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おじさんと一日の稼ぎ

「春の風の皆さん討伐依頼お疲れ様でした。こちらが本日の討伐報酬と素材の売却金です。お確かめください」


「えっ!? こんなもがっ!? んー! んー!」


「エナ、静かにしな。すまないね。……確認したよ。今回は報酬を全部持って帰るから、この袋に入れてもらえるかい? ……ありがとうね。それじゃ皆帰るよ」


「はいはいエナさん、落ち着いてぇ。帰ってから皆で確認しましょうねぇ」


「エナの気持ちもわかるけど、ここで騒いじゃダメじゃない。ゴンゾウ、肉をお願いね」


「わかりました。え? 槍鹿一匹、丸ごと?」


 日帰りでの討伐が無事に終了し、冒険者ギルドでの精算も終わった。


 冒険者ギルドでは討伐には関係のない狩猟した獲物の買い取りもやっているようで、解体手数料を払えば解体した後の素材や肉などを持ち帰ることも出来るし、提出しなかった魔石や素材なども当然持ち帰ることが出来る。狩猟者特権ってやつだね。


 しかしですね。角の付いた頭と内臓と皮を除いた、槍鹿一匹分の肉を丸々持って帰るって本気ですか?


 流石に肉をそのままリュックに入れるわけにはいかないので、天秤棒で使った木の枝を折り、端の方に一匹分の槍鹿の肉をまた四肢をロープでまとめて吊るして担ぎ上げる。



「みんなお帰り! おおっ!? こりゃまたでっかいお土産を持ってきたね。 カエラ! みんな戻ってきたよ! 解体の用意がいる土産付きだ! キッチンの横で解体するからゴンゾウとセイランはあたしに付いて来とくれ」


「セイランさんゴンゾウさん、お帰りなさい。お怪我はありませんでしたか? あら、大きなお土産。セイランさん上から吊るしてもらえますか? ゴンゾウさんは少し待ってくださいね」


 日も落ち始めた頃にパーティーハウスに戻ると、アンナさんに出迎えられキッチン横のスペースでカエラさんの指示の元、高身長のセイランさんの手によって天井に付けられた金属製の輪にロープが通されて槍鹿の肉が吊るされる。


 こうやって吊るされた肉は初めて見るが、シールドボアを皆で解体したときとはまた別の迫力があるんだなぁ。



 その後、身を清めた私達がリビングに全員集まり、夕食をいただいた後に今日の反省会だ。


 アンナさんはすでに帰宅している。解体した槍鹿の前足の一本を布でくるんで肩に担ぎ、上機嫌で帰っていく姿は端から見ればなんとも蛮族の……家庭的なお母さんだね。うん。


「日帰りで稼ぎすぎじゃないッスか!? 今までなら討伐で三泊か四泊してやっと稼げるかって額ッスよ。やっぱり獲物丸ごと卸すと稼げるッスね」


「ええ、私もゴンゾウが加わるだけで、ここまで稼げるなんて驚いているわ。しかも今日は慣らしや連携の確認で、本格的に動いてもいないのよね」


「個人の荷物以外を収集物含めて全て受け持っていただくと、動きやすさが違いますねぇ。ゴンゾウさんのリュックに余裕もいっぱいありましたし、今度は限界を測っても良いかもしれませんねぇ」


「限界か、確かにゴンゾウがどれだけ力があっても運べる限界はあるね。次は一泊か二泊で所持限界を把握しようかね。ゴンゾウはどう思う?」


「所持限界は、把握したいです。あと、荷車はどうかと、思ったんですが、森の中では、やはり運用が、難しいですか?」 


「今までも考えなかった訳じゃないけど、私達の主な活動場所が西の森なのよ。森の中じゃ荷車がすぐに傷みそうなのよね。でもゴンゾウがいるなら荷車を持つのもいいのかしら?」


「森は無理でも荷車があれば他でいろいろ使えそうッス。でも高いんッスよねぇ。リジー先輩どうッスかね?」


「丈夫な荷車はいいお値段がしますが、護衛するだけではなく私達で行商の真似事も出来そうですし、お仕事の幅が広がりそうですねぇ」


「今後の稼ぎにもよるが、荷車を所有するのも悪くはないね。アイリーンが言ったように森の中じゃ使えないが、護衛や他の町に移動するときなんかには良さそうだ。どう思うカエラ?」


「荷車はあればとても便利ですが、借りることも出来ますよ。その前に大型で頑丈な背負子はどうですか? 背負子なら町中でも使えますし、荷車はこの家には置場所がありませんから、どこかで預かってもらう必要があります」


「置場所の、問題も、ありましたか。小さすぎる荷車では、意味がありませんね。背負子は、ボブさんですか?」


「ああ、置場所がなかったか。あたいも浮かれてるみたいだ。そうだねゴンゾウ。背負子はボブに頼めば、頑丈なのを作ってくれるはずさ」


「ボブさんと言えば、ゴンゾウさんの装備はどうしましょうかぁ」


「そういやシールドボアの牙と盾の加工も頼んでたッスよね? 明日じゃ早すぎるッスかね」


「預けてまだ十日くらいよね? 流石に早すぎるんじゃないかしら、明日アンナさんに聞いてみましょうか」


 他にも次回のパーティーとしての連携の取り方や、今後必要になりそうな道具類、討伐以外の依頼をどうするかなどを一番の先輩であるカエラさんを交えながら相談して夜は更けていく。


お読みいただきありがとうございます。


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