おじさんの今後の予定
夕食は肉の大皿を三回追加して食べ終わったところで終了したが、セイランさんとリジーさんだけで、肉の大皿二枚分は絶対に食べている。
アイリーンさんと私とエナさんの三人で、大皿二枚弱と言ったところだろうか。
エナさんはお腹をぽっこりとさせて転がることはなかったが、椅子に背を預けて動けなくなっていた。
お酒を飲めないエナさん以外は、皆浴びるように飲むことはなく食事と共に楽しんでいる感じだった。酒乱がいなくて良かったよ。
あのお酒はこちらでは水代わりに飲むものなのか、アルコール度数がそんなに高くないのか、私もひどく酔うことはなかったが、これもパワーが内臓を強化しているのだろうか。
しばらく食休みも兼ねて談笑していたが、明日以降の予定を話し合うには素材売却のこともあるため、食堂は場所が悪い。
わざわざ今後の予定や収入の話を周囲に聞かせる必要もないので、四人の部屋にお邪魔することになった。
四人部屋は私の泊まる一人部屋をそのまま大きくしてベッド、椅子、箱が四人分、五人で囲っても狭くはない程度の丸テーブルが一つと、やっぱりシンプルで落ち着く内装だった。
私は箱に座って話し合いに参加。そして明日以降の予定についての話し合いの結果は
・明日、冒険者ギルドには昼前に行き詳細な調査報告。
・ゴンゾウの冒険者登録と、「春の風」への加入申請。
・素材に関しては、ゴンゾウの持つシールドボアの牙と額の盾を除いた、香木の荷台を含めた全てを売却。
・シールドボアの骨の売却金はゴンゾウに、それ以外の売却金の半分は五人で均等分配、半分はパーティー資金。
・現状ゴンゾウの腕力に耐えられる武器がない。シールドボアの牙と額の盾を武器として代用。
・明日、明後日は冒険者ギルドへの報告以外は休養日。
・休養日の翌日は道具や保存食など、購入のための準備日。
・準備日の翌日早朝に、「春の風」が拠点としているアンゴンの「街」に移動を開始。
・アンゴンに着いたら冒険者ギルドに報告後、到着日の翌日は休養日。
他にもアンゴンの「街」に到着後の予定も話したのだが、直近の予定はこんなところだろうか。
素材売却金の分配で香木の荷台やその他の素材など、セイランさん筆頭に四人が私の取り分を多くしてくるので、「シールドボアの骨の売却金以外はパーティーとして得て運んだもの、私をパーティーメンバーと思ってくれるならパーティーで分けてほしい」的なことを伝え、セイランさんと報酬減額交渉という妙な口論になったが、均等分配にするように折れてくれた。
「ゴンゾウは変に頑固だね。自分の取り分を減らす交渉なんて初めてだよ」と疲れた顔で言われたが気にしない。
私の武器について、店売りの一般的な金属製武器では絶対に曲がったり歪んだりするので、頑丈なシールドボアの大小の牙を代用することになった。
アンゴンでもいい武器に出会えなかったら、特注するか牙と額の盾を使いやすいように加工するかはその時に決める。わかってはいたがパワーの弊害が出ちゃってるよ。
アンゴンの「街」は、ここタイゴンの「町」より更に人口が多く規模も大きい。防壁や木の柵、建物の作りは似たようなものらしいので、驚愕しなくてすみそうだ。
「街」と「町」の違いは、アンゴン地方の県庁所在地のようなところがアンゴンの「街」で、その周囲の人口が多く防壁を構えているところを「町」と区別している。
他にも「首都」と呼ばれる、王城が存在する国で一番規模の大きい所も存在する。かなり遠くにあるらしいが行くことがあるのかな。
そして明日、私は冒険者になり正式に「春の風」に加入する。
今後の生活に対する不安はまだまだあるが、同時に高揚感も覚える。生家を遠く離れて進学や就職で新生活を始める人は、このような感覚を味わってきたのだろうか。
創作に良くある「こんなおっさんが!」とか「美女を侍らせやがって!」みたいなことが起きるのだろうか。そんなことが起きたらどうしようか。
実力行使? 普通に負けるか下手打つと相手が爆散するな。重い物持たせてみるか?
一人部屋に戻ってベッドに横になりながら、話し合いで決まったことを思い出したり、やっかみを受けたらどうしようかなどと考えながら瞼が落ちてくる。
パワーのおかげで身体能力は上がっていても、三ヶ月以上の遭難生活はやはり相当堪えたようだ。
ベッドに横になると食事前に軽く寝入ったはずなのに、体が「うるせぇ疲れてんだから黙って寝ろ!」と主張するかのように眠気が一気に襲ってくる。
ベッドで寝るのも久しぶりだ。このまま眠気に任せよう。
おやすみなさい。
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