おじさん過去を知る
夜も更けたので皆自室に戻り、私も自室のベッドに横になって、今日一日リビング居座って皆から聞いたことを思い出していた。
セイランさんは未亡人だった。
親族は健在だが、冒険者になれる下限十二才で追い出される風習があり、十二才で冒険者となり十五才で立ち寄ったアンゴンで「春の風」に加入してからパーティーを一度も離れることなく、パーティーとソロどちらでも精力的に活動。
二十才で別パーティーの獣人族の冒険者と結婚したが、結婚から数年後大規模な魔物討伐で亡くなったらしい。
もう気持ちの整理が出来ているのか、懐かしい思い出を話すように亡くなった旦那さんのことや、当時の大人数だった「春の風」を話してくれた。
アイリーンさんは家族を全て亡くしている。
ものごごろ付いた頃に住んでいた村が魔物に襲撃され、父親とアイリーンさんを残して全滅。
父親は幼いアイリーンさんを孤児院に預けて蒸発、その後十二才で孤児院を出て冒険者となり、同世代最速でDランク昇格したところで「春の風」に勧誘されて加入、その後は順当にランクを上げて今に至る。
絶望していた私の目が、記憶に残る父親の目を思い出させていたらしい。
リジーさんは捨て子だった。
アンゴンで老魔術師に育てられ、親だと思っていた老魔術師のの失踪した弟子がリジーさんの親だったと老魔術師の晩年に知らされる。
老魔術師が亡くなるまで看取り、借家だったため場所がなくなった十四才で冒険者となって活動。
老魔術師の遺産があって金銭面で若干の余裕はあったが、種族的に非力なリジーさんでは思うように稼げず、苦心していたところでアイリーンさんと出会い、魔術が得意なことを話すと是非にと誘われる形で「春の風」に加入して今に至る。
エナさんは産まれてから一人だった。
気が付けば孤児院で生活しており、それが普通のことだと思っていたらしい。親族の生死どころかどこの誰かもわからないが、「最初からいないから興味ないッス」とのこと。
アイリーンさんと同じく十二才で孤児院を出て冒険者となったが、エナさんに冒険者としての才能があったのか同年代とは歩調が合わずパーティーを転々とし、ソロで燻っていたが才能を見出だしたセイランさんに勧誘されて「春の風」に加入。
それが私と出会う半年ほど前の最近のこと。
冒険者パーティー「春の風」は四十年以上の歴史を持つが、二十名を越える最大人数の時にこれ以上の拡大は難しいと、セイランさん加入以降は加入者を断っていたらしい。
「そもそも冒険者パーティーってのは、代々受け継ぐようなものじゃないからね」とセイランさん談。
そのため若い世代を育成しておらず、当時を知るメンバーはセイランさんと戻ってきたカエラさんを残して、ほとんどが結婚や年齢などの理由で引退。
アイリーンさんとリジーさんがギリギリ知っている程度で、エナさんは私と同じく話でしか知らないようだった。
私には四人の人生はとても重い話に思えるのだが、「さっき雨に降られて濡れた」「去年行った旅行は微妙だったね」くらいのちょっとした思い出のように、軽い感じで四人は話していた。
自分の中で割り切ることができているのか。
それともこの世界で人里が滅びる魔物の襲撃や、まだ中学校に入学する程度の年齢で命を賭け札に活動することは、普通でありふれていることなのか。私にはわからない。
一人一人の人生だ。たった一日話をしただけで四人の人生や想い知ることなど不可能だ。今日聞いた話もほんの一部だろう。
それでも四人には幸せになってほしい、報われてほしいと思ってしまうのは傲慢だろうか。
平凡で、平坦で、穏やかな人生を送ってきた私では、助けになれるかわからない。でもパワーがある。パワーで協力できることがあるなら、命の恩人の彼女たちのために惜しむことなく協力したい。
そんなことを思いながら眠りに落ちる。
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