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「春の風」のゴンゾウ仕事見学会

「で? お前らなにしてんの? 今日はゴンゾウの審査するんだから付いて来るなよ」


「私達はただの見学だからジスさんも気にしないでいいわ」


「ジスさんが審査官だったんですねぇ」


「エナ達はゴンゾウの仕事ぶりを見に来たッス」


「って訳だ。邪魔はしないから、あたいらはいないものとしてゴンゾウをしっかり審査しておくれ」


「いないものとしてってセイランさぁ、無理があるだろ。どんだけ暇なんだよ。ゴンゾウお前さんはいいのか?」


「ジスさん、オレでは、昨日説得が、出来ませんでした……」


「お前さんも苦労してんだなぁ。まぁいいか、お前らマジで邪魔だけはするんじゃねぇぞ。で、ゴンゾウ。今日は物資集積所の依頼だったよな?」


「はい。受付で、受注してきました。受注証を、見ますか?」


「念のため見させてもらうぞ。……は? これ指名依頼じゃねぇか。あそこから指名されるってお前さんまだアンゴンに来たばっかだよな?」


「昨日受付で、物資集積所と、木材加工場から、指名依頼が来ていると、言われて、昨日は木材加工場に、行きましたね」


「木材加工場からもかよ!? どうなってんだ? おいセイラン。お前さんなんかしたのか?」


「あたいらはなにもしてないよ。ゴンゾウがずっとソロで仕事してたのは、ジス、あんたも知ってるだろ?」


「そうだよなぁ。ここで話しても時間の無駄か。そんじゃゴンゾウ。俺やこいつらが気にはなるとは思うが、いないものとしていつも通りに仕事してくれ。俺はこいつら連れて少し離れて見てるからよ」


「ジスさん、なんか投げやりに、なってません? ……わかりました。では物資集積所に、向かいますね」



「……で、セイランよ。本当にお前さんなにもしてないのか?」


「本当になにもしてないよ。まぁ見てればわかるさ」


「ジスさん。ゴンゾウは戦闘は大の苦手だけど、私が知っている中で上はいないって断言できる最高の運搬適正を持っているわ」


「そうですねぇ。物資集積所も木材加工場も、一回目に受けた依頼で気に入られて指名が来たんだと思いますぅ」


「ゴンゾウならあり得るッスね。単純な腕力と体力だけの仕事なら、ゴンゾウは誰にも負けないッス」


「お前らのその信頼はなんなんだよ……」



「おいおいおい! なんだありゃ!?」


「なんだってゴンゾウが働いてんだよ。見りゃわかるだろ」


「そうじゃねぇよ! 身体強化してんのかもしれんが、一人で動かす重量と持続時間じゃねぇだろ! なんで馬車持ち上げてんだよ! せめて引けよ!」


「ジスさん、お邪魔になりますから大きな声は出さない方がいいですよぉ」


「いつ見てもゴンゾウが重量物運ぶのは、錯覚でも見てるみたいで変な感覚ッスね」


「そうね。あの体格で平気な顔して馬車持ち上げてるのは、なんだか笑えてくるわ」


「え、なに? なんでお前らそんな反応鈍いの? あれがゴンゾウの普通なの?」


「あれでもまだまだ軽い方じゃないかい? 木材加工場じゃ切る前の丸太を一人で運んだって言ってたよ」


「切る前の丸太って冗談だろ……え? マジで?」


「マジッスね。ゴンゾウならそれくらいは平気な顔してやるッス」


「昨日丸太運んだって言ってたから、今頃加工場は大忙しなんじゃないかしら?」


「でしょうねぇ。一日運び続けたそうですから、運ぶ丸太が無くなっていても不思議じゃないですねぇ」


「えぇ……どうなってんだよ。俺が出した石柱も平気な顔して担いでたな? あんときは全力出して余裕そうに見せてたと思ってたが、まさか本当に余裕だったんか……」


「余裕だろうね。でもね、ゴンゾウがやばいのは腕力が強いだけじゃないんだよジス」


「ゴンゾウさんが本当にすごいのは、体力ですねぇ。おそらくここで一日働いても、息ひとつ切らさないんじゃないでしょうかぁ」


「は? なんだそりゃ? ずっと身体強化持続させてんのか? あり得ねぇって」


「魔力が放出できない代わりに切れないみたいッスよ。稀人の特性っぽいッスね」


「エナ? 私達が勝手に言いふらすことじゃないわ」


「あ、うっかりしてたッス。ジスさん今のは忘れて欲しいッス」


「言いふらしたりしねぇしギルドにも黙っとくから泣きそうな顔すんなって、心がいてぇよ。……マジかぁ。稀人が非力って噂は嘘じゃねぇか」


「ゴンゾウが特別なのか、過去の稀人が隠していたかはわからないがね」



「あ、また地面に足がめり込んでますねぇ。足跡がはっきり残っちゃってますぅ」


「ここは土が剥き出しだから、踏み固められた地面でも限界はあるわよね」


「靴の消耗が激しそうッスから、ボブさんに相談した方がいいかもしれないッスね」


「ジス。審査官として評価はどうだい? あたいらはどんな評価でも文句は言わないが、今後のパーティーとゴンゾウのためにも聞きたいね」


「まぁパーティーメンバーなら言ってもいいか。評価方法は一応守秘義務があるから伏せるが、文句なく運搬限定Cっていうかよ。ギルドにすぐに昇格させるように進言するわ。

 強いて問題点を上げるとしたら、丁寧すぎるってところか。依頼主に対する礼節がしっかりしてるのは良いんだが、依頼主も善人ばかりじゃねぇからな。中には下手に出ると横柄になったり不当に報酬値切ろうとする奴もいるから、その辺が昇格したあとの課題ってところかね」


「その辺はパーティーとしてあたいらが教えていくよ。それにしても即昇格なんて急ぎすぎじゃないかい?」


「セイラン先輩もそう思うッスよね? あと一件か二件くらい依頼をこなしてからでもいいんじゃないッスか?」


「普通ならそうするんだがよ。ゴンゾウの働きっぷりを他の冒険者が出来ると思うか?」


「絶対に無理ですねぇ。あの働きが出来る人が大勢いたら、来年には防壁がもう一枚アンゴンの外周に出来そうですぅ」


「D以下の依頼を受けて変な噂が依頼主側に広まるのを防ぐ意味もあるのかしら? ゴンゾウを基準にされたら他の冒険者は災難どころじゃないわ」


「アイリーン正解。出来ればすぐにでも限定Bにして、C以下の依頼を受けさせたくねぇんだが俺の一存じゃ無理だ。掲示板依頼じゃなくて、ギルドが吟味した依頼をゴンゾウに提案するように掛け合うのが落としどころだろうな」


「なるほどね。確かにまだ駆け出しのゴンゾウのあれを基準にされちゃ、他がやっていけなくなるか」


「ゴンゾウやばいッスね。運搬系の同業者にとって災害みたいなもんじゃないッスか」



「ゴンゾウの働きも見たし、ジスさんの評価も聞けたから帰りましょうか」


「そうですねぇ。ずっとここにいてもお邪魔になるかもしれませんし、そろそろお昼ですからねぇ」


「ゴンゾウ! エナ達は帰るッスけど! ちゃんと働くッスよ!」


「エナ、静かにしな……って遅かったね。注目集めちまったじゃないか。騒がせて悪いねジス。あたいらは帰るよ」



「あいつら俺とゴンゾウに投げやがったな。ゴンゾウ、お前さんはこれからも苦労しそうだよ」


お読みいただきありがとうございます。


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