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おじさんと朝市

 私は新しい鎧を購入するだけだったが、皆は点検と整備でボブさんに装備を全部預けている。大丈夫か? と思ったのだが、一張羅ではなく予備の武器防具は皆持っているらしい。


 私も以前の鎧は予備として持ち帰っているから、そんな無防備なこと皆がするはずないか。


 ボブさんのお店には朝一で行ったのだが、私を含めて五人が相談をしていたため、お昼になっていた。


 本物の武具を手に取ることなど初めての経験だったので、夢中になってあれこれと武器や防具を見ていたため、あっという間だった気がする。


 今はパーティーハウスに戻り、カエラさんとアンナさんも一緒に七人で昼食をいただき、食休み中だ。


「それじゃあゴンゾウの装備は良いのが買えたんだね。よかったじゃないか。流石あたしの旦那だね! それであんた達は、これからどうするんだい?」


「そうですねぇ。お休みは明後日までの予定でしたよねぇ。セイランさん、その後はいつものCランク以上の討伐ですかぁ?」


「ああ。そうだねリジー。装備が問題なく却ってくること前提だが、明後日まではしっかり休んで、その後はゴンゾウを除いたメンバーでいつもの討伐依頼でも受けるつもりだよ」


「ゴンゾウがどんなに頑丈でも、まだFランクの限定Eだからしょうがないわ。連れ回したらギルドから注意されて、パーティーも私達も罰金と信頼を損なってしまうわね」


「ゴンゾウ早く限定C取って一緒に行くッスよ! エナ先輩の経験から教えてあげるッス。運搬とか荷運び依頼を、あと五件から七件完璧に達成したら運搬はCになるはずッス! 街中のめっちゃキツイ依頼受けてギルドの評価かっさらうッス!」


「エナさん、あまり急かしてはいけませんよ。でもそれなら明日は時間があるのね? 明日は朝市に行こうと思っていたのですが、ゴンゾウさん一緒に行きませんか? 荷物持ちをお願いしたいのですが」


「カエラさん、荷物持ちなら、任せてください。手伝えます。……エナさん? 無言で背中を、叩かないで? お茶溢れちゃう」


「私も行こうかしら、朝市ってお二人に任せっきりだったから、しばらく行っていないのよね」


 エナさんがカエラさんに注意されたからか、無言で背中を叩いて早くランクを上げろと、目と雰囲気で訴えてくるのだが、それ黙ってるだけで急かしてるのは変わらないからね。でも、一緒に行こうと言ってくれるのが本当に嬉しい。



 翌日の早朝。


 やっと日が昇ってきたばかりの、まだ薄暗い大通りを背負子を背負った私と、カエラさんとアンナさんとアイリーンさんが空のリュックと袋をいくつか持って歩いている。


 セイランさんは昨夜飲みに行って熟睡中、リジーさんとエナさんはお留守番。


 朝市の開かれている広場に到着すると、やっと日が昇りきったばかりなのに、すでに多くの人が集まっていた。多すぎないか? 人口密度が地元のお祭り並みなんだけど……


 露天は肉や魚、野菜や果物、香辛料などの食材の他にも、軽食を売っている屋台に、調理小物や食器、衣服や靴、なにかわからない小物や、武器防具を売ってる店まである。


 店員の呼び込みの威勢の良い掛け声と、値切り交渉をしている客の声、叫び声まで聞こえてくるけど大丈夫かよこれ。


 すごく繁雑としていて、動画で見た海外のマーケットを思わせる、異国情緒で殴り付けてくるかのような活気があった。


「ここからはゴンゾウさんを囲うように移動しますよ。アイリーンさんは左後方で殿を、アンナさんは先行してください。私が右から護衛します。ゴンゾウさんはアンナさんが切り開いた道を進むだけです。行きますよ」


 え? ガチガチの護衛陣形!? 私を除いた三人はめっちゃ真剣な表情だし、買い物に来たんだよね? これから戦闘は始まらないよね?


 三人の気迫に動揺したが、先行するアンナさんが切り開く道を黙々と歩く。呼び込みや声かけは無視、早口で半分も聞き取れない。


 掴まれそうになったりスリと思われる奴は、カエラさんとアイリーンさんが一睨みで黙らせるか、物理的に黙らせていた。


 怖すぎるよ異世界の朝市! もっと爽やかな笑顔溢れる所だと思ったのに、戦場じゃないか! 絶対に一人で朝市なんて行けないわ。


 防壁で囲まれた中には、想像以上に人口が多いのかもしれない。その人たちが朝市なんかのイベントに集まるんだ。そりゃ密集もするわな。


 活気に気圧されながらも必死に歩き、背負子に積まれ固定される食材、はち切れんばかりに詰められた袋などを持ち、三人に護衛されながら朝市を抜ける。


 アンナさんの値切りすごかったなぁ。カエラさんの睨みめっちゃ怖いなぁ。アイリーンさんいつの間にか数人転がしてるなぁ。あ、まだ大丈夫ですから積んでください。


 朝市を抜け切った私達四人。私だけが疲れた表情になっているだろう。アイリーンさん、カエラさん、アンナさんは達成感に満ちた清々しい笑顔だ。


「ゴンゾウ! あんたが来てくれて本当に助かったよ! この人数で来て、過去一番の収穫じゃないかい?」


「ええアンナさんの仰る通りですね。ゴンゾウさんに来ていただいて、本当によかった。またお願いしますね」


「それはそうよ! ゴンゾウはこの国一番の運搬担当になるのよ! これくらい簡単よね?」


「初めての朝市で、驚きましたが、お役にたてて、良かったです」


 テンションが上がったままのアンナさんとアイリーンさん、珍しく高い声色でテンションが上がっているカエラさん。


 本当に疲れたけど、役に立てて良かったよ。


お読みいただきありがとうございます。


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