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おじさん血の道を作る

「ゴンゾウ、何割くらい埋まった?」


「中を確認するので、周囲の警戒を、お願いします。……二割以下ですね。このペースで、討伐証明部位と、魔石だけを集めるなら、全て埋めるのは、数日かかりそうです。丸ごとなら、担ぎますし、木を倒して、荷台も作れますが」


「二割以下ッスか。半日にしてはそこそこ討伐したと思ったッスけど、証明部位と魔石だけでゴンゾウの荷物いっぱいにするのは大変そうッスね」


「木を倒すのは今回は止めましょうねぇ。今日は日帰りの予定ですからぁ。これで二割以下なら討伐証明部位以外も入れるべきですねぇ」


「丸ごと持つなら肉が食べれて、角か牙と毛皮も売れる魔物がいいわね。槍鹿を狙いたいわ」



 運搬限定Cランクの冒険者になった私は、「春の風」の討伐依頼に同行してアンゴンの西の森にいる。


 私がいた場合の動きや積載量の確認などのため、今日は日帰りの予定だ。


「今が昼くらいか……アイリーンの意見を採用するよ。第一優先は槍鹿、第二以降は丸ごと持って帰れる魔物だ。途中遭遇したやつは討伐証明部位だけ取って、日が落ちる前にアンゴンへ帰還。

 エナが先行、ゴンゾウはエナを追従、アイリーンとリジーでゴンゾウの左右、あたいが殿だ。今日は慣らしだが後半も油断するんじゃないよ」


 アンゴンの西の森は、私が遭難していた森よりも木の一本一本は一回りほど細い……細いと言っても十分に巨木なんだが、木が生えている密度や石や木の根、鬱蒼と繁った藪などで足元も視界も悪い。


 魔物避けの香木も近隣には生えていないのか、魔物とはおよそ一時間に二回か三回ほど遭遇している。


 西の森の討伐依頼とは脅威となる魔物が増えすぎないように間引く作業であり、魔物の種類によって尻尾、角、牙などの討伐証明部位を冒険者ギルドに提出することで報酬を得る仕組みらしい。


 無差別に討伐して報酬が出る訳ではなく、他の生物に対して非常に攻撃的であったり放置すると異常に繁殖するなど、脅威となり得る対象の討伐がCランク以上の冒険者が受注する討伐依頼となっている。


 現在の「春の風」は冒険者ギルドから上位の評価を得てはいるが、討伐証明部位報酬や依頼達成報酬が収入の大半であり他の素材売却などの収入が少なく、上位パーティーの中では収入面が弱かったことは聞いている。


 確かに角や牙などの他に毛皮や枝肉を持っての活動は、いくら優秀な彼女たちでも困難だろう。



「右前方、槍鹿二匹ッス」


「二匹ですかぁ。番いですねぇ」


「ゴンゾウ。二匹持てる?」


「枝を、天秤棒にしたら、持てます」


「それじゃ二匹とも仕留めるよ」


 槍鹿は角以外の見た目は私が知っている鹿に似ているのだが、首や足など全体的に太く、頭から先端の尖った角が二本やや前方に向かって生えて槍を二本構えている様にも見える。君は草食動物だよね? 殺意高すぎない?


 アイリーンさんとエナさんの二人が前に出て、リジーさんが私を護衛しつつ前に出た二人から斜め後方へ下がって距離を取り、セイランさんは全員をフォローできるように前方の二人と後方の私達の中間に位置取る。


 どうやって狩るのかと見ていると、アイリーンさんとエナさんが拾った枝で近くの木を叩き出した。


 そんな分かりやすい音出したら逃げるんじゃないかと思ったが、二人を見つけた二匹の槍鹿は角を向けて突進して来る。なんでそこまで殺意高いんだよ。草食動物なら逃げろよ。


 アイリーンさんとエナさんは槍鹿の突進を確認すると枝を横に放り投げ、それぞれが槍鹿の突進を難なく横に回避。すれ違い様に首筋を一閃したようだ。


 突進の勢いのまま転倒した槍鹿の元に向かえばまだ息はあるようだが、それぞれが首の半分ほどを切られている。


「エナ、腕を上げたじゃないか。いい一撃だったよ」


「ゴンゾウに限定ランクが追い付かれたッスからね。先輩としての意地ッスよ!」


「もう、あんまり無理しちゃダメよ? すれすれだったから心配しちゃったわ」


「アイリーンさんも流石ですねぇ。二人ともお疲れ様ですぅ」


「エナさん、オレと張り合っても、活躍場所が、全然違いますよ。エナさんのようには、出来ないですって」


「まだ早いが、今日は撤収するかね。血抜きしながら移動してりゃ魔物が向こうから来るだろうさ。っと天秤棒だったね。……あの枝でいいか」


 セイランさんが両刃の戦斧を構えて飛び上がり一薙ぎすると、枝が落ちてくる。斧って何度か叩いて削って、折ったり切ったりするような武器じゃないですかね?


 セイランさんが落とした枝を更に枝打ちして、一本の太くて長い棒が出来上がる。


 四肢をロープで括った槍鹿を棒の両端にぶら下げ、角も地面や周りに引っ掻けないようにロープで槍鹿の体に固定して、天秤のようにバランスを取って私が担ぎ上げ、今日は帰還だ。


 槍鹿はまだ何も処理しておらず、首の切り口から血を流しているので血がかからないように気をつけて進むが、通った所は二匹分の血の道ができている。


 それが原因なのか帰りの森の中では魔物の出現頻度が上がったような気がしたが、四人は難なく討伐して更に増える討伐証明部位や魔石に素材。


 日帰りで余裕があるのか皆は元気いっぱいで、森を出る頃には天秤棒に角が生えた大型犬程のウサギのような魔物が四匹と、野鳥が五羽、追加されることとなった。


 あのですね皆さん。追加はいいんですが、垂らしている血の量がヤバイんですよ。血で道が出来ちゃってるけど同業から文句言われない?


 低ランクが行かないルートを通ってるから、むしろ安全? 討伐しているCランク以上の冒険者からは魔物が適度に誘引されるから感謝されるの? そんなことまで考えてるんだねぇ。


 こりゃ覚えることがまだまだあるなぁ。


お読みいただきありがとうございます。


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