表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/93

おじさん異世界で食事

「春の風」の四人に案内されてやって来た宿は、煉瓦と木で作られた優しい感じのする建物だった。



 部屋は二部屋取り、私は一人部屋、四人は四人部屋に入るようだ。


 内装は全て木製でベッド、机、椅子、箱のみのシンプルなものだが落ち着く雰囲気だ。箱に物を入れたり置いたりするのだろう。


 入浴や水浴びはできないが桶に張った水で、顔を洗ったり体を拭くことはできるらしい。


 混乱気味の頭を落ち着けるように、椅子に座って水筒の水を飲み目を閉じていると部屋の扉がノックされた。


 アイリーンさんだったので扉を開ける。


「ゴンゾウ大丈夫? これから夕食まで少し時間があるから、寝ていてもいいわよ。時間になったら起こしに来るわ」


「アイリーンさんありがとう。迷惑かけて、ごめんなさい。少し、横になっています」


「気にしなくていいの。ゴンゾウは全然違うところから来たんだから、驚いて放心するのも無理はないわ。私こそ気が付かなくてごめんなさい」


「アイリーンさんも、春の風のみんなも、何も、悪くないです。私を、連れ出して、くれた、感謝しか、ないです」


「……ありがとう。おやすみなさいゴンゾウ。また来るわ」


 アイリーンさんはやはり女神では?



「ゴンゾウ! 起きるッス! 飯ッスよ!」


「はーい! 今、行きます!」


 強いノックの音とエナさんの声で目が覚めた。


 異世界に来て、初めて車の中以外の柔らかい所で寝たからかベッドは寝心地が良く、仮眠にしては深く寝入っていたようだ。


 もう混乱していないし落ち着いているように感じる。


 慣れない場所にいる違和感はまだ消えないが、絡まっていた思考が解れたように、冷静になれている気がする。


 でも、夕食でまた驚愕させられるかもしれないから、気合い入れていこう!見慣れてしまえばなんとでもなる。


「お? なんだい、いい顔つきしてんじゃないか」


「あらぁ、どうしたんですかぁ。なんだかすっかり元通りですねぁ」


「これから飯なのに、なんで気合い入ってんッスか? 腹減ったッスか?」


「ゴンゾウ大丈夫? さっきまでの呆然とした感じはないけれど、急に元に戻ってもそれはそれで不安だわ。どうしたのよ」


「皆さん、迷惑かけました。ごめんなさい。少し寝たら、落ち着いたみたい、夕食で、驚愕しないように、気合い入れました。大丈夫なはず」


 セイランさん、リジーさん、エナさんから「なに言ってんだ?」みたいな雰囲気を感じるが、アイリーンさんはまだ心配しているようだ。


 これはなにが出てきても、気をしっかりと持たねば!



 私の気合いに反して夕食は、どんぶりのような深皿に盛られた具沢山シチュー、山盛りの蒸し野菜が各自に一皿ずつ、丸テーブル中央には大皿に盛られた大きなサイコロステーキの山、拳二つほどの大きさの焼き色の濃いパンが入った籠が置かれている。


 量は多いかもしれないが驚くようなものではなかった。これならシールドボアの焼き肉大会の方が迫力がある。


 あれは解体から手伝ったから、量が多いくらいじゃ驚かない。


 酒はもちろん水も有料なのでお酒を飲んでみることにした。金属製のジョッキに入った薄い褐色の液体。ウイスキーの水割りだろうか。香りはビールに似ているけどなんか違う。なんだこれ?


「長期依頼の完遂と、登録は明日だが春の風の新たなメンバーの加入、ゴンゾウの呆けた顔を見た記念に、乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」


 私を歓迎してくれる四人の笑顔がとても嬉しい。なんか余計な記念もあったけど、そこには突っ込まないからな!   


 お? 炭酸のない薄いビール? アルコール度数も低いのか喉が乾いていたのかするする飲める。


 くぁぁぁ! いいなこれ! 冷えていないのに飲みやすくて一気に飲んでしまった。


「ゴンゾウいい飲みっぷりじゃないか! あんたイケる口だね? おーい! 酒の追加頼むよ!」


「ゴンゾウがお酒を飲むところ初めて見るわ。ま、あんなところでお酒飲んでる余裕はないわよね。私たちもお土産でお酒持って行かなかったから」


「喉が乾いていたんですかぁ? ちゃんと食事しながら飲まないと体に悪いですよぉ。ここのお肉美味しいですからねぇ。はいどうぞぉ」


「エナもお酒飲んでみたいッスけど、飲むと背が縮むってみんな言うんッスよ。ゴンゾウの居たところでもッスか?」


「お酒とお肉、ありがとうございます。エナさん、オレの居たところ、お酒は二十歳、なってから。若い内は、成長に悪い、体に毒と、言われていました。大人でも、お酒飲まない人、大勢います」


「えぇっ! 二十ッスか!?」

「こちらは十五を越えたら年齢ではなく体の大きさですかねぇ」

「そうね十五でも小さい子が飲むのはいい目では見られないわね」

「あたいはこっちで産まれて良かったよ」

「すぐ大きくなるッスもん!」 

「エナさん、細かく、言わないけど、まだお酒、やめた方がいい」

「ゴンゾウまで言うッスか!?」


 やいのやいのと談笑しながら私もみんなも食事の手は止まらない。


 シチューも肉も旨いな! いや本当に旨いなこの肉! 塩と香辛料がかかっているだけなのにめっちゃ美味しい! 硬すぎず柔らかすぎず、噛めば肉汁もしっかり出て肉の味がすごい!


 肉の大皿はすぐに無くなったので追加を頼んでお酒を呷る。


 一口ごと一飲みごとに体に活力が注入されてくるようだ。今まで食に興味が薄かったのが悔やまれるほど美味しい。


 日本で家族との食事も美味しく感じていたが、それでも食に興味は薄かった。命のかかった刺激の多い生活を数ヶ月続け、心身共に助けられ、これからも行動を共にできる。


 皆のおかげで私は生きている。感謝やら純粋な楽しさやらが食事を更に美味しくさせているのだろう。

お読みいただきありがとうございます。


続きが気になる、面白かった、なんやこれつまらんなど下部の☆☆☆☆☆を押して評価していただけると作者が喜びます。ついでにモチベーションにも繋がりますので評価お願いします。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ