人生で初めてだ。


 しかし金属とは言っているが鉄ではなさそうなこの金属はなんだろうか。


 軽く説明は受けたのだが、こちらの言葉に完全に適応していないので、どの金属を表しているのかわからないんだよね。私が鉄だと思っているものが、鉄ではないかもしれない。「魔鋼」ってなに?


「武器どころか背負子も特注して上位冒険者並みの魔鋼で補強した装備に一新するたぁ、ずいぶんと豪気なもんだな。

 背負子はあと十日は待ってくれ、フレームを総金属製で作るのはちょいと時間がかかる」


「ええ、ゴンゾウが運搬を一手に引き受けてくれて収入がかなり増えたの。やっぱり専属の運搬要員がいるって全然違うわ」


「オレよりも、皆が凄い、ですよ。討伐に出れば、どんどん、魔物を狩って、いきますから」


「上手いことやってるようで何よりだ。俺が現役の頃はパーティーメンバーが多くて運搬要員は出来るのが持ち回りでやってたが、ゴンゾウみたいな運搬の専門家がいればもっと稼げてたかもしれんな。頑張れよゴンゾウ。そんで俺の店に金を落としてくれ!」


 とてもイイ笑顔で高笑いするボブさんからの激励をもらってお店を後にする。私を含めた「春の風」全員の装備の点検整備に購入、背負子の特注などでかなり儲かったようである。


 今までの装備は予備として保管され、時間があるときには冒険者の大先輩である家政婦のアンナさんに手入れの方法を教わって手入れの練習に使い、いつでも使えるようになっている。


 やはり武器防具屋店主のボブさんの奥さんであるからか、アンナさんは武器防具の扱いにパーティーハウスの誰よりも造詣が深く、たまに他のメンバーも一緒に教わることもある。


「ゴンゾウ、明日は新しい装備の習熟訓練をするわ。ちょっと大変かもしれないけど、なんとかなる……はずよ! たぶん」


 え? アイリーンさん何故にそんな意味深なの? 怖いんだけど!?


お読みいただきありがとうございます。


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