おじさんと他人の家
アンナと名乗った茶髪を後ろでまとめてポニーテールにした、四十代のふくよかな女性に出迎えられて、パーティーハウスに入ってすぐのリビングに通される。
リビングは建物の一階の半分は使ってるんじゃなかろうかというくらいに広い。
二十人以上パーティーメンバーがいたときの名残なのかもしれないね。
広いリビングには黒髪を後ろにお団子でまとめた、三十代の細身の女性がいた。
「皆さんお帰りなさい。手紙にあった予定日に到着するのは流石ね。まずは旅の垢を落としてきなさいな。
そちらの男性がゴンゾウさんね? 私はカエラよ。詳しい自己紹介などは落ち着いてからしますから、ゴンゾウさんも旅の垢を落としてらっしゃい」
「ゴンゾウさんはあたしが案内するよ。その大きな荷物は、ひとまずリビングの隅にでも置いておくれ。あたしはもう少ししたら帰らなきゃいけないんだ。ほら皆さっさと動いた動いた」
私達五人はただいまとお邪魔しますを言った直後に、流れを完全に女性二人に支配されてしまった。
アイリーンさん達四人は苦笑しながらも奥へ消えていき、私はアンナさんに装備していた革鎧を手早く外され、水を張った桶と手拭いと着替えを渡されて、物置部屋のような小部屋に押し込まれる。
部屋の外から「使った桶と手拭いと着ていた服は、そこに置きっぱなしで良いよ」と、声がかけられて足音が遠ざかっていった。
人の家でいきなりの展開に呆気に取られたが、呆然としている暇もないようだし服を脱いで頭を含めた全身を濡らした手拭いで拭き、渡された服に袖を通す。
慣れない複雑な服ではなく、半袖のTシャツと腰で紐を縛るだけの簡素な長ズボンで助かったのだが、でかいなこの服。紐と裾がとんでもなく余ってシャツは短いワンピースのようになってるよ。ズボンの裾は折り返して、紐は中に仕舞うか。
着替え終わってリビングに戻るとアイリーンさん達はまだ戻っていないようだった。茶髪ポニーテールのアンナさんと黒髪お団子ヘアのカエラさんもいない。急ぎすぎたかな。
どうしようかとリビングを見渡していると、奥の開いたドアからアンナさんが、水差しとコップを持ってきて声をかけてくれた。
「あらゴンゾウさん。もう着替え終わったんだね。夕食はまだだろう? 簡単なものだけど今用意してるから、適当に座ってこれでも飲んで待ってておくれ」
ありがたくいただくことを礼と共に伝える。あのドアの向こうがキッチンなのだろうか。
アンナさんがリビング中央のクロスがかけられた長方形の木製テーブルに、水差しと人数分のコップを置き、また奥へ戻っていく。
テーブルには木製の椅子が並んでいるので、端の椅子に座りコップに注いだわずかに甘味と酸味を感じる薄い果実水を飲むと、はぁっと溜め息が出てしまった。
体力的にはまだまだ問題ないが、初めて経験した三日間のランニング移動による精神的な疲労と、異世界で初めて他所様の家にお邪魔している緊張だろうか。変な疲労感があるなぁ。
地元に居たときも友人知人の家に泊まるような人付き合いはしてこなかったから、なんだかそわそわして落ち着かない。男が私一人だけという状況も影響しているかもしれないなぁ。
「おっ、ゴンゾウ早いッスね。アンナさんとカエラさんは夕食の準備ッスか?」
シンプルな部屋着に着替えたエナさんが四人の中では一番乗りでリビングに戻ってきて、私の隣の席に座りつつ問いかけてきた。
「アンナさんが、夕食まだだろうと、用意するから、座って、待っているように、言われました」
「そりゃよかったッス。ちょうど腹も減ってたし、移動中の保存食も飽きてたッスからね。ってゴンゾウ緊張してるッスね。わかるわかる。エナも初めてここに来たときは、いきなりアンナさんに連れてかれたッスよ」
エナさんが、なんだかすごい訳知り顔で何度も頷いている。私と同じような感じか、エナさんは同性で歳も若く背も低くて幼く見えるため、私より距離感の近い対応をされたのかもしれないな。
などとエナさんに知られたら怒られるようなことを考えながら、エナさんと雑談しているとすぐにアイリーンさん、リジーさん、セイランさんの順にリビングに全員が集まった。
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