おじさんとリジー
「おはようございますぅ。ふあぁ。ごめんなさい、あくび出ちゃいましたぁ。ゴンゾウさんが一番でしたかぁ。お元気そうですねぇ。やっぱり回復力が違いますぅ」
「リジーさん、おはようございます。リジーさんも、早いですね」
身支度を軽く整えたリジーさんが姿を表したが、まだまだ眠そうだ。
三日間毎日護衛しながら走っていたんだ、いくらこちらの世界の人が強靭と言っても疲れは早々と取れないのだろう。
一晩で回復してしまう私のインチキパワーがおかしいのだ。とても助かってるけどね。
「ゴンゾウさんと二人になるのは、はじめてですねぇ」
キッチンからハーブティをもらってきたリジーさんが、私の向かいの席に腰をおろして話しかけてくれる。
たしかに私とリジーさんはお互いを苦手だったり嫌ってもいないし普通にやり取り出来るが、二人だけで話すことは初めてかもしれない。
「そうですね。リジーさんと、二人で、ゆっくり話すのは、初めてかも、しれません」
「やっぱりそうですよねぇ。ゴンゾウさんは、アイリーンさんやエナさんがなにかしら構ってますからぁ」
ふふふ、とリジーさんは私を楽しそうに微笑みながら見つめる。改めてリジーさんもとても美人さんだなぁと思っていると、
「ゴンゾウさんは、あまり私達のことを詮索したり、過去を聞いたりしませんけど不安にはならないんですかぁ?」
リジーさんが、問いかけてくる。
私はリジーさんを含めて「春の風」の四人を詮索していないが、それに答えることは簡単だ。
プライベートなことを本人が話してもいないのに探るような真似はしたくないこと、四人に助けられて今を生きることが出来ている感謝から、それ以上を求めることは申し訳ないと思っていることを伝える。
「ゴンゾウさんは真面目すぎますぅ。もっと楽にしてもいいんですよぉ。私達だってゴンゾウさんが運搬係として加入してくれて、助かってますからぁ」
リジーさんが言うには、私が加入する前の護衛依頼や人里から人里への移動では、私が持っていた各種荷物をさらに厳選して四人で分散して持っていたが、移動後の疲労が今回の比ではなかったらしい。
道中で討伐した魔物の素材も回収できて稼ぎも増えたこと、運搬限定Cになり同行してくれれば今後も稼ぎが増えること、荷物も少なく身軽に移動出来て疲労が少なく助かったと、嬉しそうに微笑みながら真っ直ぐに伝えられる。
リジーさんのような美人さんで命の恩人に、真正面から感謝を伝えられると嬉しいやら恥ずかしいやら、なんとも照れるものだ。パワーがあって良かった。顔が少し熱いから、赤くなってるなこれは。
「まぁまぁ、そんなに照れなくてもぉ。私達はゴンゾウさんの事情をお聞きしてますからぁ。私達のことだってどんどん聞いてくださいねぇ。稀人の世界のお話も聞きたいですし、もしかしたらアイリーンさんやエナさんは、自分から話すかもしれませんけどぉ」
リジーさんがクスクス笑いながら諭す様に言うが、アイリーンさんも昨日言っていた。
私と彼女たちでは育った環境が違いすぎる。相互理解も必要だと思うが、それ以上に私と彼女たちの常識の違いを埋めていかないと、致命的なことになるかもしれない。
リジーさんと話しながら、リジーさんの言葉に甘えて冒険者になった理由などを聞いてみようかと思っていると、
「おはよう。ゴンゾウもリジーも早いわね」
「おはようさん。お? ゴンゾウなんだい赤い顔して、今度はリジーかい?」
「おはようッスぅはあぁぁあぅ。みんな休みなのに起きるの早いッスねぇ」
アイリーンさんが身支度をしっかり整え、疲労を感じさせない佇まいで現れる。
間を開けずにセイランさんも現れ、疲労は感じさせずにニヤニヤ笑って私をからかいながら着席する。
少し遅れてエナさんが大あくびをして、完全に寝起きの状態でリビングに入ってきた。
続々とリビングに集まって朝の挨拶などをしているうちに、カエラさんから朝食の用意も出来たと声がかかって、カエラさんも一緒に皆で揃って朝食をいただくことになり、聞くタイミングを失ってしまう。
まぁ今日からしばらくは休みだと聞いているし、朝食後でも聞く機会は十分にあるよね。
っっ!? このオレンジすっぱい! え? これ搾って酸味を足すのに使うの? 直接食べるなんてなかなかやるねぇって? ……やっぱり早急に常識の違いを埋めなければ!
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