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おじさんと冒険者ギルド

「ゴンゾウさん、次回から依頼をお受けになるときは掲示板ではなく、先に受付に来ていただいてもよろしいでしょうか」


「え? それは構いませんが、何か手続きを、間違っていましたか?」


「いえいえ。ゴンゾウさんは何も間違ってはいませんよ。掲示物から依頼を吟味するのが普通ですから。

 ですがゴンゾウさんの場合、依頼を達成された先で次はいつ来てくれるのかと問い合わせがありまして、指名依頼がすでに二件あるんです」


「二件もですか? まだ依頼は、三日間で受けた、三件だった、はずですが、そちらからですか?」


「ええ、三件受けた内の木材加工場と物資集積所の二件です。そちらの責任者の方から、ゴンゾウさんに来て欲しいと指名されております。緊急でも急ぎでもなく、いつでもいいとのことですがいかがなさいますか? 報酬も掲示依頼より高くなっていますよ」


「指名で依頼を、いただけるのは、ありがたいです。せっかくですので、木材加工場の依頼を、受けようと思います。このまま向かっても、いいのでしょうか?」


「はい、このまま向かってください。こちらが受注証ですので先方に渡してくださいね。

 それにしても三件中二件もすぐに指名されるなんて、私初めて見ましたよ。先日限定Dに上がったばかりでしたよね? いっそのこと限定Cに上げちゃいましょうか? ランクもEならこの場で上げられますよ」


「いやいや、そんな簡単に、ランク上げちゃ、ダメでしょ。……冗談ですよね?」


「それが冗談ではないんですよ。三件連続高評価に加えて二件の指名ですからね。E昇格は今すぐでも問題なくなりました。ごり押せば運搬限定Cもいけないことはないですが、どうします?」


「ごり押しって…… ごり押しは後で、問題になると、困るので、冒険者ランクだけ、昇格出来ますか?」


「ゴンゾウさんは真面目ですねぇ。皆さんこれくらい真面目ならいいんですが……っと失礼しました。

 では、冒険者証をお出しください。……はい。これでゴンゾウさんの冒険者ランクはEです。今後益々のご活躍を期待していますね。

 ほぼ確実なのでお伝えしますが、運搬限定Cも今日の依頼を含めて三件ほど達成されれば高評価ではなくとも確実に昇格します。次回以降の依頼に審査官が一度付きますから、そのつもりでいてくださいね」


 えぇ……依頼始める前に本当に冒険者ランクが上がっちゃったよ。これで私は「Eランク(運搬限定D)」の冒険者になったのだが、低ランクの内は昇格もこんなものなのか、軽い感じなんだなぁ。


 審査官が付くと言っていたし、より上に昇格するにはもっと厳正な審査がされるのかもしれないが、現代日本で色々と面倒で時間のかかる手続きを経験しているだけに、ここまで早い対応はなんだか不安になってくる。



 木材加工場の依頼は二回目なので、あちらのやり方にも少し慣れたのか一回目より早く終わり、まだ日が高いうちに依頼を終わらせることができた。


 作業員の皆さんが精魂尽き果てた様子だったが、これが私の仕事なので恨み言は親方さんにお願いしたいところである。


「依頼の完了報告ありがとうございました。それにしても早いお帰りでしたね。先方からはまた高評価ですか……ゴンゾウさん何かやってます?」


「なにかって、人聞きが、悪いですよ。問題があるなら、木材加工場に、確認してください」


「聞き方が悪かったですね。不正を疑っているのではないですよ。加工場は国営ですから不正は早々出来ません。

 しかし、あそこは作業内容は単純なんですが、とても過酷ですので高評価を滅多に出さないんですよね。それが二回連続で高評価されて指名までされていますから、なにか秘訣でもあるのかと」


「秘訣と言われても、あちらの指示通りに、丸太を運んだだけで、特には」


「腕力と体力に自信があるということでしたので、それでしょうか……限定Cに向けて次回審査官が付きますから、実際に見てもらうのが確実でしょうね」


「それでギルドに、納得いただけるなら、私からは何も、ありませんが」


 冒険者ギルドに不信感でもないが、しこりを残したまま今日は去ることになった。


 こんなときにジスさんがいてくれれば相談できたのだが、今日は朝も見なかったからお休みなのだろう。


 パーティーハウスに帰ってから休養している皆に相談してみれば、冒険者ギルドは国を跨いだ組織で各国と連携を取っているため、木材加工場のような国営事業で作業の効率化を出来るような情報が欲しかったのではないかとのことで、私はなにも気にしなくていいようだ。


 パワーで無理矢理解決しているので、効率化できる情報なんて何も持ってないからね。


 しかしそんなことよりも、もっと気にしなければいけない問題ができてしまった。


 皆は明日も休養のため、暇潰しに私の仕事ぶりでも見に行くかと盛り上がっているのだ。……冗談だよね? え? 本気? おじさんの仕事ぶりなんか見ても面白くないでしょ? いいから休んでなさいって。 


「エナが先輩として監督してやるッス!」

「運搬依頼って受けないから興味があるわ」

「明日はどこの依頼を受けるんですかぁ?」

「ゴンゾウ諦めな」


 半笑いのセイランさん以外の三人は本気だわ。マジかよ……


お読みいただきありがとうございます。


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