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おじさんの装備

 防具の点検整備費用と、私の防具とリジーさんの盾の購入費用はパーティー資金から出るらしい。他にもエナさんの使う矢じりや投擲物なんかの消耗品も同じ予算から出される。


 装備でも防具や消耗品は一定額以内は、パーティー資金から出るようだ。


 武器に関しては購入費用も点検整備費用も、自己負担。


 何か理由があるのだろうかとセイランさんに聞いてみれば、防具はパーティー資金で揃えないと命に直結することなのに、安い防具で節約しようとする冒険者も多いとのこと。


 そのため「春の風」では報酬の半分という高額をパーティー資金にすることで、防具の質を一定水準から下げないようにしている。


 武器は個人の得意不得意があり、中古の武器は安心して使えず業物でもない限り売却しても安い、さらにもしパーティーを抜けるようなことがあっても、武器さえあればどうとでもなる。


 また冒険者は金銭感覚が大雑把な者が多く、武器までパーティー資金から出すと際限なく購入して資金がすぐに無くなる。


「春の風」にはいないが、使いもしない武器を買う冒険者もいるらしい。



 朝一で押し掛けたからか、ボブさんのお店にはまだ私達しかいない。


 ボブさんに全員の装備を一旦預けて、一人ずつボブさんと点検や装備の新調の相談をしている。


 今はアイリーンさんがボブさんと相談中で、リジーさんは陳列されている盾を眺め、エナさんは小さいナイフのようなものを手に取り眺めている。


 セイランさんは特に新調は考えていないのか私に付き添ってくれている。……私が壊さないように見張ってる訳じゃないよね?


「こういうお店に、初めて、入りました。全員で来て、装備も全部、預けたけど、大丈夫でしょうか」


「ボブの心配してんのかい? 大丈夫だよ。武器防具ってのは毎日買い換えるもんじゃない。二月や三月に一度店で点検するのは早い方だね。それに同じような店は多いんだよ。だからボブが一人で店番してたんだろうが、あたいらが五人で来たからボブは焦っただろうね」


 セイランさんが笑いながら説明してくれるがなるほどなぁと思う。確かに自分である程度整備できる道具は、頻繁にお店で点検整備はしないか。



 その後もリジーさん、エナさん、セイランさんと続き、他のお客さんがたまに入ってきては陳列された武器防具を眺めたり、ボブさんに声をかけているのを見送っていると、最後に私の番になった。


「ゴンゾウ。お前の装備を見繕う前に力を見せてくれねぇか。あいつらを疑いはしねぇがよ、実際どの程度のもんか見ないことにはわかんねぇわ」


「わかりました。なにをしたら、いいでしょう」


「やっぱ慣れねぇ言葉ってのは喋りにくいか? どうにもお堅くてむず痒いな。まぁいい。ちょっとこっち来い」


 連れていかれた先は、点検や修理に使うだろう金属で補強された大きな分厚い木製の作業台と、棚に並んだ道具や、金属や革などの素材が大量に整然と並んだ広い空間だった。


 そこで背負子を背負ってどんどん積まれていく金属板、積める限界になり重さは感じるが、巨大シールドボアを引き摺ったほどではないのでそのまま歩いてみる。


 背負子を重りは降ろさずに一旦地面に置き、そのまま持ち上げてみる。やはり重さは感じるが、香木から削り出した荷台よりも軽い。何度か高い高いをするように上げ下げしていると、


「そのほっそい体で、とんでもねぇ馬鹿力してんな。通りで新品の鎧の肩の部分だけが少し削れてるはずだわな。すまんが重りで使った鉄板、そこの棚に戻してくれんか。ついでに動きも見たい。

 おめぇホントに力があるだけなんだな。動きがすげぇぎこちねぇわ。マジで子供みてぇだ。なんか大人の体で子供みてぇにぎこちねぇから、違和感有りまくって目が変になりそうだぜ」


 このおっさん、遠慮と言う言葉を知らんのか。背負子を背負っていたときから、初対面で言いたい放題だよ。


 そんなこんながあったが無事に鎧を見繕ってもらうことが出来た。


 色は以前と同じ焦げ茶色。これは着色で変更できるらしいが、そのままの色でお願いした。


 以前の革鎧よりも分厚い革のノースリーブに肩当てが付き、横腹のベルトで調節する。鎧正面の胸と腹、肩と背中は鉄板と革で補強された運搬担当用のカスタム仕様。只の革を被っただけの様な軽装革鎧から、なんか格好いい感じの重装革鎧。


 ボブさん曰く、出来れば手足の具足やブーツ、兜や手袋なんかも含めて全身換えたいが、まだ低ランクなら今の装備でも十分すぎるとのことで今回は鎧だけの変更になった。


 限定Cランクになったら全身換装するらしいことを、私そっちのけで皆がボブさんと話し合っているのだが、いくらパーティー資金で買うと言ってもなんか心苦しい。


 早くランクを上げて貢献していかないとなぁ。


 武器はやはり私の腕力で振り回すと、すぐに歪んだり曲がったりするとのことで、巨大シールドボアの牙の大小と額に付いていた大きな盾を加工してもらうことになった。


 素材持ち込みで加工費用だけだったので、現在の私の所持金でも払うことができたのだが、加工には時間がかかるらしい。


 代替武器として、一番頑丈でシンプルな総金属製の中身まで金属の詰まった、太くて長い金属バットに鍔がついた鉄の塊を渡された。


 渡されたのだが。

 

 あの、皆さん? 鉄板仕込んだグローブはいらないと思うんだけど。トゲ付きの肩当てあるッス? そんなのあるの? ヒャッハーはしないから要らないんじゃないかな。兜に羽飾り? 運搬担当が目立ってどうするのよ。羽飾りは邪魔じゃないかな。


 君ら私で遊んでない?


お読みいただきありがとうございます。


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